第2話

「それで女神様、私へのお願いというのは?」

『進さんにはタレス・ルトキンに赴いてスキルを重要視する考えを正して欲しいのです。』

「・・・・失礼ですが1人の人間が社会思想全体を変えられるとは思わないのですが?」


たった1人が今まで通用していた思想を否定しても、それは頭のおかしい人と思われてしまうだけではないでしょうか?


『私も1人でそこまで出来るとは考えていませんよ。進さんにはスキルを重要視するあまり、才能を発揮できずに埋もれてしまう人材を救い上げて欲しいのです。その先にスキル偏重の世界が変わるきっかけがあります。』

「それは女神だからこそ解るというお話ですか?」

『それもありますね。ですが進さんのこれまでの功績を鑑みて貴方であれば大丈夫だと確信している。という事でもあります。』


これはこれは、女神さまから多大なる期待を寄せられてしまいましたね。プレッシャーで圧し潰されそうですよ。


『駄目ですか?』

「・・・・いえ、やらせて頂きます。」


ずるいですよ女神様。そのようなお顔をされてしまっては教育者として何とかしたいと思ってしまう物です。ましてや自分の力が助けになると思えば余計に。


『無茶を言って申し訳ありません。心ばかりですが、当面の生活費を用意させて頂きます。』

「その、大丈夫なのですか?窃盗や偽造などでは?」

『お布施としてお支払い頂いた金銭ですので大丈夫ですよ。それと肉体年齢を20歳にさせて頂きますね。長く健康に過ごせるように私の加護も付けておきます。』


おぉ!!若返る事が出来るとは何とも贅沢ですね。加護という物はあまりよくわかりませんが。


『加護というのは私から少し力を分け与える事です。スキルの事で困っている人に出会いやすくなり、怪我や病気を患い難くなります。』

「それは有難いですね。それはスキルですか?」

『いいえ。進さんには申し訳ないのですが、スキルを与える事は出来ません。与えてしまうと目的に沿えなくなってしまいますので・・・。』

「そんなに申し訳なさそうにしなくても大丈夫ですよ。解っています。人にスキル不要説を唱える人物がスキルを持っていては説得力に欠けるという物ですから。」


例えば、贅沢は敵だ!贅沢する奴は全て悪だ!!なんて言う人が豪勢な家に住んで贅沢な食事を食べていたら全く説得力無いと思いませんか? スキルを持つ事で私がそのような人に見られてしまうかもしれないですからね。仕方ありません。


『そう言って頂けると助かります。他に聞きたいことはありませんか?』

「自分は突然異世界に降り立つ異邦人な訳ですから、常識や一般知識なんかを教えて頂ければ助かります。」

『解りました。では少しお勉強しましょう。ふふふ、教師であった進さんに物事を教えるなんて不思議な感じですね。』

「人生は常に勉強ですよ。歳を重ねたとしても新たな事を学ぶのに遅いという事はありませんから。」


それに新たな事を学べるというのはとても心が躍る物です。ましてや異世界の知識なんて学べる機会なんて在りませんからね。しっかりと勉強して行かなくては!!おや?女神様その格好はどうしました?なぜタイトなスーツ姿に?その眼鏡はなんでしょう?


『進さんの世界の女教師をイメージしてみました。それでは授業を開始します。着席して下さい。』

「いつの間に机と椅子が?それに黒板まで。」

『雰囲気でますよね。ではまず人の種族から教えますね。』


タレス・ルトキンには人種と言っても様々な種族が住んでいます。まずは普人種、人数が多く一番人口が多いです。ですが特徴が何も無く良く言えば何でも出来る器用な人種。悪く言えば器用貧乏な種族です。


土人種、ドワーフとも言います。普人種より背が半分ほどしかなく、樽の様な体系をしている人が多いですね。男性は足元にまで届きそうな髭を生やし、女性は童女の様に幼いです。多くは地下に住み鉱石を掘って暮らしています。お酒大好きで鍛冶師になる事も多い種族ですね。土に携わる才能が開花しやすいです。


樹人種、エルフとも言われます。半樹半人の彼らは体の線が細く、見目麗しくて耳が長いのが特徴です。半分樹ですから寿命がとても長く1000年程生きる事が出来ます。樹木に関する才能が開花しやすいですね。


