第20話 勇者ソラン、裁かれる
俺の名はソラン。
勇者として戦いこの世界を平和に導いた勇者だ。
だが、その後に、俺は多少の悪さをした。
その悪さについてはまた別の機会に話してやる。
俺は世界を魔王から救いはしたものの新たに現れた新しい魔王の先兵にあっさり殺されてしまった。
そして、俺は今死後の世界で裁きを受けている。
しかも裁くのは俺の知っている神とは全く縁のない神のようだ。
「ソランよ一歩前にでなさい」
俺の目の前には大きな天秤がある。
その前に女神みたいな者がいた。
「貴方は一体だれですか?」
「裁きの神、イシュタル、貴方がいた世界の神じゃないわ」
俺は女神の目を見つめた
「あはははっ無理ね、魅了なんて通用しない、更に言うなら貴方が得意の性的な魅了も効かないわ、力は貴方より遙かに上、ほらね」
音を立てて一瞬で俺の頭がはじけた、そして再び戻った。
「うわっ」
「こんな風に簡単に貴方なんて消滅できるのよ...良いわね、貴方が出来るのは黙って裁きを受け入れるだけだわ」
俺でも解る。
此奴は魔王なんて比べ物にならない化け物だ。
「俺は」
「貴方は黙ってこの裁きを受け入れなさい」
嘘だろう、ただ言われただけで話せなくなるなんて。
「なら、裁きを始めるわ、この秤は良い事、悪い事に振り分けて貴方の行いを載せていくの、それで貴方のこれからの運命が決まる訳ね、それじゃ始めるわね」
「他人の恋を踏みにじり、何人もの恋人達を引き離した」
大きく悪の方に天秤が傾いた。
「善人を傷つけ自殺に追い込んだ」
更に大きく傾いた。
不味い、不味い、不味い...大変な事になる。
「相手の意思を無視して女を犯した」
更に傾いた。
「魅了をつかって人の心を惑わした」
更に傾いた。
「他人の財産を奪い取った」
更に天秤は傾いた。
ああっもう終わりだ...これじゃもう破滅だ。
確かに俺は悪人だった...やりたい事を全部やったんだ仕方が無い。
確かに俺はクズだった。
「今度は善の方を載せていくわ」
「少女を虐めから救った」
天秤は動かない。
「あら、貴方本当に善の方は小さい物ばかりね」
もう終わりだ、俺はどうなるんだ。
幾つか女神は載せてくれたが天秤は動かない。
「これで最後...世界を魔王から救い平和をもたらした」
天秤は大きく【善】に傾いた。
俺は助かったのか?
「おめでとう、貴方の裁きは終わったわ...本当にギリギリだけど【善】になったわね、あっ喋れるようにするわね」
「それで俺はどうなるんだ」
「そうね【善】だから人としての転生は約束されるわ、まぁ犬とかミジンコにはならないわね、ただギリギリ【善】だから、勇者とかは無理ね、今の能力を失い、貴族にもなれない、多分農民とか職人とかの子供に生まれる可能性は高いわね」
「そんな者になるのか?」
「人間に生まれるって言うのは凄く幸せよ、半分は弱肉強食から外れるんだから、まぁ魔物には殺されるかもだけど」
「そうだな」
「他の選択では天国に行く、かしらね、こちらも能力は奪われるわ」
能力も無く、只の弱者として生きるなら天国にいった方が良いだろう。
「解った、天国に送ってくれ」
「本当に良いのね」
「ああ」
こうして俺は天国に行く事になった。
【女神SIDE】
本当に良かったのかしら?
天国には【欲が無い】のよ?
性欲の塊の貴方にはそれが無い世界は辛い物になるのではないでしょうか?
多分、心に穴が空いた状態になる。
本当の愛を知らない者が天国に行っても、ただただ退屈なだけ。
貴方を恨む方が山ほどいる天国で、死ぬ事も出来ないまま永遠に生きる。
そして愛を知らない貴方は、愛される事もなく生きるだけ。
恐らくは孤立して寂しいまま死ぬ事も出来ない。
まだ地獄の方が幸せなのかも知れないわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます