第6話
*
まさか、いきなりアプローチされるとは思わなかった。
だけど、どうして、そんなに僕のことが……いや、もしかしたら、そういうことじゃないのかも。
「付き合って、っていうのは……僕と、どこか、でかけたいところでもあるということ?」
「……へ?」
彼女は、ちょっと
どうして、わかってくれないの、という感じの顔だ。
まあ、なんとなく僕は察しがついていたので、わざとそう言ったわけだけど。
「バカにしてる?」
「えっ、いや、バカにはしていないと思うけど」
「恋人として付き合ってほしいって言ってるの!」
「ああ、そう、なんだ……」
なんだかドギマギしてきた。
「でもさ、どうして僕なんだ?」
「好きになるのに理由が、必要?」
「それは、どうだろうな……」
僕が月子に抱いている恋心に理由があるかと聞かれたらどう答えるべきなのだろうと一瞬思った。
それは、やっぱり変な汗が出たりとか、体が火照ったりすることとか、目を合わせられないとか、キスしたいとか、ちょっとだけ勃起したりとか、そういうのが理由になるのではないか? と最低な男心を心のなかに閉まった。
まあ、強いて言うならば……。
「本能、か」
「それは……そうかもね。私の本能が武尊くんを求めているの、かもね……」
「どうして、僕みたいな変わり者に、それだけ想いを言うことができるんだ?」
「確かに、変わり者かもしれない。だけど、しょうがないじゃん! 好きになったんだから!」
「そうだ、な……」
僕が月子に冷たくされても、まだ好きなのは、しょうがないのかもしれない。
それが、本能、だから。
「……正直なことを言ってもいい?」
「いいよ」
「僕は今、キミのことが好きじゃない」
「……! そっか……」
「それは今、別の誰かに恋をしているから、っていう、そういうこと。つまり……」
結論づける。
「まだ、どこかで『僕に好意を持ってくれているんじゃないか、って淡い期待を勝手に抱いている』ということになる。だから僕は中途半端にはなれない。本気になりたい。こんな病み上がりのコミュ障を好きになってくれたのは感謝してる。だけど……」
本音を言っていく。
「……僕に初めて好きだと言ってくれたキミに応えたい気持ち、もある。僕は、どうしたらいいか、わからない」
「わからない、か」
彼女の目が潤んでいる、ようにも見えた。
「なら、友達から始めよう、かな……」
「そう、だね。友達からなら、まあ大丈夫だよ。ありがとう」
「ううん、こっちこそ……ごめんね。急に決断を
「いや、僕こそ中途半端な答えしか出せなかったことを謝るよ。ごめんね」
「いいよ。これからは友達として、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
あとは他愛もない会話をして連絡先を交換して僕たちは教室に戻った。
去り際に彼女の声を聞いた。
「真面目、すぎるんだよ」……と。
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