第27話 冒険者ギルドにて

騎士はまだのびていた。


国の騎士を襲い、命を狙ってきたんだ。


これなら、冒険者ギルドに手を出しても文句は言えないだろう。


時間はもう深夜。


だが、冒険者ギルドは24時間営業だ。


どうするか?


今から行くか?


それとも朝まで待って一番冒険者の多い時間帯に行動するか?


別に皆殺しにしたいわけじゃない。


今から行くことにしよう。


今のギルドマスターは冒険者ギルドの中に私室を持っていてそこで暮らしていたはずだ。


だからこの時間なら確実にいるだろう。


後は受付の人間もいるだろうから、まぁ丁度良い。


そのまま、冒険者ギルドに乗り込んでいった。


「冒険者ギルドへようこそ! 本日はご依頼でしょうか?」


まぁ、今の俺の姿じゃそう思うよな。


「ギルマスに会いたい、昨日ここの冒険者に殺されかけた」


受付の顔色が変わった。


「何を言っているんでしょうか? そんな事をやるはずはありません」


「何を根拠に?」


「当ギルドは、品位を重んじております、その様な事をする人間はいません」


此奴...馬鹿だ。


お金を払えば、犯罪していなければ誰でもなれる冒険者がそんなわけ無いだろうが。


「だったら、その言葉に責任が持てるのか?、命を懸けられるのか?」


「はいはい、命かけますよ! これで良いんですか?」


俺は記録水晶を取り出し、画像を浮かびあがらせた。


「やっているよな? しかもこの前に騎士二人に暴力を振るっているんだぜ」


「そんな」


受付嬢は真っ青になった。


「命かける約束だ...死ね」


「待って...うがやぁぁぁぁぁぁl-ーーーっ」


俺は受付嬢の頭を押さえ、そのまま机に顔面を打ち付けた。


流石に死にはしない...


だが、ギルドの机は石でできている。


鼻が折れて頬骨まで恐らく骨折しているだろうから、もう受付は出来ないだろう。


「命は助けてやる、早くギルマスを呼べ」


「ふううーーぅはい」



鼻が折れ、つぶれかかった顔でギルマスを呼びに行った。


横にもう一人職員がいるががたがた震えてなにもしていない。



すると、8人位の冒険者がこちらを睨み、文句を言ってきた。



「お前、何があったか知らないが受付嬢に手を出すのはご法度だ」


「そうだ、サニーちゃんに謝れ」



「俺は、此処のギルドに勝手に登録を抹消された挙句、財産を奪われた挙句、殺されかかったんだが...」


「嘘いうんじゃねー」


此奴も脳筋で話を聞かないタイプか。


「まぁ良い、これを見ろ」


「なんだこれは、S級冒険者のクラソスさんがこんな事するわけが無い」


此奴は本当に馬鹿だ。


記録水晶は改竄できないゆえに決定的な証拠になる。



「俺はこのギルドに喧嘩を売りに来たんだ、だったらやろうぜ...殺し合い」


冒険者の命は自己責任。


冒険者同士のもめごとは不介入。


それが冒険者のルール。


しかも、冒険者と一般人がもめたら、圧倒的に冒険者が不利。


冒険者が勝っても責任を取らされる。


逆に一般人が勝っても責任を取らなくても良い、例えそれが冒険者の死であっても。


これは冒険者には一般人は勝てない。


その理屈からそうなっている。


結局、此奴と7人の冒険者が加わり8人が俺を取り囲んできた。


「いいね...かかってこい」



S級とA級二人ですら相手にならないのに普通の冒険者が勝てるわけもなく、8人はあっさりと死んだ。


【冒険者の命は自己責任】相手が冒険者である以上責任は一切ない。



「お前が何者か解らないが、少々やりすぎでないかね」


髭もじゃの筋肉男、ギルマスのアイゼンが俺の前にきていた。


「ここのギルドの冒険者が俺を殺そうとしたんだ、普通に揉めるのは当たり前だ」


俺は記録水晶に映像を浮かび上がらせた。



「ああっ確かに、その様だな、そこの奴もクラソス達も冒険者だ文句はいわんよ、だが此奴はただの受付嬢、暴力振るってよい対象じゃない」


怒っている、怒っている。


「たしかに、今回の件ならそうだ、だが、冒険者ギルドで犯罪を犯し、俺を除名して功績、財産を取り上げた挙句、殺そうとしたんだぜ問題は【ギルド全部】の責任だ」


「お前、なに言っているんだ? 冗談も大概にしろ」


「俺はセレナだ、覚えているだろう?」


「セレナ...なんだお前なら勇者ソランに嫌われた犯罪者、仕方ないだろう」


「いや、犯罪者じゃない」


「だが、誰もがそう扱った、今更言われてもな」


「そうか、だがな、それは間違いだったと王族のマインが俺に謝り、いま国王が贖罪中だ、それに俺の父は貴族籍を抜いてなかった」


「だから?」


「つまり、罪人ははお前たちだ」


「はん、昔の事を言われてもね」


「そうだな、お前が冒険者で良かったよ」


俺はアイゼンの腕をもつとそのまま締め上げただ振った。


それだけでアイゼンの筋肉に覆われた太い腕が簡単にもげた。


「うわぁぁぁぁぁーーーーっ俺の腕がっ」


「冒険者の命は自己責任...良い言葉だな、冒険者ギルドには国も手を出せない...それは自己責任の世界で完結するからだ、だから俺はお前から暴力で財産を取り返す事にするよ! なぁーに幾ら俺が強くても一般人、悪いのはお前だ」


アイゼンは残った片手で剣を構えた。


確かに様になっているがそれだけだ。


めんどくさいから足を蹴った。


それだけでアイゼンの足は千切れた。


勇者とは此処まで恐ろしく強いのかと実感した。


だけど、記憶の中のソランは此処まで強くなかった気もするが。


「うわぁぁぁぁぁーーっ助けて、助けてくれーーーっ」


どうするか考えた...


「それなら、この冒険者ギルドをくれ!」


「確かに金も奪った、登録も抹消しただが、お前のお金の多くは商業ギルドだろうが...金貨500枚(約5000万)とじゃ釣り合わねー」


「もうそれは関係ない話だ、それにあの時の俺はそれが無い為に死にかけた、命とギルド、どっちが良い?」


「解った...ギルドを渡す」


ギルドの権利書をアイゼンから奪い取り、無事な受付嬢に頼み、承認官と騎士を呼びにいって貰った。


そのまま承認させ、騎士三人が保証人になった。


金は、もうここは俺の物だから、カウンターの内側の金から払った。



承認官に金貨5枚、騎士には金貨1枚ずつだ。


案外、承認は良い小遣い稼ぎになるから騎士は夜中でも嫌な顔しないで来てくれる。


まして、俺は特別だからな。


手続きが終わり、承認官や騎士は帰っていった。



「ううっううんひくひく」


さっきの受付嬢が蹲っていた。


俺は、カウンターの下から上級ポーションを取り出し、頭から顔にかけてやった。


これはS級クラスが死にかけた時につかうとっておきだ。


ドラゴンのブレスで焼けた顔ですら元に戻る逸品だ。


まぁ受付嬢じゃ絶対に買えないくらい高価だが。



昔、俺は此奴に会っていない...なら此奴に罪を問う必要は無い。


「お前、命賭けるなんて言葉使うなよ、殺されても仕方ないんだぞ、まして俺は本当に殺されかけたし、何年もの間地獄をみた」


「すいませんでした」


「なら、お前今日から俺の代理で【ギルマス代理】なちゃんと黒字にしておけ」


「あの...」


「出来るな」


「はい」


「それじゃ頼んだ、お前は給料を、そうだ今の三倍とって良いぞ」


「ありがとうございます」


此奴タフだな、さっき迄顔を潰されて泣いていたのに今は笑顔だ。



「待ってくれ、俺にもポーションをくれ」


「お前はこれからゴブリンの森に捨てに行く...」


「待ってくれ、この状態じゃ勝てねー」



「まぁ俺が味わった地獄を楽しんでくれ...【自己責任で】」



俺はアイゼンを担ぎ森に向かった。


煩いから途中みぞおちを殴り黙らせた。



まぁ、まだ解らないが...もし俺が魔族と戦う事になったら冒険者全部に【緊急クエスト】かましてぶつけてやるさ。


肉壁位にはなるだろう。



※冒険者ギルドは個人に所有権があり、その上に連合体がある。


そちらの設定をとっています。

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