とある戦闘(にちじょう)の風景 2
プロローグが2話で収まらなかったので合計3話になります。
_________________________________________________
俺は耳を劈く爆発音をBGMに教室のベランダで腰掛けて休んでいた。そろそろ息も整って汗も引いてくる……そろそろ時間か?
12時23分00秒ぴったりにメールを受信する……俺はこめかみに人差し指を当てるとメールを確認した。
『4、ベランダを伝って2-1へ、43分に教室から出て行く生徒の後ろを歩きながら階段に向かう』
『5、階段脇の消火器をジャージの中に隠しながら、階段を屋上に向かう』
『6、屋上の入り口前の階段に待機、12時50分に扉前が爆発、収まったら扉の取っ手側で大気』
『7、51分42秒に消化器を振り上げて、3秒後出てきた男を殴りつける……これでクリア』
おお、今回はかなり具体的じゃないか……大気って待機だよな? 多少の誤字は目をつぶるとして、これならきっと生き残れるだろう。メールの内容もかなり精度が高くなってきて信頼出来るようになってきた。最初の頃は要領を得ない文章で何度死にかけた事やら……おっと、もうそろそろ時間だ。
俺は立ち上がりジャージの尻を叩くと、まだ爆発し続ける教室を横目に2-1側へ移動する。教室を覗くと2-1から同じジャージに着替えている男子生徒達がいた。40分になる頃にはぞろぞろと教室を出て行くので、俺は最後尾に一緒について行く。
なるほど、2年のジャージ軍団に混じって敵の目を誤魔化す訳か……よく考えているじゃ無いか。……とはいえ顔を見られて上級生に話しかけられるのも面倒だ、ズボンのひもを締めるフリをしながら下を向いて歩く。
渡り廊下を進むと敵がいるであろう校舎に入る。体育館は下だが俺は上に用がある。最後尾を歩いている俺は一人だけ階段を上に上ろうとする……やべ、消火器忘れた!?
おいおい、命が掛かってるのにウッカリするなよ俺!! 急いで階段を下りて消火器を拾うとジャージの中に入れる。
やばいかもしれない……ちょっとした行動の違いで未来が変わる事がある。これくらいセーフだよな? と、自分に言い訳をしながら時間を確認する。
12時48分……あと2分あれば屋上に間に合うよな? 3階から屋上への階段に差し掛かった時に……
「おい、そっちは屋上だぞ」
やばい! 話しかけられた!? 声からすると教師だよな? 俺の知っている教師だったらマズい……だが、このまま無視するのはもっとやばい。俺は振りながら返事をする。
「あ、すみません、屋上に弁当箱置いて来ちゃって……」
よかった、たぶん3年の教師だ……顔は知らないだろう。頼むからこのまま見逃してくれよ……
「そうか、もうすぐ予鈴が鳴るから急げよ」
「はい、すみません」
よし、クリアした……まだ時間はあるよな? 俺は安心してそのまま階段を上がろうとした。
「待ておい、お腹に何入れてるんだ?」
うっ、マズすぎる、消火器を持っている理由なんて思いつかねぇ……背中に変な汗が伝ってきた。
「それは……」
その時、校内放送のメロディーが流れた……
『田所先生、田所先生、至急職員室までお越し下さい……』
「なんだ? 授業始まる前だってのに……」
おお、目の前の教師が呼び出された……このまま逃げよう。
「すみません、授業が始まるので急いで取りに行きます」
教師の反応を待たずに急いで階段を駆け上がった……よし追っては来ないようだ。時間は大丈夫か!? 安心して時間を確認しようとすると……目の前が爆発した!!
俺は爆風にあおられて足を滑らせ膝を階段にぶつけながら転んでしまった。がああっ、痛ぇ……俺は声に出さないように必死に痛みを堪えた。多分、敵は警戒して扉前を爆破したんだろう。やれやれ、ちゃんとそれを分かっていながら俺はこのザマだよ。
「畜生、時間まであと1分も無いか……クソ足痛え……」
俺はぶつけた右足を引きずりながら階段を上がると、扉の横にたどり着く。時間を確認している間に扉が開いたらやばい。
……俺はジャージから消火器を取り出すと、覚悟を決めてそれを両手で振り上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます