第3話

教会は、元々は女神を奉り世界を創造した事に感謝を捧げていた組織でした。ですがいつしか聖気を扱う者を保護する機関として作り直され、今では魔物に対して特効とも呼べる力を持っている事でとても強い発言力を持っています。聖気を扱い戦える者を聖騎士と呼び戦力としていますね。実は聖気使いも魔法使いの一種なのですよ?


かつて教会は国とも密接な関係に在りました。ですが国と教会が癒着した事で不正が横行し、民衆に魔物による被害が拡大。自分達の欲を優先した結果魔物に国1つが攻め滅ぼされた事を受けて、国と教会は深く関わる事を禁止し相互に監視し合う関係になりました。現在では各国に支部を作り、スキルレベルの高い物を勧誘して魔物の脅威に備えています。


スキルレベルこそが絶対であるという教えはこの教会から広まっています。スキルにより聖気を扱う術を手に入れたが為の弊害ですね。魔物への特効もあってスキルへの信仰はかなり根深く、進さんとは必ず衝突する事になってしまうと思います。関わりを持つ時は十分に気を付けて下さいね。


次に世界に存在する国についてです。今現在あの世界で国と呼べるものは4つしかありません。ミズマ魔道国、ランダルフ帝国、タレン法国、アニマ獣国の4つですね。


ミズマ魔道国は魔法使いを育成する学院がある場所です。現在魔物の脅威に立ち向かえる魔法使いの需要が高まり、聖気を使う以外の魔法スキルを持つ人達を大勢勧誘して教育を施しています。スキルを使った間違った魔法を脈々と受け継ぎ伝えていますね。こちらもいずれどうにかして頂きたいです。


ランダルフ帝国、帝国と名乗っていますがただトップが皇帝というだけで独裁政権とかでは無いです。ちゃんと家臣の話も聞き、他種族も受け入れる多民族国家ですね。普人種が数多く居るのもこの国になります。ですがこの国もやはりスキルを重要視する傾向にあります。スキルレベルの高い人は国に囲われ保護されています。


タレン法国、この国は樹人種と土人種が管理している国になります。教会発祥の地として有名で教会の本部がある場所になります。樹人種と土人種が管理しているだけあって豊富な食材資源と鉱石資源が自慢です。お互い協力し合い、自然環境のバランスを取っているとても住みやすい国です。ですがこの国もスキルによって環境保護を行っている為に、一度バランスを崩せば自然環境は即座に崩壊する危険性があります。


最後にアニマ獣国ですね。国土の大半が熱帯雨林になっている国です。多くの獣人が暮らしていて日々魔物との生存競争をしています。力を持つ者が全員を引き連れるという実力至上主義で、逆に言えばスキル偏重の傾向が一番強い国だとも言えます。もし進さんが行く場合は気を付けて下さい。スキルを持たないというだけでかなり下に見られます。迫害されていた歴史から他種族に対しての恨みが強く、下手をすると奴隷にされる可能性がありますね。


『教会と国の説明は以上になります。』

「地理的にはどのようになっていますか?」

『えっと図にして見せた方が良いですかね?こうなります。』


      ランダルフ帝国

タレン法国         ミズマ魔道国

       アニマ獣国


『国の外側にも大陸は続いていますが、全て魔物の領域となっています。』

「何処の国も海には面していないのですね。それに魔物の領域が国の範囲よりかなり広いのですか・・・・。中央が開いているのはなぜでしょう?」

『そこは国にはなっていませんが魔人種の人達が住んでいる場所になります。中央の土地と国の境には境界を作り出す様に高い山脈が聳え立っていますので、中央の土地に行くにはかなり苦労すると思います。』


高い山脈が自然の城塞になっているのですね。おそらく迫害された時に攻められ難い場所を探してたどり着いたのでしょう。賢いゴブリンさんには是非お会いして話を聞いてみたかったのですが残念ですね。


「自分が行くのは何処の国になりますか?」

『ランダルフ帝国に行く事になるかと。あの国であれば進さんも動きやすいでしょうから。』

「それはなぜでしょう?」

『他種族国家という事はどんな人でも入りやすいという事でもあります。進さんも色々調べられるでしょうが、世界に現れてすぐですから犯罪なんかも起こせません。犯罪歴が無ければ街に入る事は出来るでしょう。』

「なるほど、では入る為に必要な事や気を付けなければいけない事を教えて頂けますか?

