神装戦姫ポリフェノール~追放された聖女が本物だから悪い貴族から取り戻します作戦~

華咲 美月

第1話

 春になってラクサの花が咲き誇り、散る花びらが小川のせせらぎに乗って運ばれていく。

 うららかな季節の訪れで、人々の心は明るく晴れやかになっていく。

 そんな中で、ロイエンタール王国の第三王女であるポリフェノールの心は重かった。

 父親である国王から告げられたからだ。

「ポリフェノール、お前の婚約者が決まった。グレゴール公爵家の嫡男で名前はアイゼルだ」

「はい」


受けるしかなかった。

 愛妾の娘である私は王宮内での立場が弱かった。

 父王には逆らえない。

「一ヶ月後の王宮のお茶会で顔合わせするからそれまでに準備しておきなさい」

「かしこまりました」


 私は父親に対するものではなく、家臣が主君にするようにお辞儀をした。

 私は第三王女でありながら、実は国の暗部を司る諜報機関のエージェントである。

 公爵令息との婚約も任務であった。

 政略結婚よりももっと愛の無い任務での結婚ね。

 私は人知れず溜息を付いた。


 私も清純な年頃の16歳の乙女である。

 できれば恋愛結婚がしてみたかった。

 憂鬱なのはそれ以外にも理由があった。

 私に嫉妬する第一王女の存在である。


「ポリフェノール! ちょっと来なさい!」

 父王の執務室から出て、廊下を歩いていると案の定、第一王女のビアンカが待ち構えていた。

 ビアンカはシルバーブロンドの髪色で縦ロールの髪型をしていた。

 目はつり上がっていて残忍な光を帯びている。

 今年で28歳で、2回結婚しているが全て離縁されていた。

 この残忍な性格のせいで結婚生活が続かないのである。


 サディスティックな性格をしており、侍女を鞭で打つのは日常茶飯事で、髪を切ったり殴ったりと弱いものをいたぶることが好きなので、王女でありながら皆の嫌われ者であった。

 まさに絵に描いたような悪役令嬢である。


「貴女みたいな下賤な踊り子の娘が、公爵令息と婚約するなんて、出戻ってきた私を馬鹿にしているの?」

「とんでもございません、ビアンカ様……」

「分かっているわね? お仕置きしてあげるわ、ついてらっしゃい」


 私は逆らうことも出来ずにいつもの場所に連れて行かれた。

 王宮の地下牢に隣接した拷問部屋である。

 私は裸に剥かれて両手両足を大きく広げて壁の鎖に繋がれていた。

「私を馬鹿にすればどうなるか、身体に教えてあげるわ」

 ビアンカは3メートルの長さの皮の鞭を手に取った。

 鞭の先には鉄の棘がついている。


 情け容赦なく鞭で打ち据える音が、拷問部屋に響いた。

 私の白い肌にはミミズ腫れがいくつも広がり、鉄の棘でつけられた傷が血を流していた。

 小一時間ほど責められて、私は息も絶え絶えになった。

 私の足元には血溜まりが出来ている。


「公爵令息との婚約は貴女の方から破棄すると言いなさい」

 私は力なく頭を振った。

「強情ね! でも、これならどう?」

 ビアンカは塩の入った壺を手に取り、私の身体の傷に塩を塗りたくった。

 私の悲鳴が拷問部屋に響く。


「ふん、これ以上責めると本当に死んでしまいそうね。今日はこれくらいにしておいてあげるわ」

 ビアンカは私の身体から鎖を外すと拷問部屋から立ち去った。

 私はビアンカの姿が見えなくなると、すぐに回復魔法を使った。

「ハイヒール……」

 淡い光に包まれて、一瞬で体の傷がすべて塞がる。

「……」

 私は無言で拷問部屋の片隅に投げ捨てられていた、下着とドレスを身にまとうと、自室に帰るべく歩き出した。


 私が自室に帰り着くと、専属侍女のアリサがすぐに事情を察してくれた。

「またビアンカ様に拷問されていたんですか?」

「いつものことよ」

「ビアンカ様なんか暗殺してしまえばいいじゃないですか」

「そうもいかないわ。お父様はあんな悪役令嬢の娘にも愛情を持っているようだし」

 私は国の諜報機関の主力を占めているメントス一族の族長の血を引いている。

 暗殺術や房中術など子供の頃から仕込まれていた。

 ビアンカ王女などその気になればいつでも殺せるのである。


 アリサがお風呂の準備をしてくれたので、血糊を洗い流してから、ゆっくりと湯船に浸かって心と身体の疲れを癒やした。

 回復魔法で傷は癒せても、精神的な苦痛は記憶されて、積み重なっていくのだ。

「いくら私がメントス一族の後継者でも、流石に堪えるわね……」

 私が拷問を受けているのは、父王も母親も知っている。

 それでも見逃されているのは、諜報機関のエージェントとしての訓練の一環で、苦痛に耐える忍耐力を養うためである。

 自分で拷問の苦痛を味わって見ることが訓練になるというのである。

「嫌になるわね……」


 お風呂から出て、部屋着に着替えると、アリサが手紙を渡してきた。

「ミルフィーユ様からのお手紙です」

 ミルフィーユは私の母親である。

 メントス一族の族長で踊り子をしている。

 父王の愛妾である。

 それと同時に、諜報機関のリーダーでもあった。

 メントス一族が勢力を拡大してきたので、王家への忠誠心を高めるために、父王が私の母を愛妾にしたのである。

 メントス一族の血を王族に取り込むためであった。


 私は母親の手紙に目を通した。

 いつものように読んだ後、燃やさなければならない手紙だった。

 火魔法で火をつけて暖炉の中に投げ入れた。

「城下町のスラムで探偵事務所を開業するようにと言う命令よ」

 アリサには手紙の内容をかいつまんで説明した。

「それでは変装して王宮を抜け出すんですね」

「そうね」

 私は堅苦しい王宮を抜け出せるので、楽しくなってきた。


 翌日、王宮の隠し通路を抜けて、城下町に出た。

 自慢の赤髪はくくって短くまとめてある。

 服は活動的なベージュのシャツとキュロットスカートだった。

 大きな眼鏡をかけているので、第三王女だとは気づかれないはずだ。

 探偵事務所の建物などは、諜報部の人間が全部準備してくれていた。

 私はそこの所長として、初日から依頼を受けて働くだけである。


「はぁ~、退屈だわ……」

 私は机に突っ伏して溜息を付いた。

 初日から依頼などなかなか来ないのだ。

「お茶にしませんか? ポリ様」

 アリサが微笑んで、湯気の出るティーカップを目の前においた。

 専属侍女のアリサは探偵事務所にもついてきていた。

 所長のポリの専属秘書という設定である。

 私はここでは本名のポリフェノールではなく、美少女探偵のポリと名乗っていた。


「カモミールとローズヒップのブレンドティーです。気分が落ち着きますよ」

「いただくわ、アリサのお茶は美味しいもの」

 私は和んでお茶を頂いた。

 アリサがお茶請けにチョコパウンドケーキを用意していた。

 ありがたく頂く。

「はぁ~。退屈だけど、王宮から離れるとこんなに寛げるのねぇ~」

「王宮では足を引っ張ろうとする政敵が多いですからね」


 チャリーンと音がして入口の扉が開いた。

 20歳くらいの若い男が入ってくる。

「おぉ~! すっごい美少女の子猫ちゃんじゃないの~! 俺の好み~! 結婚してくれよ~!」

 茶髪でハンサムな男だが、言ってることはチャラかった。

 私は一瞬、女としての矜持を忘れて、ウーパールーパーみたいな顔をして見てしまった。

 

