第5話 勘違い

待て、雪の好きな人って、樹原だったら都合が良くないか?


電車に揺られ、帰宅しながらぼんやり考える。

私は、樹原の恋も雪の恋も応援しないといけない。

でも、この二人の恋がどちらも叶うことは難しい。


しかし、ひとつだけ方法がある。

樹原の好きな人が雪だったらいいんだよ!


「やば、天才かよ…。」


これは雪に聞くしかないな!



「えっと、話って、なに?」

次の日、私は雪をショッピングセンターに呼び出した。

スタバの新作を飲みながら、雪に向かい合って席に座る。


「雪の好きな人って、誰?」

私は、単刀直入に聞いてみる。


「…⁉︎」


雪は珍しく硬い表情を崩して、びっくりした様な顔をする。


「え、な、なな…」

なんで?と言いたいのだろうか?

慌てすぎて、「な」しか言えてない。


それにしても、雪は正直イケメンだ。

側から見たら、完全にデートだろうな。私たち。


なんなら、雪が顔りんごなので、バカップルである。


「その人って、アニオタだったりして…?」

「な、なななな…⁉︎」


どうしよう、雪がナ星人になっちゃったよ。

でも、アニオタって、樹原とおんなじだよね?


「わかった!雪の好きな人!」

「ほえっ⁉︎え、な、え?」


雪ったら、照れちゃって可愛いなあ。


「多分その子も雪と同じ気持ちだよ!絶対!」

思わず雪の手を掴むと、雪は急に泣き出してしまった。


「…ほんと?」

うあーっと、泣いてしまうので、店中の人が私たちを見る。


樹原と両思いで嬉しいのはわかるけど…。


流石に店を出た。

その時、手は握ったままだったけど友達ならこれも普通だよね?

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