『大分長くなりましたが大丈夫ですか?』

「えぇ、必要な事ですから。何も知らずに現地に行っても右往左往するだけでしょうしね。親切な人が都合よく居るとは限りませんから。ここでしっかりと学んでいきますよ。」

『そうですか。確かに進さんの言う通りですね。では説明します、と言ってもそこまで難しくは無いですが。』


各国の街や村に入るには国が発行する住人票が必要となります。その国に住み定職に就くと発行され身分証明証になります。例外として冒険者証があります。魔物を相手に素材を持ち帰る冒険者という職業がこの世界にはありまして。その仕事の関係上どの国にもすぐに移動できるように冒険者証は特殊な身分証明証となっています


冒険者になる為には魔物と戦える力を持つ事と、犯罪行為の有無や性格がふさわしいかどうかを調べられます。厳正な審査の結果発行されるのが冒険者証ですね。ですから冒険者は人々から尊敬される職業であり、決して侮辱していい人達ではありません。


進さんの場合、街に入る時には軽い質疑応答と魔道具による犯罪歴の確認の後、入場料を支払って仮の身分証明証を発行してもらえると思います。その後はとりあえず冒険者として登録して冒険者証を手に入れるのが一番早いと思いますよ。


気を付ける事ですが、進さんの世界とそう変わりは無いと思います。あっ獣人種の耳と尻尾はむやみに触ってはいけませんよ?触れるのは家族か親しい人だけです。あとは土人種の人と酒飲み勝負をしないで下さい。どっちかが潰れるまで飲み続けますから。


あとはそうですね。進さんも若返りますしあっちの話もしましょうか。基本的にどの種族同士でも子供は出来ます。獣人種は尻尾を膝に乗せる。樹人種は耳を相手に触れさせる。土人種は2人きりで酒が飲みたいと言う、小人種はハートの形の小物が増えている、魔人種は自分の特徴的な部分を模した物を相手に送るとそういう行為OKの合図です。だから気を付けて下さいね?


「なるほど、求婚もしくは求愛の仕方も種族によってそれぞれ違うのですね。」

『普人種だけは言葉で告白して贈り物を送るですね。変わりないでしょう?』

「ですね。お金とかはどうなっていますか?」

『お金に関しては各国共通の聖貨を使っています。白い硬貨で板になっている物が1セイト。1セイトより大きい板が5セイト。丸くなっているのが10セイトで大きい丸が100セイト、初代教皇の顔が書かれているのが1000セイトで女神の顔が書かれているのが10000セイトになります。』


女神様が実物を出しながら説明して下さったので分かりやすいですね。1セイトが大体パン1つだそうですので、日本円にして100~500円くらいの価値でしょうか?5セイトが500~1000円、10セイトが1000~5000円、100セイトが5000~1万円、1000セイトが1万~5万円、10000セイトが5万~10万円ですか。かなり価値の幅が広い感じですがまぁ大体で良いでしょう。計算能力と価値判断能力も下がっているという事でしょうし。


「そう言えば私に戦う力は無いですが魔物に襲われた場合はどうしましょう?」

『ふふふ、ご謙遜を。教鞭をとる為に数多くの武術を収めているのは存じていますよ?』

「あの程度で良いのですか?」

『あの程度の事も自分達だけでは出来なくなってしまったのです・・・・。』


スキル偏重の度合いはかなり深刻の様ですね。私が身に付けている武術はそれこそ師範代から免許皆伝を言い渡されない程の腕前でしか無いのですが・・・・。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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