第18話 裁くしかない

国王である、アレフ6世は、セレナが去った後に貴族も一部を除き下がらせた。


この場には、国王とマイン、宰相のローゼン、ファスナー、スマトリアしかいない。


「先程のセレナ殿から預かった訴状がこれなのだが、意見を聞きたい」


訴状と言いながら、最早それは紙を綴ったノートだった。


「すみません、先程の話であれば、私の分野の話だと思われます、先に目を通さして頂いても宜しいでしょうか?」


ファスナーは法解釈の話があると思い進言した。


「ああ、構わぬ、確かにこれが法と正しいかどうかの判断がまず必要だ、お願いする」


ファスナーはノートを見ながら頷いていた。


余りに多く、読み終わるまではかなりの時間を要した。


「これは、確かに残酷な話だが、法解釈から言えば正しい、しかも訴状として出された以上は行わない訳にはいかない」


他の者も見た瞬間凍り付いてしまった。


そこ迄の内容だった。


「これは、流石に...王よどうしましょうか?」


宰相のローゼンは顔を真っ青にしながら王に聞いた。


本来は刑を執行したくないなら王が恩赦を与えれば済む事だ。


王にはそこ迄の権限がある。


だが、それをしてしまえば、完全にセレナとは切れる。



「王よ、息子セレナの事はこのまま放置し、やはり勇者無しで魔族と事を構えては如何ですかな?」


「うむ、そう考えぬ事も無いが、魔族の中で四天王以上の存在は聖剣なくして止めが刺せぬらしい」


「その様な事があるのですか」


「ああ、しかもソランの時は四天王が存在しない魔王だったから、魔王のみ聖剣で倒せば良かったが、今回の魔王軍には先兵の中に最低2人はおった」



「すると...」


「最早、勇者無くしてどうする事も出来ぬ...しかも老いたとはいえソランがああも簡単に倒されたのだ、魔王の力は強大」


「ならば、息子が戦った所で敵う筈がない、息子はソランと同い年なんですからな」


暫く考えた後で王はいった。


「それが、勇者も魔王も相手に呼応して強くなる、ソランに敵わない魔王でも今世の勇者であれば勝てる可能性がある」


「ならば、何がなんでも息子に頼らなければならないそう言う事ですかな」


「そうだ...だがこの条件は余りに酷だ、スマトリア伯からもなんとか言って貰えぬか?」


スマトリアは黙って首を横に振った。


「以前のセレナなら、私の言う事も聞いたかも知れませんが無理でございます、それに私の言う事を聞く位であれば、マイン様やマリア様がいるのですからこの様な訴状を出す訳が御座いません」


周りが困っている中、一人すました顔でいた、ファスナーが声を上げた。


「ちょっと宜しいですか?」


周りが顔を向け、王が言った。


「申してみよ」


「事は単純で御座います、セレナ殿は不当な事をされて、それを訴えた、それは例えセレナ殿が勇者でなくても正しいのであれば法に基づき裁かねばなりません、今回はその数が多いのと相手に貴族が多いそれだけでございます、法を守る者として裁くのが当たり前、そう進言致します」


「確かにこの国は法治国家、仕方ない...だがこれは大きな問題になる」


「お父様、確かに断罪をやるしかないでしょう...確かに可哀想な者がいて同情は致しますが...やってしまった以上は仕方ないと思います」


「はぁ~気が重いがやるしかないのだな...凄く心が痛むが仕方ない」



王国に血の惨劇が降る...



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