第26話 S級冒険者 クラソス

セレナが宿で寝ていると3人の男が襲って来た。



凄いもんだ、勇者に選ばれてから、この体は急激に別の生物になった様に作り替えられている。


まだ、勇者になってから、魔族と戦ってもいないのに正に人間兵器だな。


昔、聞いた事がある。


勇者とは何かと...その時の俺は【正義を守り勇気がある者】


俺はそう答えたが、実際の回答は【勇者とは魔王すら葬り去る究極の兵器】だった。


ソランのあの行いを考えれば、今となっては正しかったと言わざる負えない。



「外に騎士がいたはずだが」


「ああっ眠って貰った」


騎士二人、それもそこそこ腕利きがついていた筈だ。


それを倒せるなら、強者なのだろう。



「強いんだな、それでなんのようだ?」



「ジョアンナとポロンの件だ、貴様のせいで二人は死んでしまった」


秘密裏に行われた筈だが、まぁかなり盛大だし、冒険者なら裏の情報源を持っていそうだから知っていても可笑しくない。


まぁ答え合わせは必要だ、ついでに状況を記録水晶に記録しておこう。


「ということは、あの二人に関係した冒険者と言う事か?」


「そうだ、まぁお前の環境を同情しないでもないが、命まで奪う事は納得できない...そら」


冒険者が何かを投げつけてきた。


「なんだそれは!」


「貴重なミノタウルスの燻製だ...ジョアンナの店にも無い高級品だ」


「それがどうした?」


「これが、お前に対する償いだ、いまお前はあの時手に入らなかった食料を手にした、ならば今度は二人の命をお前の命で償え」


冒険者は素早く剣を抜き襲い掛かってきた。


多分、勇者になる前の俺ならこれで腕一本失ったかもしれない。


だが、今の俺にはこんな物簡単によける事が出来る。


「冒険者なら名前位名乗れ」


「俺の名前はクラソスS級冒険者だ」


S級冒険者、ならば話が早い。


S級ともなれば冒険者ギルドの看板冒険者だ。


それが俺を殺そうとしたんだ、責任を冒険者ギルドに負わせる事が出来る。


冒険者ギルドも俺の敵だ。


だが、冒険者ギルドは国の管理を離れている。


ゆえに国に頼んでも罪を追及できない。


勝手に俺の登録を消し、預けてあったお金を奪われた事は忘れない。


丁度良い...これでギルドを責める大義名分が出来た。



「他の二人は名乗らないのか?」


「A級冒険者クラウ」


「同じくA級冒険者グランダール」



「そうか、なら行くぞ」



馬鹿な奴ら...まぁ俺が勇者だとは知らないからなんだろうな...


普通の人間が敵わないから【勇者】が必要なんだ。


俺にこいつらが勝てるなら、勇者など要らない。


勝負は簡単だった。


実際に俺は斬っていないが、剣を持っていたらドラゴンすら切り裂くのが勇者だ。



その力で斬りかかってきたクラウをただ殴った。


それだけで《グシャ》という音がたちクラウは立ち上がらなかった。


「貴様、良くもクラウを殺してやる」


多分、グランダールは気が付いていない、今の一撃でクラウは死んでしまった事に。


飛び込むようにかかってくるグランダールにただビンタした。


顔が一周回った気がする。



「クラウ、グランダール、傷は浅い立て、今度は俺もやる」



無理、もう二人とも死んでいる。



俺が笑顔で近づくと...


「楽に殺してやろう...斬岩剣」


スキルを使って攻撃してきた。


だが、今の俺にはそれすら止まって見えた。



剣をよけ蹴りを入れた。


多分これで3人とも死んでいる。


記録水晶をとめペンダントになっているタグを見た。


間違いなくS級冒険者だ。



これでギルドを責める口実ができた。



今から、ただ報告を聞くだけじゃつまらない。



早速行動しよう。



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