第19話

「はぁ・・・はぁ・・・これでいいのかススム・・・。」

「えぇそれで良いです。そうです、良い感じですね。」

「ふぅ・・・ふぅ・・・あぁ!!ススム!!いく!!いってしまう!!」

「大丈夫ですよ。後はこれを突き刺すだけですので。」

「そんな太い物を!!壊れてしまうぞ!!」

「大丈夫ですよ。では行きます。」

「あぁ駄目だススム!!あぁ!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


スコーン


「ふぅ、これでホーンウルフの討伐も終わりですね。」

「はぁ・・・はぁ・・・私を囮にしてホーンウルフを集めるのは良いが。逃がしそうになったのは許さんぞ。」

「本来であればベルジュさんに倒して貰おうと思ったのですが。起き上がれそうに無かったのでこちらで処理する事にしたのですよ。準備をしている間に逃げられそうになりましたが。」

「あの鉄杭の事だな?ホーンウルフの角に当たって壊れなくて良かったぞ。あんな太い鉄の棒が当たったら砕けていたはずだ。」

「そうですねぇ。ですが狙いを外す気はありませんでしたから。」


私達は今大森林に来ています。ベルジュさんには以前足運びについてお教えしましたが、それよりも先に体力を付けないといけません。と言う事で彼女には敵を集めて貰いながら相手の観察をして頂き、ついでに森の中を走り回って体力と足腰の強化をして貰っています。集まって来た魔物は私が倒して見取稽古に利用して、その間は休憩して貰っている感じですね。


鉄杭はヤジカさんに作って貰った道具の1つで、単純に鉄の棒の先を尖らせたものです。当的、突き刺しと結構重宝します。手に握り込んで殴れば威力も上がりますしね。


これもかつて忍者になりたいと本気で言った生徒の為に覚えた技の1つです。今でもどこかの忍者村で元気に忍んでいるはずです。


「ふぅ~。これで今回受けた依頼は終わりか?」

「えぇ、終わりました。ホーンウルフ30頭の討伐終了です。」


やはり最初に来た時よりも濃い嫌な気配が森の奥から漂って来ますね。今回は依頼達成後も何日か森を捜索するつもりなので、ギルドには森での滞在日数を多く伝えています。


「少し休憩したら色々と調べてみましょうか。」

「私は川に行って来る。覗くなよ?」

「では何かあったら大声で叫んでください。その間に野営地を確保しておきますので。確保出来たら迎えに行きますね。」

「・・・・全く反応しないのも何か癪だな・・・。」


何やらブツブツ言いながら近くの川に向かうベルジュさん。さて、ここはホーンウルフの血の匂いがきついので、別の場所に野営地を作りますか。おっと、その前に解体して素材を集めないといけませんね。


転がっているホーンウルフの解体を終わらせて、内臓や血の処理をしたら移動です。ベルジュさんが向かった川の近くに広くなっている場所が在れば都合が良いのですが・・・・。


残念ながらすぐそばには良い場所は無かったです。ですが少し川を遡った所に天幕を広げるのに丁度良い広場が在りました。そこに鉄杭とロープ、購入した大きな布を使って簡易のテントを張ります。こういう時の為に鉄杭の持ち手に溝を掘った物も何本か作って貰っていますからね。


設置は木にロープを巻き付け、布をかぶせて布の角に空けた穴から別のロープを通して杭で打ち付けるだけです。天幕の中には何もありません。組み立て式ベッドをヤジカさんに作って貰おうとしましたが、鋼で作るとかなり重い物になってしまうのと、かなり大きな荷物になりそうだったので断念しました。いつかアルミ何かの軽金属で作れると良いのですが・・・。


「おっと、考え込んでしまいました。中を整えたらベルジュさんを迎えに行きましょう。」


石ころ等の体に当たったら痛そうなものを取り除き、丁度良い所に大きめの木が倒れていたので状態を確認して切り分けました。ヤジカさんの作った刀はやはり素晴らしいですね。これだけの大木を切っても刃に欠けが見当たりません。


板状に加工した気を天幕の床に敷いて、虫よけの草を燃やして完了です。この草は大森林では良く生えているので、探せばすぐに見つかります。生の状態で燃やすと殺虫作用があり虫が逃げて行くのです。


草を燃やし終わった私は、天幕がしっかりと閉じている事を確認してベルジュさんを迎えに行きます。かまどに仕えそうな手ごろな意思を拾いながら川を下って行くと、彼女の姿はすぐに見つかりました。


「ベルジュさん、野営地は確保できましたよ。」

「うおぅっ!?なんだススムか!驚かせるな!!」


おや、まだ沐浴中でしたか。さすがに反応しないとは言えジロジロとみるのは失礼ですね。すぐに背を向けて森の方を見ます。


「沐浴中に失礼しました。装備を整えたら野営地に行きましょう。」

「・・・・。はぁ・・・。なんでお前はそう反応が薄いのだ?年頃の男なら襲い掛かるくらいはする物だろうが。」

「そう言われましても・・・。特段ベルジュさんに欲情していませんので・・・。」

「それはそれで女として傷付くぞ!!」

「はいはい、じゃれ様とせずにすぐに服を着て下さい。1人で野営地に行きますよ。」

「くっ!!お前は後ろに目が付いているのか!!」


何を思ったのか裸で後ろから抱き着こうとしてきたので体を横にずらします。それだけで飛び掛かって来たベルジュさんは地面に四つん這いで倒れる事になりました。その状態で恨めしそうにこちらを睨んでいますが、まぁ修行不足ですね。気配も消せていませんし、そこら辺も教える必要があるでしょうか?


私の言葉を受け、文句を言いながら服を着るベルジュさん。装備が整ったらまた石を拾いながら野営地に戻ります。川を遡り、少し森の中に入った場所に先ほど立てた天幕が見えました。


「今日はここ寝泊りですね。私はかまどを作りますので。ベルジュさんは乾いた木を集めて下さい。」

「ブスッ!」

「そうむくれないで下さいよ。私はどうとも思いませんが、他の人から見たらベルジュさんは素敵な女性に見えると思いますよ。(多分ですが。)」

「フンッ!!」


怒ったまま森に入って行ってしまいました。会ったばかりの頃は何処か騎士の様な人だと思いましたが、私と居るのに慣れて来たのかこうやって感情を表に出してくれるようになりました。人に物事を教えるには信頼関係が必要ですからね。感情を良く見せてくれると言う事は信頼された証。うまく関係構築が出来ている様で何よりです。


「さて、かまどを作りますか。」


石でかまどを作る際は、まず地面を平らに均します。その上に重く大きな石を円形に並べて行くのです。風の強い日などは小さな石を使って隙間を埋めながら2段積むこともあります。うまく積める人は3段以上組む人も居ますね。


石が重くて動かせないという場合は単純に地面に穴を掘るだけでも構いません。その場合空気の流れる場所だけ確保していれば大丈夫です。今回は調理に使うので石かまどにしました。


「木を取って来たぞ。」

「ありがとうございます。そこに積み上げておいてください。」


ベルジュさんは乾燥して中に罅が入っている木を持って来てくれました。両手に抱えるくらいですので3~4時間くらいは燃やせるでしょうか?1晩使うには心許無いですね。


「もう一回拾いに行って来る。これだけじゃ足りないだろ?」

「えぇ、乾いた丸太等あれば簡単なのですけどね。」

「さっき大きめの丸太がいくつか転がっていたな。乾いているか見てこよう。」


丸太が複数本転がっているのですか・・・・。先ほど天幕の床に使った物と言い、この辺で何かが暴れたのでしょうか?すこし警戒が必要ですね・・・。


「所で先ほどから気になっていたのだが・・・・。」

「なんですか?」

「これは何だ?」


ベルジュさんが指さした先には先ほど私が作った天幕が在りました。


「それは天幕と言って、雨や風から身を守る為の物です。本来はもっと高い位置に作るのですが。今回はテントの代わりとして使用しています。」

「テントと言うのが解らないが、これは快適そうだ。おぉ!!床まである!!今日はここで寝るのか!?」

「えぇ、見張りが在りますので交代で寝る事になりますが。」

「普段は地面で直接寝ていたからな。このような物を使って寝るのは初めてだ!!楽しみになって来た!!」

「ワクワクするのは構いませんが、薪の方お願いしますね?」

「あぁ!!すぐに行って来る!!」


時折ベルジュさんの行動がかなり幼い様に見えますね。年齢を確認していませんでしたがもしやかなり若い方なのでは?ですが女性に年齢を聞くのは躊躇われますね。問い質すのは止めておきましょう。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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