第56話 家を購入した

妹デーに比べて明らかに差があるので、僕は同じような告白を 歩美ちゃん、美優ちゃん、奈々子ちゃんにする事にした。


歩美ちゃんには申し訳ないが北條邸にまで来てもらった。


告白は勿論、


「妹みたいな君を一生愛する事を誓います」だ。


そして同じ様にネックレスを掛けてあげた。


歩美ちゃんと美優ちゃんは正直言って性格が良く似ている。


だから、感謝の気持ちも似ている、2人はまとめてなのに奈々子ちゃんだけ別だと又問題が起きるかもしれない。


だから、三人纏めさせて貰った。


「これって歩美へのプロポーズだよね?」


「美優は勿論受けるよ」


「結婚って事で良いんですよね」


「そうとも言えるけど...ちょっと違うよ、勿論、将来的にはそうするつもりだけど、今は兄妹や恋人の時間を楽しみたいんだ...だから...暫く待って...ただ、もう僕は皆んなとずっと一緒のつもりだから...皆んなが僕を嫌いにならない限り...そうなると思う」


「だったら、もう決まりだね、だって歩美はお兄ちゃんを嫌いにならないもの」


「それは美優も一緒だよ、これは...婚約になるのかな?」


「奈々子も同じだよ、だけど、三人一緒より1人に言って欲しかったけど」


「ははは、そうだねゴメン」


僕は笑って誤魔化すしか無かった。


この世界ではプロポーズ等する男はいない。


そんな世界でこんな事をしたらどうなるだろうか?


常に男性不足のこの世界で、もしそんな事をしたら受けない筈がない。


もう、彼女達の中では黒木との結婚は確定した物と考えている。


だって自分たちは何があろうと黒木を愛する事を辞める訳がないのだから。





ライトノベルの主人公は凄いと思う。


何もしないで沢山の女性と楽しく過ごしている。


僕はと言うと何かする度に調整するのが大変だ。


そろそろ人生について考えても良い頃だと思う。


姿は別にして僕の本当の年齢は24歳だ。


そろそろ真剣に考えるのも良いだろう。


僕は次の日に家を出て不動産屋へと向かった。


今、現在彼女達とデートするなら、北條邸か学校、貸し切った施設だ。


だけど、僕が家を持てば気軽に呼ぶことが出来る。


人生を真剣に考える第一歩は家を購入する事からスタートしようと思う。


とりあえず、どんな物件があるか見ようと一番近くの不動産屋に行ってみた。


「家をお探しですか?」


眼鏡を掛けたお姉さんが対応してくれた。


「あの、失礼ですが...男性ですよね...何故...家を」


この世界の男性は家族がいる場合は家族が保護している。


不幸な事で一人になったら、保護施設が保護してくれる。


結婚したら女性が養う。


そう、住む所は全部女性が用意するから、家について一切考える必要がないのだ。


「いえ、そろそろ自立をしようと思いまして」


「そうですか、それでしたらこちらのアンケートカードにご記入下さい」


「はい、これで良いですか」


「黒木 翔様...凄くお勧めの物件があります...少しお待ちください」


「はい」


「こちらでございます」


新築物件、18LDK 北條邸横。

家具、家電付(購入後、最新家電を無料でお取り付けします)

お風呂は温泉(地下1200メートルからくみ上げ)

太陽光発電つき

掃除や困りごとは優秀なメイド3人が訪問して解決します。


価格は3万円

(応談可能、無料でもOK)


但し 黒木翔様に限ります。


うん、こんな事をするのは貴子さんだ。



貴子は黒木に女神と呼ばれた時から2人の娘と共に様々な加護を与えていた。


例えば、ハンバーガーショップで黒木がハンバーガーを頼むとしよう。


通常とは違い、黒木のハンバーガーだけがA5ランクの牛肉を使った物で出される。


これは黒木に天使と呼ばれた美優が気を良くして、「天使なら加護を与えないと」言い出して、幾つものハンバーガーショップを買い占めて全てのお店に黒木専門のパテを置いているからだ。


それを聞いた貴子が同じ様に北條の力を使ってあちこちに手を回した。


この家もその一つだ。 つまり黒木には、北條と言う名の権力とお金の加護が宿っている、そう言っても良いのかも知れない。


これを断る訳にはいかないよな。


「これでお願いします」


店員は凄い笑顔になった。


実は、黒木と契約を取り付けた会社には謝礼として1億、その担当には2千万のボーナスが北條から支払われる。そういう話をとりつけてある。だからこそ、何処の不動産屋も、常に黒木翔という名前を気にしながら営業している。