 すぐにハッと我に返り、営業スマイルを浮かべた。

「はい、こちらは美少女のポリ探偵事務所です。どんなご依頼でしょうか?」

「いえ~い! よく聞いてくれた子猫ちゃん! 悪い貴族に捕まっている本物の聖女を助け出してほしいのさ!」

 男はウィンクして指をパチンと鳴らした。

「俺の名前は、ケビン! クワトロ商会の次男だよ!」


 私はチャラい男、ケビンの話を聞くことにした。

 初めての依頼人である。

 チャラいことには目をつぶろうと思った。

 アリサが淹れてくれたダージリンティーを飲みながら話を聞いてみると。

 ロイド第一王子と婚約していた聖女のマリアが婚約破棄されて姿を消したというのである。

 婚約破棄の理由は、ロイド王子が真実の愛を見つけて、平民出身のマリアと別れて、侯爵令嬢のユリアナと婚約するためである。

 ユリアナにも光魔法の力があったために、新しい聖女として祭り上げたのだ。


 ところが、聖女としての力は前の聖女であるマリアのほうが遥かに強かったのである。

 ユリアナが新しい聖女になってからは、王国を護っている聖域魔法の力が弱くなって、魔物が頻繁に侵入してきているらしい。

 父王の命令でマリアを呼び戻すことになったのだが、行方がわからなかった。

 どうやら世間知らずのマリアは、悪い奴隷商人に捕まって、どこかに叩き売られたらしい。


「クワトロ商会が探索の得意なA級冒険者を雇って調べたら、ゴンザレス子爵の邸宅に囚われていることがわかったんだよ。マイハニー!」

 ケビンがテーブルを回り込んで抱きついてこようとしたので突き放しながら、情報を整理していた。

「ゴンザレスが貴族だから、クワトロ商会では手が出せないので、ポリ探偵事務所に依頼に来たのですね?」

「美少女探偵のポリちゃんなら、相手が貴族でもなんとかしてくれるって、噂を聞いたのさ~!」


話はわかった。

(私が国の諜報機関とつながっていることも薄々わかって依頼してきているのね)

