とある戦闘(にちじょう)の風景 3

これでプロローグ終了です。


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 屋上の扉は外側に開く……あまりドアに近いと向こうにバレる。俺は半身になりながら消火器を振り上げた姿勢で待つ。




 …………………………




 ……………………




 ………………




 …………




 ……




 ……おい、まだか?


 もうとっくに1分経ってないか? 振り上げた両腕が重いんだけど? 時間を確認はもうできない……畜生、早く出てきやがれ。


 俺の祈りが通じたのか、ガチャっとドアノブが回ると扉が開き慌てて出てくる敵目掛けて消火器を振り下ろした!!


「うがっ!! でえぇっ!!」


 血を流しながら頭を押さえている敵……男だ! その男に俺は追い打ちをかける。


「オラ!! 死ねよクソ!!」


 散々、命を狙われたんだ……コイツに同情する余地はない。俺は自分に言い聞かせるように消火器を振り下ろし続けた。


「やめて、許して鳴海!!」


「ああ?」


 おい、なんで俺の苗字を言いやがった……まさかコイツ知り合いか? 頭を庇っている腕を消火器で殴りつけて手をどかすと……そいつは同じクラスの吉田川だった。それを確認した俺の頭に血が上った。


「おい!! なんでお前が俺を狙うんだよ!! 裏切りやがったな!!」


 こいつは同じクラスだ。3人で……真奈美と一緒に協力してこの狂った状況を切り抜けようと約束していたはずだ……はずなのに!!


「しかも何だよその爆弾魔みたいな能力はよ!! それも嘘だったじゃねぇか!!」


「やめろ! 違うんだ!! 敵をだますならまず味方からって……がっ」


「人を爆死させようとする味方なんてねーだろ!!」


 俺が再び消火器で頭を殴りつける。吉田川は顔を血と涙でぐちゃぐちゃにさせながら白状する。


「お、俺の能力は『マップ×ボンバー』……表示されたマップの好きな位置を……爆発させられ……」


「もう、お前の能力とかどうでもいいんだよ……なんで裏切ったんだよ」


「花宮さん……中学の時……ずっと好きだった……告白したけど駄目だって」


「ざけんなよ!! フラれたから殺すとか、とんだサイコパスだな!!」


「お前に……何が分かる!! いつも花宮さんと一緒にいて……明日死ぬかもしれないんだから……死ぬ前に……」


「知らねぇよ!! わかりたくもねぇよ!! フラられて嘘ついて殺人者になる奴なんてっ!!」


 吉田川の目が虚ろだ……折れて殆ど歯が無くなっている口がパクパクしている。何か嫌な予感がする……俺は直感に従ってその場を飛び退く。


 ……その途端、俺がいた場所が……吉田川を巻き込んで……爆発した。


 俺は爆風で壁にぶつかった。床に倒れた後、ぶつけた場所を摩りながら起き上がる。振り返ると、もうそこには吉田川はいなかった。ん、メールが届いたぞ……内容を確認してみると……


『8、そろそろ気絶から目覚める。かなりの確率で自爆する。虚ろな目をしたら注意。事情を知りたくなければそのまま殺せ』


「おせーよ!!」


 いや、多分、消火器を拾うタイミングと教師に捕まったせいで未来が変わったのかもしれない。本来は一撃で吉田川を無力化出来たのか……何にせよ今回も生き延びられた事を良しとしよう。


 能力者との戦いが終わると、その時に負った怪我は治るルールらしい……俺はジャージを脱ぐと、返しに行くのも面倒なので途中の落とし物ボックスにソレを突っ込み、体育館に向かった。




 既に授業中だが、あらかじめ外側の出入り口の鍵を開けておいたので、体育倉庫に入る事が出来た。


 俺の姿を確認した真奈美はこちらに向かって飛び込んできた。俺の胸に顔を埋めて、体育館側に声が聞こえないよう声を殺して泣いている。


「辛いだろうけどな、次の授業は出ような」


「……ん」


 真奈美は俺の胸に顔を埋めたまま返事をする。現状、授業に出ない奴は能力者の可能性が高い。俺たちは極力元の生活から外れない行動を取らないといけない。


「敵は……吉田川だった。あいつは最初から俺たちを騙してたんだ。お前を動揺させようと告ったりしたんだって」


「……ん」


 バレているかもしれないけれど、真奈美が吉田川を振ったから凶行に及んだと思われないように説明した。


「もうそろそろいいか?」


「……もう少しこのまま」


「そうかい」




 ……結局、俺たちが体育倉庫を出たのは授業が終わってからだった。



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勢いで思いついて勢いで書いてしまった話ですが、とりあえず一段落です。

メインの『エクスプローラーズ!!』の合間に書いていく予定なので、更新は不定期になりますが長い目で見守ってやって下さい。

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