第55話 恋人の日

「黒木くん、奈々子や歩美ちゃん達とデートしたらしいですね、更にチョコレートを母に贈りましたよね」


「黒木様、お母さまにネックレスをプレゼントしましたわね」


「黒木君、母がチョコレートのお礼を言っておいてくれってさぁ」


「あっ歩美のお母さんもありがとうって」


「「「「所で私達には何もないんですか」」」


僕は正直困ってしまった。


何故なら、妹デーは誘われたから乗っただけだし、母の日は前の世界にある行事だ。


そう考えると同じ歳の者で行う行事って何だろう?


本当に困った。


今現在、デートやプレゼントをしていないのは


メイドさん達は別にして白百合さん、金剛さん、東条さん、玲奈さんの4人だ。


特に、この中で白百合さんと金剛さんは最初に僕を絶望から救ってくれた人だ。


どうしようかな?


幾ら考えても名案の浮かばない僕は、課題を先延ばしにする事にした。


「そうだね、本当なら一番最初にお礼をしなくちゃいけなかったのに...とりあえず、白百合さんと金剛さん、東条さんは次の日曜日、空けておいてくれる?」


「何かしてくれますの?」


「デートだよね、うん空けておくけど、どこ行くの?」


「そうだな、何してくれるのかな?」


「サプライズだから内緒です」


「あの、歩美はー」


「歩美ちゃんはもう妹デーとか言って楽しんだぱすですわ」


「そうだね、流石に今回は遠慮して欲しいな」


「二回連続は不公平だ」


「黒木君は、、そんな意地悪は言わないよね?」


「うーん、流石にずるいと思うから、今回は駄目だよ、その代わりお土産を買ってくるから」


「そんなー」


「仕方ないよ、、うん」


「今回は諦めるんですわ」


「仕方ないかな、、悲しいけどお土産を楽しみにしているよ」



さて、これで次の日曜日まで時間は稼げた。


どうしょうか?


とりあえず、玲奈さんには連絡をして同じく日曜日を空けておいて貰おう。


幾ら考えても良い記念日は考えつかなかった。


そのうち誕生日は個々に祝っていくとして、本当にどうしようか?


考えても仕方ない。


だから、僕は恋人の日を作る事にした。


まずは貸し切りに出来そうな施設を考えないといけない。


今回の対象の中に玲奈さんがいる。


彼女は基本引き籠りだからそうした方が親切だろう。


ネットで調べたら、北條タワーと言う物があった。


うん、名前から言ってだれの持ち物か解る。


貴子さんのだ、しかも此処はゲームセンターやレストランも入っている。


しかも、貸し切り料金も意外と安く1日50万円で貸し切れる。


早速、電話をした。


「黒木君、この間は本当にありがとう! お願いがあるんでしょう?何でも言って」


「実は、北條タワーを借りたいんですが、お金はしっかり払いますんで貸して貰えませんか?」


「あぁ、あそこか、貸すのは良いけど何に使うのかしら?」


僕は自分のプランを話した。


「そういえば玲奈に今度埋め合わせするって言っていたわね...だけど、あそこは結構古いし、ネズミ-ランドに比べると差があるから...良かったら北條水族館にした方が良いんじゃない? 勿論、無料で良いわよ」


「良いんですか?」


「黒木君なら特別ね? 横で玲奈が睨んでいるから代わるわね」


「黒木君、待っていたよ、約束していた事だよね?」


「はい、今週の日曜日にしようと思うんですが玲奈さんの予定はどうですか?」


「勿論、空いているから安心して」


「それじゃ、北條水族館に朝10時集合で宜しくお願い致します」


「うん、解った、うちからは私だけで良いんだよな」


「美優ちゃんは妹デーをしたし、貴子さんは前回お祝いしたから今回は玲奈さんだけで大丈夫です、他には白百合さん、金剛さん、東条さんも招待しています」


「そうだよな、うん仕方ない、、美優も歩美ちゃんや奈々子が一緒だったんだから」


「ははははは、そうですね」



これで、下準備は整った...後はプレゼントかな。


困ったな...どうしようか?


この際だから...指輪、、あれっサイズが解らない。


仕方ない...同じ様にネックレスにしよう。


そしてまた僕は宝石商にいる。


周りの目が少し怖い。


「あの人...また宝石を買いに来ているわ...いいなぁあんな人からプレゼント貰えるなんて」


お姉さん、店員だよね?


お客に聞こえるようにそんな事言うのはおかしいんじゃないかな。


結局僕は、悩んだ末、7個の同じデザインのネックレスを注文した。


小さいけど良質のダイヤを使った物。


一つ辺り120万円...まだ学生だからあまり目立たない物が良いだろう。


今回は外のデートだからお花は用意していない。


これでどうにか準備は整った。


後はせっかくなのでサプライズを用意すれば完了だ。


日にちはまだある、うんゆっくり考えよう



僕はサプライズで悩んでいる。


自分で、ハードルを高くしてしまった。


なかなか良い事が思いつかない。


北條水族館の売りはイルカショーとアシカショーだ。


その他の設備はレストランと売店がある位。


どうしようか?


何か良いイベントは無いだろうか?


