第4話 復讐相手は身近にいた

マリアは一しきり泣き落ち着くと侍女に頼んで部屋をかたずけさせた。


そしてテラスに行き、夜風にあたっていた。


「マリア様、体に障りますよ」


「そうね、心配かけたわ、ただ、もう暫く夜風にあたりたいから、紅茶と羽織る物をお願い」


「畏まりました」


どうして良いのか解らない。


手鏡でみた私の顔は、もう昔の様な若さは無い。


どう見てもおばさんだ。


(※ この世界の寿命はおおよそ50年~60年です)


もし、セレナと結婚していたら、あと5年もしたら仕事を引退して余生をどう生きるか考える頃だわ。


いま、セレナは何処にいるのだろうか?


少なくとも国外に追放されたからこの国にはいない筈だわ。


ソランに復讐したくても最早いない。


なら、誰に仕返しすれば良いのだろうか?


ソランには確か身内がいないのか...いたらそいつに仕返ししなければ腹が収まらなわね。


紅茶をすすりながらマリアは月を見ていた。


17歳の時の私はセレナと一緒に月を見ていたわ。


良く未来の話をしてたわね、それが正気に戻ったら33歳...理不尽だわ。


勇者って何を基準に選ぶのか解らない...少なくともあんなクズを選ぶなんて信じられない。


「お母さま、余り外にいると風邪をひきますよ」


「そうね、ソアラありがと...」


「どうかしましたか? お母さま、顔色が悪そうですが」


「そうね、そうだ、私が入れるから一杯付き合いなさい」


いるじゃない...こんな身近にソランの身内が...


「そうですね、お母さまの紅茶は美味しいですからね頂きます」


ソアラは笑顔で母親に微笑んだ。


だが、ソアラはソランにそっくりだった。


その為、マリアの殺意がぶり返した。


ドンッ...マリアがソアラに体当たりをした。


そのまま、ソアラはベランダから落ちていった。


結構な高さがあるから...助かる事は無いだろう。



「母さま...なんで」



驚いた顔でマリアを見ていた。



「あんたが、その顔だからいけないのよ...」



そう言うと憎しみを込めてソアラが落ちて行った先をマリアは見ていた。


その顔には親子の愛情など一切現れて無く、後悔の念も無い冷めた顔しか無かった。



もう一人の子供、マニアもその日の夜に心臓にナイフをつきたてられて殺された。



次の日に侍女が見た物は血に塗られたマリアの姿と二人の死体だった。


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