「直ぐに、契約書を用意しますから暫くお待ちください」


更に言うと、24時間最優先で登記も受け付けるように圧力が掛かっている。


結局、黒木は1時間もしないで登記簿謄本を受け取った。


今日はもう遅い、明日になったら家を見に行こう。


翌日、僕は購入した家を見に来た。


この家は、今までに何回も前を通った事があった。


家の門にカードキーを刺すと門が自動的開いた。


庭も結構大きい。


そして、大きなドアの横にカードキーを刺すと自動で扉が開いた。


なかは凄い事になっていた。


これは家と言うより屋敷だ...しかも家具は全部据え付けてあり、どう見ても高級品にしか見えない。


家電も最新家電が入っていた。


そして、テレビにメモが書いてあった。


【家電と言えば金剛、、金剛の家電は世界一ですわ】


そう書いてある。


そうだった、金剛家は国内有数の家電会社だった。


部屋はどの部屋も物凄く大きかった。


トイレの大きさまでもが6畳以上あるし、お風呂なんて湯船だけでも普通の家のリビングよりも大きい。


凄いとしか言えない。


そして、謎のボタンがある。


ボタンの名前を見ると、メイドボタンと書いてある。


このボタンを押すとメイドさんが来てくれるんだな、押さないけど。


せっかくだから、もうここに引っ越してこようかな。


僕は男性保護施設に戻ると退所手続きをした。


驚く事に


一日2万円のお金の支給。


女性とデートする時に5万円支給。


女性と結婚した場合は祝い金として500万支給。


は出所後も有効だった。


一日2万円の支給は纏めて月単位で60万支給される。


デートの支給金は此処にきて申告すれば貰える。


結婚した時のお金は自動的に戸籍に入れば支給されるらしい。


荷物は殆ど無い。


ゼロと日常品だけ、正直いってタクシーで事足りる。


僕は管理人さんにお礼をいって施設を後にした。


新しい家に着くとベットの近くにゼロを飾って衣類を整理すると手持ちぶささになった。


正直落ち着かない。


凄く大きな家に1人、うん本当に落ち着かない。


僕って貧乏性だから。


さてどうしようか?

「一緒に暮らして下さい」


そう言えば皆んなは一緒に暮らしてくれると思う。


だけど、家族と一緒に暮らしている人も居る。


多分、この世界は家族より男だからこっちに来ると思う。


だけど、奈々子ちゃんのように破たんしているのならともかく、幸せな親子の状態を壊したくはない。


どうしようかな?


何かルールを決めて来てもらう方法を考える...そんなとこかな。


とりあえず、今日はメイドさんと食事でもしよう。


僕は、三人が全員来ても良い様に食事を作った。


よし、ボタンを押すぞ。


ボタンを押すと凄い事に3分もしないで三人が現れた。


「「「お呼びでしょうか、、そのご主人様」」」


やっぱり、このボタンはそういうボタンだった。


そして今日は、白金さん、園崎さん、古木さんと食事をした。


僕の作った食事楽しそうに食べてくれるから良いか。


そうだ、この人たちにも何か贈り物しなくちゃな。


この世界に来て僕は寂しがりやになったのかも知れない。


前の世界では1人が当たり前だったのに...


今では1人が寂しい。


楽しい食事が終わり、三人には帰って貰った。


余り永く居て貰ったら、泊っていってと言い出しかねない。


そして、そう願えば確実に泊っていってくれる。


だけど、それは彼女達の仕事の邪魔になる。


僕はこの世界に来て久々の寂しさを感じた。





僕は今日学校に行く前に北條邸に顔を出した。


そして、貴子さんに会いお礼を伝えた。


「家の件、どうも有難うございました」


「遅いわよ黒木君、なかなか買わないからてっきり、そのまま保護施設で過ごすのかと思っていたわ」


「本当は、もう暫くは、そうするつもりでした」


「だけど、1人1人と向き合ったら考えが早まった、そんな所かしら?」


「そうです、正直、貴子さんにはお世話になりっぱなしで、到底1人前の男とは言えません」


「1人前の男?」


黒木君は何を言っているのかな。


黒木君が1人前で無いなら誰が1前の男なのだろうか?