結局良い案が浮かばなかった僕は、自分が思いついた案をそのまま使う事にした。


僕は日曜日6時に到着してサプライズの用意をした。


この水族館の売りのパノラマ水槽の前にご馳走を用意した。


その中央には大きなケーキを用意した。


これで準備OK。


あとは彼女達を待つばかりだ。


約束の時間の10分前に彼女達はきた。


時間の10分前は実は僕からお願いした。


そうしないと平気で2時間前から来たりしそうだから。


だから、時間ぎりぎりに来て、もしどんなに早く来ても10分前にしてとお願いした。


「黒木くん、お招きありがとう」


「黒木様、お招き頂きありがとうですわ」


「黒木君、ありがとう」


「黒木君 どうも」


「こちらこそ、来てくれてありがとう、今日は思いっきり楽しもう」


「「「「うん」」」」


「だけど、凄いですわね、水族館の貸し切りなんて」


「確かに凄いと思うが金剛でもできるだろう?」


「出来る出来ないという事なら出来ますわね、ただ、他の施設とは違い貸切る金額が物凄く高いのですわ」


「そうなんだ、私は庶民だから解らないけど、そんなに違う物なの?」


「そうですわね、普通の水族館なら夜間3時間位で180万でしたわ...ですが今日は日曜日そして一日貸し切りと考えたら...この計算は合わないですわ、ましてここは北條水族館、大体2000万は越える金額になると思いますわ」


「凄いな、その金額」


「だけど、これもうちの母さんの物だから無料だけど」


「ですが、日曜日に貸し切りという事はその分の売り上げが確実になくなってますわよ」


「だけど、お金と黒木君への愛情なら、だれでも黒木君の愛情を取るだろう?」


「そうですわね」


僕たちは水族館を見て回った。


意外な事に皆んなは水族館に来たことは無いようだった。


よくよく考えたら、僕は皆んなの日常をよく知らない。


これから知って行けば良いか。


そして時間が来たのでアシカショーを見た。


それから、お昼になって一緒に食事をした。


お弁当は作ってきてないけど、いつものようにあーんして食べた。


ジュースの件はもう知られていたようで、同じくストローを人数分刺されていた。


色々な魚をみて15時になった。


それから、イルカショーを皆んなで見た。


皆んなで一番前で見たからイルカがジャンプするたびに水に濡れたけどビニールでガードしたから問題が無い。


そして17時...ここからが僕のサプライズだ。


パノラマ水槽の前にはケーキやご馳走が置いてある。


何をイメージしたかと言えば結婚式だ。


この世界には驚いた事に結婚式という概念はない。


そういう物自体が存在してなかった。


まぁ、この世界の横柄な男じゃこういった事は嫌うだろうから無いんだろうな。


「凄いごちそうだね、黒木くんありがとう」


「白百合さん、これはまだサプライズじゃないよ?」


「黒木様、そうなのですか? この料理がサプライズでは無いのですか?」


「うん、とりあえず皆んな並んでくれるかな」


うん、並んだね。


「白百合さん」


「なっなにかな」


黒木くんが真剣な表情になった。


凄くかっこいい。


「僕は白百合さんに会えて凄く幸せだよ、生涯、白百合さんを愛し続ける事を誓います」


「えっえっえっ...嘘、、今なんて言ったの?」


「愛し続けるって言ったんだけど、恥ずかしいからもう一回は無理」


白百合さんの首にネックレスを掛けてあげた。


正直いって恥ずかしい。


だから、勢いで金剛さんにむかった。


「金剛さん」


「ふぁい」


赤い顔して噛んだ。凄く可愛いい。


「僕は、頑張る金剛さんが大好きです、生涯愛し続ける事を誓います」


「黒木様...そんな、本当に生涯...その、有難うございます」


同じ様にネックレスを掛けてあげた。



「東条さん」


「くくく黒木君...何だ」


この人でも、どもるんだな。


「東条さん、僕はリリしい東条さんが大好きです...生涯愛し続ける事を誓います」


「黒木君...なら私は、自分の剣に誓って、君を永遠に愛するって誓おう」


これは、返り討ちにあったようだ。


同じく、ネックレスを掛けてあげた。


「玲奈さん」


「私も貰えるのかな、私はその皆んな程付き合いがないんだけど...いいのか」


「勿論です...玲奈さん、戦乙女のような貴方が大好きです...生涯愛し続けます」


「戦乙女、、何それ?」


「僕から見た玲奈さんのイメージです」


「そんな風に見てくれたのか? 母が女神、妹が天使、私は戦乙女か...だったら私は北條の苗字に君への愛を誓おう」


ネックレスを掛けてあげた。


この世界には結婚式という概念はない。


ただ、書類をだして終わりだそうだ。


まだ、僕は学生だし結婚は流石に早いだろう。


だけど、僕にとって大事な人だから...


絶対に嫌いになんかならない人達だから...


気持ちを形にしたかった。


「わっわ私、、凄く幸せだよ...こんな事言って貰えるなんて...思った事なかったから」


僕なんかの為に泣きながら笑顔の白百合さんが可愛い。


「私くし、今日と言う日は絶対に忘れません...ありがとうございますわ...黒木様」


金剛さん程の美女が泣いて喜んでくれる。


「私は剣道以外取り得は無いが...今は剣以上に黒木君が好きだ...ありがとう」


普段凛々しい東条さんが照れたような顔をした。


「君は不思議だな...何故か黒木君と話していると自分が絶世の美女になった気がするよ、ありがとう」

あまり感情を現わさない玲奈さんが笑ってくれた。


ただ、気持ちを伝えただけのサプライズ。



だけど、本当に嬉しいのは、一番幸せなのは、僕だよ。

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