第20話
さて次に取り掛かるのは食事の準備です。何とこの世界、血抜きの知識もありませんでした。鍛冶工房を作っている間にベルジュさんがうまいと言っていた屋台でご飯を調達して貰っていたのですが・・・。肉は堅くて生臭く、スープは薄味で塩見しかありません。具材も森に入れない事から街で栽培しているジャガイモの様な芋かニンジンの様な根菜が1つ入っているだけでしたね。
今回野営するにあたって食材を見に行ったのですが・・・。芋と根菜以外ではキャベツの様な葉物とお肉、そして塩しかありませんでした。キノコや、木の実なんかも昔は食べられていたそうなのですが、森から採取しようとすると魔物に襲われるために今は出回っていないそうです。あまり材料がそろわなくて残念に思ったものです。とりあえず塩と麦粉だけは購入して来ました。
まぁ逆の事を言えば、森の中を探せば食材はあるという事です。先ほど倒したホーンウルフの一匹を血抜きしながら解体しておきました。ベルジュさんを迎えに行く時に川に沈めておいたので、そろそろ取りに行きましょう。
道中、食べられそうな野草やキノコを見つけました。女神様の話では、基本的に食べられる物は元の世界と一緒だという話なので少しだけ採取していきます。
「おや?あれは?」
木に絡まっている青々とした葉っぱ。その葉の間から緑色の実がブドウの様に沢山なっている物を見つけました。私はおもむろにその木に近づき、身を1つ千切り取ります。
「・・・これは胡椒ですね。」
匂いを嗅ぎ、少し口に含みます。独特のあの強い匂いと辛みが鼻と舌に伝わってきます。この緑の実を乾燥させれば黒コショウ、赤い実を乾燥させれば白コショウでしたか。
確か熱帯の場所でしか育たないはずですが・・・。この場所はそこまで高温多湿と言うわけではありません。どうしてこのような場所に生えているのでしょう?
胡椒がここにあるという謎は出来ましたが。これで今から作る料理の幅が増えました。いくつか採取して後で乾燥させましょう。今日の所は緑色のまま磨り潰して使う事になりそうですが。
予想外の収穫を手に取りながら川に向かいます。念のため、吊るしている肉を食べられない様に葉っぱが付いた木の枝で隠していたのですが・・・。大丈夫そうですね。魚に齧られた形跡もありません。
「よいしょっと。きちんと冷えていますね。血も抜けている様です。」
内臓を取り外して川に沈めたので血がきちんと抜けるか心配でしたが大丈夫なようです。私はホーンウルフに残っていた皮をその場で剥ぎ取り、肉をばらしてから剥ぎ取った皮で包んで野営地まで運びました。ついでに匂い消しとして磨り潰した胡椒と塩をまぶしておいたので、良い感じで臭みと水分が抜けるでしょう。
「おーい!ススムー!!」
野営地に戻るとベルジュさんが大きな丸太の横で立っていました。引き摺った跡があるのでかなり強引にここまで運んできたのでしょう。切り口を見るとひび割れが入っていますので、乾燥はしている様です。
「それはホーンウルフの肉か?食べるのか?」
「えぇ、今日の夕飯に使おうかと。」
「ホーンウルフの肉は臭くて固いぞ?」
「うん?ならいつも食べていたお肉は何だったのですか?」
「あれはポイズンラビットのモモ肉だ。胴体は毒袋が在って食べられないが、足なら毒が無くて食えるからな。結構高いんだぞ?」
「そうだったのですか?まぁ期待していて下さい。美味しいお肉が食べられると思いますよ。その前に色々と食材の準備をしますけどね。」
ベルジュさんには丸太を少し長めに切り分けて貰い、片方の切り口から十字型に溝を掘って貰うように頼みました。お気付きの方も多いかもしれませんがスウェーデントーチという物ですね。調理に使いやすいので作って貰います。石かまどは必要ありませんでしたね。
その間に私は気になった山菜やキノコを採取です。お肉を回収する時に手に入れた分では量が少ないですからね。取って来たものは水で洗い、念のために1つずつ確認します。野草やキノコの中には他の物に擬態する物もありますからね。専門知識がない場合は取ってはいけません。私はきちんと自分の知識とこの世界の知識を女神様とすり合わせたので大丈夫です。もしもの時サバイバルをして生き残るつもりでしたから。
「それは何をしているんだ?」
「毒が無いかどうかを見ているのですよ。これは大丈夫、このキノコも大丈夫ですね。少し取り過ぎたので胡椒と一緒に干しておきましょう。」
「その緑の粒粒は何だ?あまりうまそうに見えないが・・・。」
「これは香辛料の1つで胡椒と言います。塩と一緒に使うと味がぐっと良くなるのです。本来は乾燥させて使うのですが、時間がありませんのでそのまま磨り潰してお肉に刷り込んでありますよ。」
「ふ~ん・・・・。本当にうまいのか?」
「それは食べてみてからのお楽しみです。」
さて、鍛冶工房完成のおかげで様々な特性を持つ鉄を作れるようになりました。そこで私はヤジカさんに鉄のフライパンと鍋を作って貰っています。
重ねられる様に同じ形をしたものですが、深さを変えたその2つにこれから大活躍してもらいましょう。先に時間の掛かるスープから始めましょうか。
「ベルジュさん、先程お願いしていた物は出来ましたか?」
「あぁ、これで良いか?」
そこには立派なスウェーデントーチが4つ程並んでいました。今晩と明日の朝の分と考えれば丁度良いですね。
「はい大丈夫です。ではそれを使って料理を始めましょう。まずはこの溝の中に作成途中で出た木くずを入れて・・・。そうしたらこのヤジカさんに作って貰った火打ち金と火打石を打ち合わせて・・・。」カチッ!カチッ!!ポッ・・・
「おぉ!!火が付いた!!」
「後は空気を送り込んで火を大きくしていくだけですね。ふぅー、ふぅー。良し安定して来ました。」
「そんなに簡単に火が付くんだなぁ。」
「これも鋼が出来たからですね。」
ヤジカさんに作って貰った火打ち金は焼き入れをして固くした鋼の板です。その板の角に石英や黒曜石を含んだ石(火打石)を打ち付けて火花を飛ばして火を着けます。石を削れるほどの固さがないと出来ない事なので、鋼が出来て可能となった手段ですね。
「普段はどうやって火を点けているのですか?」
「魔法が使える奴に火を出してもらって、こいつで持ってくるんだ。」
そう言って見せてくれたのは粘土を焼き固めて出来た容器の中入った植物の蔓でした。
「これは?」
「この壺の下に獣から取れた油の固まった奴が入っている。この飛び出した蔓に火を点けて貰いそのまま持ち運ぶんだ。蓋が出来ない上に熱も持つから大変だが。1から火を用意しなくていいから持ってる奴は多いぞ?」
なるほど、これは蝋燭の様な物なのですね。よく見ると蔓はてかてかと光っています。一度乾燥させて油をしみこませ、芯として使っているのでしょう。
「その蔓がなかなか取れなくてな。冒険者以外だと高くて買えない代物だ。」
「それも大森林に入れなくなった影響ですか・・・。所でどうしてこれは火が消えているのでしょうか?」
「・・・・・。ついうっかり蓋をしてしまったのだ・・・。」
顔を背けながらそう言うベルジュさん。私が火付け道具を用意していなかったらどうするつもりだったのでしょうね?まぁ木材さえあれば根性で火は点けられますが。
「はぁ・・・。次からは気を付けて下さいね。万が一はぐれた場合に大変な事になりますよ?」
「あぁ・・・。だが今度はススムが持っている道具を使うから大丈夫だ!!これは重くて嵩張るし気も使わないといけないがススムの使っている道具ならその心配もない!!」
「まぁそうですが・・・。でもその油は使えたりするので持っておくと便利ですよ。」
「そうなのか?」
洞窟や夜に探索をしなければいけなくなった場合。油をしみこませた布を木の枝に巻いてたいまつとするのは結構いい手段です。それでなくても長時間燃える動物性の油というのは明かりを得るには重宝します。武器としても使えますが、まぁここで話す内容では無いでしょう。
「なるほど。ならば油だけ壺に入れて蓋をしておけばいいな。」
「そうですね。漏れないように気を付けないといけませんが。」
さて、話に夢中になってご飯の準備が進んでいません。急ぎませんと日が暮れてしまいますね。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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