女に頼り、全てを貰いながら何もくれない...それが男だ。


100尽くしてようやく1返してくれる...それが男だ。


黒木君のように1あげたら2や3返してくれる...そんな男は他にはいない。


今回のようにもし、家をあげたって...多分、お礼の一言で終わらせるだろう。


正直言って、黒木君がくれた宝石、あれのお返しにすらなっていない。


男が貴金属店でプレゼントを選んでくれる。


お礼をして貰える。


感謝の言葉を言ってくれる。


そんな日常は...どうやっても手に入らない。


令和の妖怪、、化け物と言われている私には絶対に手に入らない物だ。


「黒木君が1人前で無いなら...この世界に1人前の男なんて居ないと思いますよ」


「貴子さんにそう言って貰えると嬉しいな...そうだ、これ...受け取って下さい」


「これは...鍵ですか...まさか合鍵?」


「はい、大きな家に1人だと寂しいので、何時でも遊びに来て下さい」


「何時行っても良いの?」


「勿論、あと何処か一部屋選んで頂いてその部屋を自由にして貰って大丈夫ですよ」


「嘘...黒木君の家に自分の部屋を持てるの?」


「そう、ありがとう...そうだ、どうせ私だけでなく皆んなもなんでしょう?」


「はい」


「そう呼んでくるわ」


貴子は急に廊下へ出て走っていった。


あれっどうしてメイドの誰かを呼ばなかったんだろう。


はぁはぁはぁ...息が苦しい。


あれは、流石に不味い。


この間の親孝行もそうだけど、、今日のはそれ以上だ。


あの宝石をくれた時も...体が震えていたけど。


今日はあと少しで倒れそうになった。


普通に...男が合鍵なんて渡すかな?


おかしい、おかしすぎる。


黒木君は簡単に私に渡してきたけど...正直言ってこれには価値が付けられない。


北條家の総帥の地位と財産、黒木君から合鍵を貰って一緒に過ごせる人生。


恐らくどちらか一つ手に入るなら...多くの女は合鍵を選ぶだろう。


感謝の言葉も貰った。


一緒に暮らせる場所の合鍵も貰った。


そして彼の人生の中で母親という家族としての居場所も貰った。


彼の事だ、私と小百合を同等に扱うから、私の籍に入る事はないだろう。


なら、きっと結婚になるはずだ...


