第17話 転生者ゆえに

「ーァァァアアあ。はぁ、またか。まぁそうだよな。」

よくよく考えると、周りに相談しろなんて言われても、俺には、リストデルには相談できる人なんていない。転生者という何の積み重ねも無いぽっと出の人間であるが故に。俺が転生者でなければ的確なアドバイスだった。そんな有りもしない事を言ってもしょうがないが。

「いや、一人だけいるか?」

シルレーナ嬢だ。というか転生してからいい関係が築けているのはシルレーナ嬢と、かろうじてビジネスライクな関係の勇者位だろう。

「早速アポ取りに行こう。」


街へ出る準備をする。医者には元気になった事を伝え外に出る事ができた。

「おお、すげぇなァ。」

魔王軍に侵略を受けたばかりだと言うのに街は活気付いて、各々の顔から抱いている希望を感じる事ができる。悲劇を克服した表情だ。

「おう兄ちゃん。ひでぇツラだな。」

「え?」

「何抱えているか知らねえけどよ。笑えばもう少しマシにならぁ。」

すんごい気楽に、何かのついでみたいに言いたい事言って行ってしまった。あまりの勢いに少しの間呆けていたがアドバイスを実践する事にする。

「ハハ」

近くの建物の窓に写る自分の顔は正真正銘のピエロだ。これでマシなのだからよほど酷かったのだろう。


閑話休題。ここからでも見えるほど大きな屋敷というか城がある。そこが領主の家だろうからそこへ向かう。


「私はリストデル・テルガードと申します。フィルハーリ嬢と面会したいのですが、取り次いで頂けないでしょうか。」

一応貴族だが、顔を覚えられていない可能性がある以上丁寧にお願いする。

「リストデル様、領を救われた英雄であらせられる貴方様にその様に畏まられては困ります。シルレーナ・フィルハーリ様との面会については早急に確認致しますのでもう少々お待ち下さい。」

「分かった。」

もう顔が知られている様だ。病院で入院していたはずだが、情報の伝達が速い。何人かの兵士とは顔を合わせたのでそこが情報元だろうが、やはり見たことの無い人の顔を把握するほどの情報の繊細さとその徹底ぶりは尊敬できる。

「リストデル様、今すぐ面会なさる様です。こちらへ。」

そんな事を考えているとOKが出たようだ。

「ありがとう。」


「それで今回はどの様なご用件です?顔色が優れない様ですが?」

「相談がありまして。」

「やはり昨夜の事ですか?」

「ええ、どうしても克服出来ないのです。」

「とは申されましても、時間が解決してくれる物でもあるかと思います。話なら私も聞くこともできますから。」

「そうですね。ありがとうございます。」

「妹は渡さん!!!」

部屋に入って来る菫色の髪で紺色の瞳のイケメン。次期領主でありシルレーナ嬢の兄でもあるアステルト・フィルハーリだ。そして今思い出したが、エクスタシー・ファンタジアの世界でもテキストだけで存在していた。読心魔法で悪を裁く重要ポジだったがいかんせん人類側の悪役はリストデルだけだったので、対魔王のストーリーでは影が薄かった。

「よくも妹を誑かしてくれたな!いくら領を救ってくれた英雄と言えど許す事は出来ない!」

なるほど。シスコン系お兄様か。

「私はリストデル・テルガードと申します。かのご高名なアステルト・フィルハーリ様に御会いできる事を嬉しく思います。魔法を使いこなし悪を裁くそのご活躍は我が領にまで轟いております。それに確かにシルレーナ嬢の様な聡明で思いやりのある美しい女性を嫁に迎え入れられることは男としてはこの上無い至上の喜びでありますが、私には少々荷が重いかと。それにその様な女性がシルレーナ嬢以外におられるのであれば是非お目にかかりたいものです。」

最後の一文が大事なのだ。この手のシスコンは妹ageをすれば一定の好感度を稼げる。もちろん実際に思っている事であるため読心魔法を使われても問題無い。

「これはご丁寧にありがとうございます。アステルト・フィルハーリと申します。それに謝らなくてはいけない事がございます。実はリストデル殿に読心魔法をここまで使っておりまして、無断で心を読んだ事にお詫び致します。申し訳ありませんでした。」

そう言った後、とびっきりの笑顔で、

「しかし、私達はとても仲良くなれそうです。今度[二人]で話合いましょう。」

と。やべぇ、本心であることがマイナスに働いた。誑かしていない事はわかってもらっただろうが、しかしいくら英雄とはいえ恋心がバレた以上許されないかもしれない。


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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

投稿を始めて約1ケ月経ちました。17話まで書くことができたことと、1ヶ月間失踪しなかったことに驚いています。ここまで、自己満足小説にお付き合いいただきありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします。



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