第42話 賢者と剣聖

俺の名前はソード、剣聖をしている。


王国が可笑しくなりつつあるのが解ったから、賢者のリオナを連れて帝国に逃げた。


大体の理由は解る。


勇者ソランが恐らく何かをしたのだろう。


賢かった王も可笑しくなり、俺の話を聞いてくれない。


慎み深い聖女のマインが、あんな破廉恥な事を平気でするのだ、勇者が恐らくは魅了でも使っているのだろう。


結局、俺はマインも王女マリアも救えなかった。


賢者リオナは、魅了を解除できる方法を探していたが、幾ら調べても見つからなかった。


唯一対抗できる手段は奴隷紋だが使う事は出来ないから諦める事しか出来ない。


王国は時間を掛けて腐っていく。


ソランというクズ勇者によって。


彼奴がセレナをどうしてあそこ迄、嫌っていたかは解らない。


何故なら俺は三職と共に戦う剣聖で無かったからだ。


賢者のリオナとこのまま取り込まれる位なら【関わらない方が良い】そう考え、俺たちは帝国に逃げた。


なるべく目立たない様に、偽名で冒険者登録して一般人の到達点であるC級冒険者で止めて生活していた。


一度、追放されたセレナが洞窟で暮らしているという噂を聞き、訪ねた。


リオナは一緒に冒険者をしようと勧めていたが...様子を見た瞬間解った。


セレナは、どう見ても世捨て人にしか見えない。


だから幾ら誘っても無駄だ、そう思った。



時間と言う物は...運命を変えてしまう。


リオナはセレナが好きだった。


そして俺はその恋を応援するつもりだった。


だが、一緒に何年も過ごすうちに共に惹かれ合って恋仲になり夫婦になった。


そして...やがて子供も出来た。


15年の月日が流れ、あのソランが死んだ事を知った。


そして、セレナが新たに勇者になった事を知った。


俺もリオナも王国からは逃げた存在だ、行きたくはない。


だが【聖剣の儀】でセレナが聖教国に来るのを聞いた。


俺もリオナも良い歳だ。


だが【剣聖】と【賢者】でもある。


ならば、もしセレナが魔王と戦うなら手伝うべきだ。


【聖女】マインとセレナだけで戦わせる訳にはいかない。



聖教国では俺たちの肩書は強い。


だから、教皇様にお願いして、こっそりと入れて貰った。


教皇様としては4職揃い踏みをサプライズにするつもりだったのだろう俺たちは顔を隠すローブを着ていた。


だが...聖剣をセレナが手にした瞬間..教皇様に手を掛けた。


止めなければ、そう思い剣に手を掛けたが、リオナは俺の手を握り、首を横に振った。


「私達は関わらない方が良い」


確かに、関わっても良い事は無い。


まして、俺たちにジョブを与えた【女神は居ない】らしい。



此処いても仕方ない。


「そうだな」


俺たちは混乱に乗じてそのまま帝国に戻る事にした。






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