小人種、ブラウニーとも言います。人の手のひらに乗る程の半精霊半人の種族です。めったに人前に出て来ませんが、人の住む家にいつの間にか住み着き、家の物を貰う代わりに仕事を手伝ってくれたりする種族です。家事手伝いの才能が開花しやすく、特に裁縫なんかの才能が現れやすいですね。


獣人種、昔は獣交じりと蔑称で呼ばれていた種族です。今は亜人と呼ばれる事が多いですね。普人種に動物の体の一部が生えていたり、動物がそのまま二足歩行していたりと獣の割合は人によってまちまちです。獣の割合と種族によってさまざまな能力を発揮します。主に肉体強化系や一部種族は魔法の才能を発揮しやすいです。


魔人種、こちらもかつて魔堕ちや悪魔なんて呼ばれた種族です。吸血鬼やデーモン、有名処ではゴブリン何かの種族がこれですね。過去の迫害からあまり普人種を信用しておらず、自分達のコミュニティーを作って隠れ住んでいます。ですが本来彼らはその凶悪な見た目からは想像できない程温厚な種族なんですよ?


吸血鬼と言っても血は指先にちょっと浮き出るほどで良いですし、デーモン何かは実は野菜しか食べません。ゴブリンも他種族の女性を攫って数を増やす害獣だ!!何て言っている人が居ますが、女性を大事にして人目に付かないようにしているだけですし、他種族の女性を攫った事なんかありません。むしろ怪我をした人を助けたり、病気を治してあげたりと普人種よりも頭の良い人も居たりします。ゴブリンの女性って凄い美人なんですよ。だから治療した女性が他種族だと勘違いして間違った知識を広めちゃったんですよね・・・。他にも色々な種族が居ます。


『種族としてはこんな所です。』

「質問良いですか?自分の居た世界の娯楽小説ではゴブリンやスライムが魔物の代表格でした。ではタレス・ルトキンでは魔物とは一体どのような物なのでしょう?」

『では次に魔物について講義しますね。』


魔物とは、世界に溢れている魔素に人の悪感情が作用して生まれる世界のバグです。人を妬み、恨み、羨み、憎む心が魔素に干渉して生まれますね。大抵が黒い煙の様な状態で現れその状態の事を人々は瘴気と呼んでいます。実は魔物はこの煙の事を指すんですよ。


その煙が動物や、人に憑依して魔物となりすべての命に襲い掛かるのです。ですから正式には魔物憑きと呼んだ方が良いかもしれません。たいていの魔物は魔素に汚染された動物で、肉体が急激に変化して狂暴性も増します。命を奪う、もしくは聖気を使う事で魔素を浄化する事が出来て、変化した肉体はそのまま残ります。人々はその変化した肉体を利用して武器や防具を作って身を守っている状態ですね。


「なるほど、人も魔物になる可能性があると。」

『はい、魔物憑きとなった人を見て魔人と呼び、それが魔人種に似ていた事から迫害へと繋がった歴史があります。』

「悲しい事ですね。」

『えぇ、本当に。』

「では次に魔素について教えて頂けますか?」

『はい、では魔素についてです。』


魔素とは世界に溢れる元素の1つ。人の感情や思考に左右される特性があり、魔素と親和性の高い人が魔法使いとなり超常現象を起こす事が出来ます。瘴気や聖気の元でもあり、瘴気は説明通りに魔物の元に。聖気は瘴気の反対の性質を持ちますね。


「瘴気は先程魔物の説明でもありましたね。でしたら聖気とは何でしょう?」

『瘴気とは逆でうれしいや楽しい、感謝の気持ちや愛しい気持ちが魔素に干渉して生まれた物です。聖気と瘴気は正と負の関係になりますね。』

「お互いがぶつかり合えば消滅しあうと?」

『そうなります。ですが今あの世界では正の感情がとても少ないのです。聖気を使える人は全員教会に所属して聖職者になっていますね。』

「それだけ重要視されているという事ですか。」

『そういう事です。では次に教会や国についてお話ししましょう。』


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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