6
目の前の巨体を眺める。眺めるというより、視界に入っているだけかもしれない。
白銀に輝く毛並みは、若干その艶を失ったように見えた。その体からは血が流れ続けているが、まだ浅く息をしている。当然だ。長く苦しむよう急所を外したのだから。
これで復讐は成し遂げた。
市長とマホメガ。グローリーシティを狂わせていった者を自らの手で殺した。達成感も喪失感も、胸の内にある。否、そのどちらも感じていないのかもしれない。わからなかった。ただ今はこうして、座り続けたいと思った。動きたくなかった。
「ごめんね、ソウ」
聞こえるはずないが、謝罪をしておく。あとから行くなんて言ったが、結局このままここにいそうだ。そもそも合わせる顔もない。ソウはリンヤを望んでくれているが、その純な思いに答えられるほど大人にはなれない。
(行かないのかい)
「うるさい、黙れ。耳障り」
(耳など使っていないだろうに)
特に笑い声は聞こえなかったが、ユニコーンの口元が弧を描いた気がした。脳で会話する者たちは死に際でもペラペラ喋れるのが厄介だ。
(このままだとお前のリーダーと、大事なソウとエリーが、衝突するのではないかな?)
リンヤの言葉など気にせず話し続けるマホメガ。頭を傾け、視界から排除する。
ユニコーンは転生前になるとお喋りになる特性でも持っているのだろうか。これでは落ち着いてなどいられやしない。
「お前がちゃんと死ぬか見張ってるんだよ」
マホメガを見ずに、言葉だけをぶつける。
(ほう……人間とは本当に面白い。そうやって本心と別の行動を繰り返す)
苛立ちが募り、思わずもう一回刺したくなる。無意識に噛んでいた唇から血がにじんだ。だが何も言い返さない。マホメガ相手に言い合いをしても無駄だ。
しばらくマホメガはリンヤを見つめていた。沈黙がその場に降りる。やっと静かになったと思えば、マホメガはまた脳を動かす。
(一ついいことを教えてあげよう。最後の余興だ)
〇 ● 〇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます