第17話 罪と罰

流石にこの姿での登城は憚られるのだろう。


俺はホテルに1泊して身綺麗にしてからの登城となった。


ご丁寧に服まで仕立てるのだろう、ホテルの受付の前なのに、採寸をしにやってきた。


最初、このホテルに入る時に、受付で少し揉めた。


「当ホテルはどんな方でも例外は無くドレスコードを守らない方はお泊めできません」


最初から、ちゃんと話位通しておけよ。


「それは宰相の私が頼んでも無駄...そういう事ですかな?」


「....(汗)左様でございます」


「それはこの国の王女である私が頼んでも駄目とおっしゃるのかしら?」


「さ....(汗)(汗)左様で..ございます」


確かに困るだろうな、俺は臭いし汚い...他に客もいる。


「俺なら結構だ、洞窟で暮らしていた位だ、スラムの片隅にでも泊まるさ...いっその事面倒だから、このまま登城しよう」


「ま、待って下さい!」


こんな面倒な事しなくても、城の施設を使わしてくれれば良いだけだ、貴賓室もあるのだからな。


まぁ、俺の今の姿を余り城の人間に見せたくない、そんな所だろう。



「幾ら言われても無理な物は無理でございます」



「ならば、解った、このホテルの三国の基準を、星5つから0に落とし、貴族階級には使用をしない様に触れを出す」


「なななな」


顔が青くなったな。


国同士で決めたホテルランク、皆がこの星1つ上げる為に死ぬ程努力している。


その最高級の証が5つ星、それが0になれば事実上ただの宿屋だ。


更に貴族階級が使わないと知れたら、どんな宿屋でも一流なんて名乗れない。


「仕方ないから、王に連絡をとり、聖教国の教皇様にも連絡し、帝国に連絡して帝王にも伝えて貰うしかない」


「待って下さい! 何故そこ迄されるのです、理不尽すぎます」


「それは、この方が勇者だからだ...勇者を断ったのだから、勇者保護法に合わせると...」


「ゆ、勇者様...ひぃ..直ぐに部屋を用意します」


「くれぐれも粗相のないように、ではセレナ様、明日お待ちしております」


そう言うとローゼンとマインは去っていった。


騎士5名残して....この5名は俺の護衛と言う事だが、実際は逃げない様に見張る為にいるのだろう。



部屋で寛いでいると、湯女(ゆめ)がやってきた。


湯女とは、高貴な身分は、主に王族は体を自分で洗わない。


こう言った専門の体を洗う人間がいる。


本来は伯爵位なら自分で洗うのだが【粗相のないように】頼まれたから来たのだろう。


ちなみに如何わしい事は一切しない。


あくまで綺麗に体をする、あるいみ美容の方のプロだ。



「失礼します」


見た瞬間、女性は目が点になった。


幾ら洗体のプロとはいえ、此処まで汚くなった体を見るのは初めてだろう。



専用のマットを敷き、湯を掛けていく。


それが終わると、専用の洗浄液を使い体を洗っていく。


俺は相当汚れていたらしく、体を洗う事23回、髪は18回洗ってようやく綺麗になった。



「ようやく綺麗になりました、まさかノミやシラミまでいるなんて思いませんでしたが、ぜぇぜぇ完璧です」


「ありがとう」


そう言い銀貨1枚を払った。


料金そのものは国が払っているから、これは純粋にチップだ。


恥をかかせないようにあらかじめローゼンが用意してくれた物だ。


「ありがとうございます」


彼女はよれよれしながら去っていった。


体を綺麗にして貰ったので久々に湯船に浸かった。


久々に浸かった湯は物凄く気持ちが良く...湯から出るとそのままベッドにダイブしたら眠気に襲われ眠ってしまった。



気がつくと朝になっていた。


ディナーは【寝てらっしゃったのでルームサービスを下げた】そんな内容の手紙があった。


暫く待つと朝食のルームサービスが届き、食事を堪能した。


正装が届いたので着替えた。


部屋の前の騎士に声を掛けると「馬車を用意します」との事。


王家の馬車に揺られて、そのまま登城した。




城につくと直ぐに謁見の間に通された。


王は玉座に座り、周りには名だたる貴族が並んでいた。



俺は直ぐに王であるアレフ6世に跪いた。


「久しいのう、セレナ殿」


「お久しぶりでございます国王、アレフ6世様」


王の周りにはの貴族の中にお目当ての人物がいた事にホッとし、また父やマイン、マリアがいた事に心が痛んだ。


「それで此処に来られたという事は、勇者になる事を引き受けてくれる、そう言う事で良いのだな!」


「王よ、それはやぶさかではありません、ですがその前にこれを」


俺は紙にしたためた、訴状を渡した。



「これは一体なんなのだ?」


「先日、ローゼン殿と一緒にマイン様が私の元に訪れて【謝罪】をして下さいました」


「そうなのか? まぁそれがどうしたというのだ」


「マイン様自ら謝罪をしたという事は【王族が非を認めた】という事でございます」


「セレナ殿、これは一体どういう事なのだ」


「王よ、王国は王族以外の存在は例え貴族であっても法を守る、法治国家である、間違いありませんか?」


「そうだ...確かにそうだ、それがどうした?」


「先程、王族であるマイン様が私に謝罪をした、という事は自らが【今回の不当な行為】を認めたということだ、罪を認めて謝罪をしたなら次は決まっている...法に基づく罰を下す事だ」


「セレナ殿、またれい...あの時は儂も含み、皆が可笑しかったのだ」


「可笑しな事を言われます、昔し同じ様に魅了にかかったフェルゼン伯が罪を犯したときは【その様な考慮】は無くギロチン送りになった記憶が御座います...どう思われますか? 法の番人と言われるファスナー卿」


法服貴族を束ねる、ファスナー卿なら俺の望む回答をくれるだろう。


「確かにその判例は生きている、魅了に掛かっていてもその責は無くならない」


「王よ、その様に判断されている...勇者の任を受けるのはやぶさかでない無い、だが先に私に起きた大きな陰謀ともとれる国絡みの事件を解決してからの話だ」


王は、訴状の中身を冒頭だけ読み青ざめていた。


「この内容は、流石に儂であっても直ぐには、答えられぬ」


「ならば、私はこの国に留まり、待つ事とします、執行され全てが片付いた時、もしくは出来ぬと判断が下った時に連絡を再び下さい」


真っ青な顔で王は震えていた。


「解った、その滞在費は国が負担する...今日はとりあえず下がって良いぞ」


「では国王様、これで失礼致します」


父とマイン、マリアと目があった。


マインにはちょっと罪悪感があったが、仕方ない。


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