そう、私はあれ程の美少年から全てを貰ってしまったのだ。


そう考えたら、泣きそうになった、手が足が震えだした。


正直、国と国との仲裁に入った時なんか比べ物にならない位緊張した。


だから、私はそれが悟られないように部屋を飛び出した。


彼の前では女神のような私でいたいから。


「あれっお母さんいきなりどうしたの?直接呼びに来るなんて珍しいね」


「黒木君がきていますよ、私の部屋に」


結局、貴子は北條邸にいる関係者全員を呼びにいった。



「あれっお兄ちゃん 急にどうしたの?お母さんが面白い顔しながら呼びに来たけど」


「うん、隣に越してきたんで、そのご挨拶と、皆んなにこれを渡しにね」


「これ...もしかして合鍵...ですか...嘘、これは夢?」


「夢じゃないよ、美優ちゃん、君は僕の妹も兼ねる、彼女なんでしょう? だったら合鍵位持っていてもおかしくないでしょう? 部屋も一室あげるから自分の物にして良いよ」


「部屋もくれるの?それって通い妻?もしくは同棲ですよね」


「そう...だね」


「はい、はい もう美優は充分話しただろう? 次は私の番だよ」


「玲奈さんにも、はいこれ」


「うん、ありがとう」


やばいぞ、これ、、にやけが止まらない。


「あの、玲奈さんにもちゃんと一部屋ありますから自由に使って下さないね」


「本当...だったら引っ越そうかな?」


「本気ですか? 」


「まぁ、私は基本引き籠りだから、何処の部屋でも同じだよ、、黒木君が傍にいる分、そこの方が良いかも知れない」


「そうですか」


「はい、玲奈さん、次が控えているから終わりです、 お兄ちゃん勿論、奈々子にもあるよね」


「勿論あるよ...はい」


「ありがとうお兄ちゃん」


「ごめんね、奈々子ちゃん」


「うん、何でお兄ちゃんが謝るの?」


「よく考えたら、奈々子ちゃんが困っているタイミングで家を買えば良かったと思って」


「そんな事無いよ...ちゃんと住む所も仕事も探してくれたし...そう言えばお部屋もくれるんだよね」


「勿論」


「だったら、すぐ隣だから奈々子は引っ越して通いにしようかな?」


「本当?」


「お兄ちゃんが良いならそうするよ」




「あの...奈々子様...すいません代わって下さい」


「どうしたの...白金...」


「あの...黒木様...私達には流石に無いですよね?」


「勿論、あるよ三人分...」


「それは私の分もあるという事ですか?」


「えっえ、ちゃんと園崎さんの分も古木さんの分もあるよ...部屋もね」


「それは、ちゃんとメイドとして雇ってくれるという事で良いんですよね」


「勿論、そうだよ...というかこの家メイドつきって書いてあるし」


「元からそのつもりでしょう?」


「そうですね、ですが住み込みってつもりでは無かったんですが...有難うございます」


「そうだったの?」


「はい、だけど取り消しは利きませんよ?」


「勿論、取り消す気は無いから安心して」


「「「はい、宜しくお願い致しますね、ご主人様」」」



「東吾くん、何で隠れているのかな?」


「翔くん、いやちょっとね」


「勿論、東吾くんにもあるよ、ハイこれ、あと東吾くんの部屋は僕の隣が良いかな?」


不味い、正直、翔くんの家に部屋が貰えて合鍵まで貰えるのは嬉しい。


だけどあのメンバーに白百合達が加わるなら...百鬼夜行...妖怪大行進じゃないか?


幾ら翔くんがいても...嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ...怖くて行けない。


「翔くん、俺はいいよ...そこにいるのは、翔くんの未来の家族...幾ら俺が親友でもそこまで邪魔はできない」


「そう、あっ、だけどこれからは隣だからちょくちょく遊べるね」


「そうだね」


うん、待てよ?彼奴らが翔くんの家に行けば、うちから居なくなる。


もう怖がらないで済むかもしれない。


場合によってはメイドを雇う事が出来るかもしれない。


化け物じゃない、普通のメイドを、うん良かった。


「じゃぁ僕はこれから学校に行くね」


「あっ奈々子も行かなきゃ」


「あっ翔くん、俺も行くよ」



昼休み、いつもの食事の前に僕は話を切り出した。


「あの、ちょっと話をして良いかな?」


「どうしたの黒木くん、あらたまって」


「黒木様、どうかされたのですか?」


「何か相談?」


「お兄ちゃんどうかした?」


「実は、最近家を買ってさ」


「家を買われたのですか? という事は保護施設を出られたという事ですわね?」


「うん」


「じゃぁ黒木くん、もしかして独り暮らしなの」


「黒木君...1人暮らしなのか、大変でも無いか」


「お兄ちゃん、今度歩美、遊びに行っていい?」


「うん、というか、皆んな目を瞑って手を出してくれる?」


「はい、目を開けてい良いよ」


「黒木くん、この鍵ってまさか」


「そうだよ、白百合さん合鍵...ついでに一部屋ちゃんとあげるから何時でも遊びにきて良いよ」


「本当? だったら奈々子が居なくなってから家に居づらいから引っ越そうかな?」


「えっ居づらかったの?」


「うん、だけど黒木くん保護施設だから相談しにくくて」


「だったら何時からでも住んで良いよ」


「流石第一彼女待遇が違いますわね...部屋なんて羨ましいですわ」


「歩美には...無いよね」


「皆んなの部屋もあるよ?」


「黒木君、私のもあるのか?」


「勿論、あるよ...あっこれ小百合さんの分の鍵...勿論部屋もあるから伝えておいて」


「母の分まであるんですの! あれっという事は5部屋+黒木君の部屋と考えたら、最低6部屋ありますわね、、結構大きい家ですわね」


「うん一応、18LDKだから、、」


「それって豪邸だよ黒木くん」


「お兄ちゃん、お金持ちだったんだ」


「おかしいですわね、、黒木様は保護施設に居たのに...」


3万円で買ったとは言いにくいな。


「うん、声優の仕事でお金が入ったから」


「もしかしてゲームのか」


「そうだよ東条さん」


「確かに、あのゲーム売れたらしいから...うん納得」


「あれは儲かりましたわ...母が凄く機嫌がよかったですわね」


「じゃあ、今日は放課後、早速遊びにきてくれる?」


「「「「行く」」」」




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