第46話 聖女の終わりとワイズの実力

見た瞬間から違った。


なんとも言えない感覚に襲われる。


ミーシャは元からそういう感じに襲われないが、今の俺には女性に対して嫌悪感がある。


物凄く汚い存在というか、卑しい存在に思えてしまう。


だが、このワイズという存在に対してはその【嫌悪感】が無い。



それどころか、何故か心が惹かれる。


残念そうなのに。



「これで治ったわよ? ハイ、ミラージ」


ワイズは魔法で鏡を作ると俺に見せた。


「顔の傷が治っている...なんでそんな事ができるんだ」


「それはね、私が天才だからよ! 当たり前じゃない?」



会話を始めると、俺の知り合いだと勝手に理解したのか、止めていた男は関わり合いになりたくない。


そんな感じで「失礼しました」と詫びて去っていった。




普通は聖女レベルでも俺の傷は治せない。


【古傷】という物は、その状態が正常と体が認識している。


その為、魔法で治す事は簡単には出来ない。



マインは驚いた顔でワイズを見ている。



「その呪文は、パーフェクトヒール...歴代聖女の中でも覚えた人間は殆ど居なかったという最高のヒール」


「そうよ? 私は天才だから簡単に覚えたわ、もうおばさんの出る幕じゃ無いのよ?」



「そうですか?確かに私より貴方の方が魔法の才は上のようですね、ですが実戦経験のない、えっ...」


マインが会話の途中で光のサークルが飛び出し、マインの首を跳ねた。


聖女が使うホーリーサークルだ、無詠唱だと。


こんなのは見たことが無い。



それより、マインは聖女だ、流石に殺すのは不味い。



「ワイズさん、やり過ぎだ」


「あらっ セレナ様顔が真っ青ね? だけど大丈夫だわ、パーフェクトヒール...ほらね? 簡単に生き返らせられるの」


馬鹿な、パーフェクトヒールでも死んだ者は生き返らせない筈だ。


マインは自分の首のつけねを触っている。


「ねぇ、おばさん、もう貴方じゃ戦えないわ、勇者パーティーに居場所なんかない、王女様なんでしょう? お金をくれれば良いのよ、私達にお金で支援してくれるだけで大丈夫よ?」


いや、お金なら充分に俺が持っているから、それも必要ない。


どうせ一緒に戦えば、マインには死の運命しかない。


嫌な思い出も多く作られたが、昔は優しい姉の様な存在でもあったのだ。


無駄に命を失わす必要もない。


「マイン、もう解っただろう、足手纏いだ」


「その様ですね...解りました」



マインは涙を目に貯めながらその場を去った。



しかし、聖教国は怖いな。


こんなやり取りを俺たちがしているのに、誰も何も口を挟んで来ない。


曲がりなりにも王族で【聖女】の首を跳ねたのに誰1人止めもしなければ、何もしない。



話が終わり、ようやく落ち着いたと思っていると...



「新しい三職の誕生だーーーっ」


「素晴らしい...これで聖教国は安泰だーーっ」


「世界を救う、歴史的瞬間を私は見たのかも知れません」



周りから一斉に歓声があがった。





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