第34話 洗う...そして疲れた。

ミーシャを連れてホテルに帰ってきた。


入ろうとした時に受付と目が合ったが、合った瞬間悲しそうに目を逸らされた。


此処は高級ホテルしかもランクは最高の五つ星。


そこに凄く汚い、しかも半魔のミーシャが入ってきたんだ、嫌な顔もするだろう。


だが、もう何も言わないな、というか怖がられている。


ローゼンとマインが脅したからだ。


そりゃそうだ...五つ星から星ゼロにされて王族、貴族全部が使わない。


そんな脅しをされれば怖いよな。


しかも、【俺が冒険者ギルドのギルマス】なんだからな。



まぁお陰でミーシャを連れ込んでも文句は言われない。


まぁ、さっきから泣きそうな目で睨んでいるけど。


知ったこっちゃない。



「あの、セレナ、此処本当に私がいて良い場所なの?」


「さっきも言ったけど、もうミーシャに入れない場所は無いよ」


ミーシャは驚いた顔でこちらを見ていたがそのまま手を引いて部屋に連れ込んだ。


一緒の部屋に入ったら...物凄く臭かった。


スラム街の浮浪者の何倍も臭い、ゴミ捨て場のゴミの方がまだ臭わない。


それは仕方ない...だって彼女は恐らく今迄風呂に入った事が無いんだから仕方ない。


「さてと、お風呂に入ろうか?」


流石に若い娘だからこれは嫌がるかと思ったら


「お風呂って...ミーシャが入っていい物なの?」


なんだかすごく不憫に思えた。


「むしろ、入らないと汚い...」


最早ただのボロキレにしか思えない服を脱がそうとしたら...


「セレナのエッチ...スケベ..」


「あのなぁ、俺はガキには欲情しない...ばっちいから洗うだけだ」



「セレナ、一つお話ししようか? わたしセレナより多分年上だよ?」


「はぁ~!」


そうだ、俺と此奴が出会ったのは15年以上前だ、今の此奴の姿は、あの頃と大差ない。


少し身長が伸びただけだ。


そう考えると...此奴は幾つなんだ。


「あの、ミーシャって幾つなんだ、俺は33歳なんだが」


「それなら、多分ミーシャの方が年上だよ...まぁ魔族って寿命が長いからね、半分その血が入っているから見た目はこんなだけど」


確かにそうだな。


「うん、納得したミーシャはロリ婆ちゃんなんだ」


「ロリばーちゃん? なんかその言われ方嫌だよ」


「はいはい、それじゃミーシャはミーシャって事で」


それでも見た目ガキなんだから欲情なんてするかよ...というか今の俺は女になんか欲情しない。


それどころか、今の俺が【触れる女は多分此奴だけだ】


実際にロザリアが服を脱ぎかけた時には嫌悪感が走った。



さっさと服を脱がせて湯船につからせた。


体中が垢まみれで先にふやかさないと取れないからだ。


まぁゴブリンとかは水浴びすらそうはしないらしい。


「ちゃんと肩まで浸かれよな」


「ふぃー、解ったよ、お湯に浸かるの初めてだけど気持ちよいね」


お湯が瞬く間にドブ水にように変わっていく。


一回抜いてまたお湯を入れ直した。


まるで粘土の様にこびり付いた垢がまた浮いてくる。


結局、此処まではした物の、余り綺麗にならず受け付けに頼んで【湯女】を呼んで貰った。


ミーシャを見た瞬間に目が泳いでいたが、


「勇者パーティーの大事な仲間だから」


そう言うと泣きそうな目で


「頑張ります」


と言った。


「だったら貴族令嬢以上に綺麗に磨き上げてくれたら別に金貨1枚弾むよ」


そう言ったら、目の色が変わっていた。


ついでに俺が貴族時代に使っていた服屋に連絡して【普段着】【ドレス】をそれぞれ5着注文の旨と直ぐに着れる吊る下げの服を5枚、下着を持って来させる様に手書きを書き騎士に頼んだ。


帰ってきた騎士に聞いたら、渋ろうとしたらしいが「王の名前をだしたら震えてました」との事だ。


ホテル付のメイドに冷たい物と新品のガウンを注文していたら、ローゼンが慌ててやってきた。




【ローゼン、ファスナーSIDE】



「商業ギルドの粛清が終わりました、これより法律的に商業ギルドはセレナ様の者になります」


どんな事をしたか報告を聞いたら...もしかして魅了の影響なのか、いや違うな、本当の馬鹿だ。


昔、シンゲンガーという知将が【人は城】という名言を残した位なのにな。



「話しは解ったが、俺は勇者じゃ無くて、これから商業ギルドのマスターになるのか?」


ローゼンとファスナーの顔色が曇った。


こいつら馬鹿すぎるな...


商業ギルドという、いわば箱だけ貰って俺にどうしろと言うんだ?


確かに彼らの財産まで全部貰ってギルドの金を貰えば充分だけど?


無くなしたら...この国終わるじゃん。


流通から何から止まりかねないだろうが...



「それはどういう事ですかな?」


そうじゃ無いだろうよ...


「いや、そこ迄ボロボロの商業ギルドを渡されたら再建するまで数年は掛かるからな、勇者なんてやれないな」



「いや、それでは困ります」



本当に馬鹿だな、スラムもそうだし、本当にこれが【切れ者】なんて呼ばれていたんだから可笑しいだろう。



「だったら、今直ぐ、全員回収して来い、そして...そうだな、全員に奴隷紋を打つ準備しろよ...はら急げよ」


「「はっはい」」



はぁ~、本当に溜息しか出ないな...



「どうしたのセレナ」



「なんでもねーよ」



なんか、取り返すより、このままミーシャつれて帝国でも行こうかな...なんてつい思っちまう。



疲れたな...



騎士に後でジェイクに来させるように頼んでそのままベッドにダイブした。

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