 聖女の奪還作戦となれば、断るわけにはいかなかった。

「お引き受けします。すぐにゴンザレス子爵の邸宅に向かいます」

「ありがとう~! 結婚してくれ~!」

「困ります。私、婚約者がいますから!」

 抱きつこうとしてくるケビンを突き放しながら、ショルダーバッグを持って、事務所を出た。


 ゴンザレス子爵邸は王都の中心の貴族街の外れにあった。

 ショルダーバッグから鈎爪の付いたロープを取り出す。

 このバッグの中には探偵の7つ道具が入っているのだ。

 ロープを子爵邸の壁の上に向かって放り投げて、鉤爪を引っ掛ける。

 よじ登って子爵邸に侵入した。

 何故かケビンも後からついてくる。


「どうして貴方がついてくるのよ?」

「ポリちゃん一人だと心配なんだよ~」

「怪我しても知らないわよ」

 邸宅の裏に回り、裏口の扉の鍵を外すことにした。

 バッグから盗賊の針金を取り出す。

 鍵を開ける道具である。


 精巧な鍵だったが、一分ほど弄っているとすぐに鍵が開いた。

 邸宅の内部に侵入すると、気配察知の魔導巻物を使う。

 人体の放っている魔力や熱源を探知する魔導巻物である。

「地下にいるのかと思ったけど、最上階の四階にいるわね」

 聖女の光の魔力は特殊なのですぐに居所がわかった。


 階段を登って目的の部屋の近くに来る。

 部屋の前には傭兵風の男が一人、剣を持って見張りをしていた。

 私はバッグから吹き矢を取り出した。

 痺れ薬を塗った矢を吹き出して、男の首に命中させる。

 傭兵風の男は声を出すこともできずに昏倒した。


 部屋の中に入るとストロベリーピンクの髪の女が抱きついてきた。

「王子様~! 助けに来てくれたのね!」

 私の身体に豊満な胸を押し付けてくる。

「いや、ロイド王子じゃないから」

 私は聖女マリアを引き離した。

 マリアはタレ目で可愛らしい顔をしていて、庇護欲をそそる女の子だった。

「王子様じゃなければ、もしかして王女様?」

 マリアはコクリと首を傾げる。

 私は正体がバレたのかと思ってギクリとした。

「美少女探偵のポリよ! 早く逃げるわよ!」


 私達三人は入って来た一階の裏口から外に出た。

「まてぇ! 逃げられると思うなよ!」

 扉の外の裏庭には、30人ほどの男たちが武装して待ち構えていた。

 先頭に立っている高級な服を着た太った男がゴンザレス子爵のようだ。


「貴方がゴンザレス子爵ね! 聖女を監禁してどうするつもりだったの?」

「手籠にして子供を産ませるのさ。聖女からは光魔法の使い手が産まれるからな。ワシは子爵で収まる男ではない。伯爵や侯爵になってしかるべきだ」

 ゴンザレスは下卑た笑みを浮かべて、武装した男たちに命じた。

「聖女は殺すな! それ以外は好きにしろ! 女探偵は嬲りものにしても構わん!」


 武装した男たちは剣を抜いて襲いかかってきた。

 一様に私のことを侮って下卑た笑みを浮かべている。

 お楽しみのことを考えているのだろう。

 だが――!


 私は拳を固めて腰を落とした。

 右足を踏み出して地面にズンと着く。

 足から伝わる反動を螺旋状に気を練って右手から放出した。

 先頭に立って襲いかかってきた男の革鎧の鳩尾が凹んで後ろに吹っ飛んだ。

「メントス流暗殺拳! 震脚剛拳!」

 私は襲いかかってくる男たちを次々と暗殺拳の餌食にしていった。


「逆立ち旋風脚!」

 両手を地面について、体を捻って回転させる。

 両足を開いて回転蹴りを放った。

 10人くらいの男たちが吹っ飛んだ。


「この女、強いぞ!」

 残った男たちが怯んで遠巻きにするようになった。

「ええい! こうなったら切り札を出すぞ! 先生お願いします!」

ゴンザレスが叫ぶと、黒い影が一瞬で間合いを詰めてきて斬撃を放った。

私はシャツの前を切り裂かれていた。

スリップも切られて乳房が露出する。


そこに電撃が襲いかかってきた。

広範囲の電撃の網なので躱せない。

私は体をのけぞらせて悲鳴を上げた。

「俺の斬撃を受けて、まだ死んでないのか」

「私のライトニングウェッブに耐えるなんてね。驚いたわ」

 凄みのある剣士と妖艶な女魔術師が現れた。


「私たちはS級冒険者の、アーサーとミランダ。大金を積まれてゴンザレス殿に雇われたのよ。貴方達に恨みはないけど死んでもらうわね」

 妖艶な女が凄みのある笑みを浮かべた。

「抵抗しなければ、楽に殺してやるよ」

 アーサーは剣を肩に担ぎ上げた。


「S級冒険者は一騎当千、なるほど強敵ね。私も本気を出すわ!」

 私は抑えていた魔力を開放して、右手を頭上に突き上げた。

「神装戦姫ポリフェノール! 華麗に変身!」

 まばゆい光が溢れ出して、私の体が宙に浮かぶ。

 回転しながら服が分解されていき裸になる。

 光の粒子が集まってきて新しいコスチュームに合成される。

 私はセクシーなピンクのミニドレスの姿で地上に降り立った。


 ミランダが瞠目した。

「なんてすごい魔力……」

 私の身体からは目に見えるほど膨大な魔力の光が溢れ出していた。

「なるほど、これがお嬢ちゃんの本気か! 恐ろしいがやるしかねぇな!」

 アーサーが神速の斬撃を放ってきた。

「はやぶさ斬り! そして、魔神斬り!」


 私は彼の必殺技を魔力の盾で難なく弾いた。

「雷神ボルテージよ! 神雷をもって敵を滅ぼせ!」

 ミランダが雷系の最上位呪文を唱えた。

 空が暗雲で埋まり、直径10メートルはある稲妻が私の身体に直撃した。


「そ、そんな最上位呪文が効かないの?」

 ミランダが呆然とする。

 私は平然と立っていた。

「嘘だろ……」

 アーサーも剣を構えたまま固まっている。


「今度は私の番ね! ポリフェノール・エクスクラメーション!」

 私は両手を前に突き出して必殺の魔法を放った。

 巨大なハートマークの魔力の塊が無数に打ち出される。

 アーサーとミランダは抵抗も虚しく打ちのめされて吹き飛ばされた。

 そのまま身体が麻痺して起き上がってこない。


「まさか、S級冒険者がやられるなんて……。お前は一体何者なんだ?」

 ゴンザレスは私を見て歯噛みした。

 私は右足を持ち上げると、ミニドレスのスカートをたくし上げた。

「控えおろ~! この王家の聖印が目に入らぬか~!」

 私は太ももの内側に浮かんだ王家の聖印を見せつけた。


「そ、それはまさか、ロイエンタール王家の聖印?」

 ゴンザレスが驚愕した。

「ロイエンタール王家のポリフェノール姫と知っての狼藉か! ゴンザレス子爵、お前は王家に対する反逆罪で極刑に処す!」

 私が宣告すると、ゴンザレスはガックリと膝をついて項垂れた。


 その後は、諜報機関の人間が騎士団を呼んでくれて、ゴンザレスの一味は全員捕縛された。

 裁判を経て厳罰に処されるだろう。


 聖女マリアは何故か私のことが気に入っていて、ポリ探偵事務所の私の部屋に居付いていた。

「マリアは力の強い本物の聖女なんだから王宮に戻ったほうがいいわ」

「まぁ、嫌ですわ。せっかくロイド王子に嫌われるようにして、婚約破棄できましたのに」

 私は驚いた。

「わざと婚約破棄するように仕向けたの?」

「だって男と結婚するなんて嫌ですわ。私、レズビアンですもの……」

 マリアはそう言うと私をベッドの上に押し倒してきた。


「ポリさんのような美少女と一緒にいたいですわ」

 そう言って、私の口に唇を押し付けてくる。

「ちょ、ちょっと!?」

 私は抵抗しようとしたが、マリアは巧みに私の動きを封じ込めて愛撫してきた。

 抱き合って愛撫されているうちに私は頭がボーとしてきて、なんだかどうでも良くなってきた。

(ビアンカに拷問されるのに比べたら、これくらいどうでもいいか……)

 それから私とマリアは、身体を合わせてお互いに優しくし、すごく仲良くなった。


 私が潤んだ瞳でふらふらと事務所の応接室に出ると、ケビンが来ていた。

 私と目が合うとニコリと笑った。

 あ……、何か感づかれたかな?


「ポリには婚約者がいるんだよね」

「そうよ、会ったことはないけどね」

「それじゃぁ僕にもチャンスはあるよね」

「どうしてそうなるの?」

「会ったこともない婚約者よりも、目の前のイケメンがいいでしょ?」

「貴方の持ってきたこのモンブランよりも甘いわね。ケーキは美味しいけどね」


探偵事務所を出たケビンは凛々しい表情になって言った。

「餌付けは成功かな」

 側近が答えた。

「アイゼル様も人が悪いですね。素直に正体を明かせばいいのに」

「ポリが僕のことを好きになってくれたらね」

 ケビンに変装していたアイゼル公爵子息は楽しそうに笑った。

グレゴール公爵家が隠密で使う馬車に乗って立ち去るのだった。


 私はアリサに聞いてみた。

「私が同性愛者だと知られたら、婚約者のアイゼル公爵令息に嫌われるかなぁ」

「……貴族や王族は戦争に駆り出されてばかりで変な人が多いので、それほど違和感はないかと……」

「それならいいんだけどね」

 私は婚約者のことを考えて溜息を付いた。


<終わり>

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神装戦姫ポリフェノール~追放された聖女が本物だから悪い貴族から取り戻します作戦~ 華咲 美月 @tomomikahara24

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