(君はどんな思いで死んだのだろうね)

 目の前の男に問いかける。男は無言のままだった。

 胸の上で指を絡め、まるで眠っているかのように目を閉じている。服には傷一つなく、穏やかにソファの上に横たわっている。だがその服の下の胸には、彼の残した傷跡がくっきりと残っている。

 やけに青白い顔をした男――元市長、アテンダ。

 絶命してからどれくらい経ったろう。人間の時の感覚は未だよくわからない。

(わたしが君の意志を継ぐから平気。そう思ったのかな。いや、安心したかい?)

 アテンダは緩く微笑んだまま、表情を崩さない。

 この男の微笑みなど、狂った瞬間くらいしか見たことがない。出会った頃からもうそうだった。そして共に過ごすうちに、どんどん悪化していった。

(君はおそらく……これくらいで終わるのが幸せだったよ)

 ソファの前にはわたの飛び出た人形が放置されている。アテンダが刺し続けたいくつもの人形が転がっている。軽く机を蹴ると、そのうちの一つがローテーブルから転げ落ちた。

 流れ者のアテンダを拾ってくれた前市長。ダストリーシティとの戦争で、死んだ。その人のために身を尽くし、狂っていったアテンダ。先の騒動で、死んだ。

 人間の命は、本当に脆く、儚い。

(そうだね……そのほかのことももうすぐ、終わるよ。もうすぐ、全て……)

 アテンダに背を向け、部屋の外へ向かって歩き出した。


               〇 ● 〇

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