第54話 母に感謝する日
もう私は駄目かも知れない。
気が付くと、凄い事になっていた。
沢山のカツラに洋服、、そして家具まである。
もっと小さい人形ならともかく、私の大きさは1メートル位はある。
その人形に家具は流石に無いと思う。
うん、こんなに大切にされている人形は、絶対に他にはないよ。
感謝の気持ちが伝えられないのが辛い。
だから、私は今日も翔の幸せを精一杯祈る。
それだけしか出来る事はないから。
僕は気になった事があったので、朝からインターネットをしていた。
何を調べているのかと言うとイベントについてだ。
この世界に来てから結構経つのに個人的なイベントが少なすぎる。
誕生日、バレンタイン、クリスマス、何も聞いた事が無い。
だから、この世界にそういったイベントがあるのか、無いのか調べてみた。
本当ですか?......殆どのイベントが無かった
誕生日は、男の場合は祝うが女の場合は祝わない。
嫌な言い方だが、貴重な男が生れれば祝う、女はハズレだから祝わない。
一番酷い場合だとお腹の子が女だったら中絶までしてしまう女がいるらしい。
うん、祝わないよね。
バレンタインは、、男女比がこれじゃ実現しないか。
クリスマスは一応あるけど、家族で豪華な食事をするだけ。
正月は...うん、普通にあった。
つまり、男女のイベントはほぼ無かった。
勿論、妹デーも無かった。
だけど、これはこれからも行っていこうと思う。
だって楽しいから...
結局、僕はこの日学校を休んでしまった。
まずは、母の日から考えようと思う。
姉の日や恋人の日を考えるより、実際に前の世界にはあったものだから簡単だ。
それに、僕は小さい頃に両親を失ったから、親と過ごした記憶が僅かしかない。
だけど、貧乏ながら僕を大切にしてくれた記憶はある。
本当の両親は死んでしまった。
だから、その分の親孝行をしたいのだ。
勿論、相手は貴子さんと小百合さん。
他の親にはしないのか、そう言うかもしれないけど...化け物にしか見えないから無理だ。
だけど、贈り物位はした方が良いのかな?...うん、逢わないで良いんだから贈り物位はしよう。
色々考えて
白百合さんのお母さん、東条さんのお母さん、歩美ちゃんのお母さんには高級チョコを送っておいた。
簡単に、いつも娘さんにはお世話になっています。 そんなメッセージを添えて。
白百合さんのお母さんには送りたくなかったが...白百合さんの立場を考えて送っておいた。
さて、これからが本命だ。
この世界に来てから出会った、本当のお母さんの様な人へのプレゼントだ。
まず僕は、宝石商に来ている。
正直、お金で買えるものなら彼女達は何でも買えるだろう。
だから、一点もので彼女達に似合う物を選ぼうと思う。
貴子さんは赤い宝石が似合いそうだ、ゴージャスだから...ルビーの手作りの物を選んだ。
小百合さんは青い宝石が似合いそうだ、うん、あの貴族っぽい雰囲気だからサファイアにした。
両方共、300万円したが、うん大したことない。
お金に麻痺していると思うけど、あれ程の収入を弾んでくれた人にケチりたくは無かった。
「あの、その宝石...もしかして女性へのプレゼントですか? 」
「はい、だからラッピングして下さい」
普通に会話しただけなのに、店じゅうの注目を集めてしまう。
この世界では男は滅多にプレゼントなんかしない。
だから羨ましそうな目で僕を見ていた。
その後に花屋さんに行って、カーネーションに似た花束を買った。
これで準備はOK。
食事は、食材を用意してむこうで手作りの方が良いだろう。
さぁ後は約束するだけだ。
「もしもし、貴子さん、今日お時間とれますか?」
「黒木君...何かお話があるのかしら前にも言った通り、例え総理大臣との会合もキャンセルするから大丈夫よ」
「それなら、これからお伺いさせて頂きます。あとすいません、小百合さんも呼んで貰えますか?」
「なんだ、私1人じゃないのね、呼んでおくわよ」
「有難うございます」
僕はそのまま北條邸に向かった。
メイドさん達に厨房を借りて料理を作る。
チキンにケーキ、僕にしては高級な食事だ、北條家の食事には及ばないけど...
まぁそこは愛情という事で勘弁して貰おう。
園崎さん達も羨ましそうに見ている。
うん、主役は2人だけど、食事は皆んなの分もあるよ。
今日は白金さんは休みらしい、だから古木さんと園崎さんに配膳は手伝って貰った。
先に、玲奈さんと美優ちゃんを呼んできてもらう。
「黒木くん、これはもしかして黒木君の手作りなの」
「お兄ちゃんの手作り...久しぶりだぁ...」
「だけど、まだ食べないでね、今日の主役は貴子さんと小百合さんだから」
「えーそれじゃぁこれ、お母さんの為の料理なの...美優の為じゃないんだ」
「それでも手作りには違いないよ...うん」
「ごめんね、だけど、貴子さんにも小百合さんにもお世話になりっぱなしだから恩返ししたくてね」
「「そ、そうなの」」
暫くして、園崎さんと古木さんが二人を連れてきてくれた。
「これは、何、黒木君の手作りですよね、どうかしたの? ん、何か、頼み事?」
「そんな事しなくても、私達に出来る事なら何でもしますのに...」
この世界で男の手助けをするのは女の甲斐性だ。
ましてそれが美少年のお願いなら、大概の女なら喜んできくだろう。
「今日は違います、いつも二人にお世話になっているので...」
あれ、どうしよう?
勢いで行動しちゃったけど、この世界に母の日は無いんだった。
どう、説明しようか。
「あの、僕は...両親が居ません...だから親孝行をしたくても相手が居ません」
「そうでしたね、確か、黒木君は、その保護施設にいるのでしたね」
「そうでした、里香が言ってましたね」
「はい、だから、その親孝行の真似事をさせて頂きたいんです」
「「.....」」
2人は頭が固まってしまった。
父親に感謝する子供がいても、母親に感謝する子供はいない。
私の所も小百合の所も子供とは仲良い方だけど、こんな事をされた記憶はない。
「「あの私達は一体何をすれば良いのでしょうか?」」
「これは僕の親孝行です、ただ楽しんでくれれば良いだけです」
「「そ、そうですのね」」
まずは、これを受け取って下さい。
「この花束は私に?」
「綺麗な花束...ありがとう黒木君」
男から花束を貰える女性はどの位この世界にいるのか?
恐らく、50人に1人位しかいない、人によっては死ぬまで一度も貰わない女性もいる。
「あっ、花束、お母さんだけずるい、美優にはないの」
「私も...貰えたらうれしいんだが」
「今日は黒木君の親孝行の催しだから仕方ないでしょう? 私たちが主役なんだから、大体、実の娘の貴方達は、私を労わってくれた事があったかしらね」
「そうですわよ、今日の主人公は私と貴子なのだから仕方ないわね...大体、美優ちゃんは妹デーとか言ってこの間、遊んだんじゃなくて?」
「うぐっ」
「その話も聞いてなんいんだが...」
「玲奈さんには今度何か埋め合わせしますから...すいません」
「わかった、期待して待っている」
次に僕は宝石を取り出した。
ただ、そのまま渡すのよりつけてあげた方が喜ぶだろう。
僕は用意した宝石を二人につけてあげた。
「黒木君...このこのこのネックレス...まさか」
「これ、これ...プレゼントなの...なの」
「はい、いつも二人にはお世話になっているから、プレゼントです。いつも沢山良くしてくれるから、せめてものお返しです」
「お兄ちゃん幾らなんでもおかしすぎるよ、何でお母さんにそんな物プレゼントするの」
「どうして、そんなプレゼントをするの、実の息子や娘でもしないのに」
自分の意見をはっきり言った方が良さそうだ。
「逆に2人はなんで、してあげないの?」
「お兄ちゃん、普通は母親にプレゼントなんてしないよ」
「そうだよ」
「多分2人は当たり前すぎて解らないんだよ、母親の大切さが...」
「だけど、この子たちの言う通り、母親にそんなに感謝している子はいないわよ」
「貴子さん、僕の母親はもうこの世に居ません、小さい頃の事だから記憶も薄っすらですが、だけど凄く優しかった記憶はあります」
そりゃ男の子なんだから、どんな母親でも優しいと思うわ。
「優しいお母さんだったのね」
「はい、正直言って、父親と違って母親って凄く大変だと思うんですよ、 痛い思いして子供を産んで、その後も一生懸命に育ててくれて、困った事に子供がなれば、体を張って守ってあげて...本来なら一番感謝しなくてはいけない...そんな存在だと僕は思うんです」
貴子も小百合も人数の違いはあるが、子育ての経験がある。
確かに大変だった。
「確かに子育ては大変だったわね、里香は小さい頃はお転婆だったから大変だったわ」
「私は白金に任せていたけど、それでも美優が夜泣きした時には良くあやしたわね」
「僕にはその感謝を伝える相手がいません、だから...僕に母親のように優しくしてくれる二人に感謝したいのです」
「その...私は子供が三人も居るけど...そんなに感謝された事がないわ...だからどう答えれば良いのか解らないけど...ありがとう」
「私だって同じですわよ、里香だってこんな事してくれませんもの...本当にありがとうございます...だけど、私、男性から宝石なんて貰った事はありませんわ...そうだ、いっそうの事私くしを妻になさいませんか? そうしたら寂しい思いをしなくて良くなりますわ」
「小百合、何をいっているのかな、だったら私が立候補するわよ」
「あのさぁ、お母さんも小百合おばさんも何を言っているの? お兄ちゃん困っているじゃない?歳を考えた方がいいんじゃないかな?」
「そう、そう、黒木君が大人になったババアじゃん、黒木君が可哀想だよ」
「誰がおばさんですか? 美優ちゃん...お姉さんでしょう?」
「だってお母さんと同い年だから...お.ば.さ.んだよ」
「全く、貴方達は黒木君を見習いませんか、、子育て間違えたかしらね」
「何か、今日の黒木君見たら本当にそう思いますね...冗談よ美優ちゃん...そんな顔しないで」
嘘だ、もしお兄ちゃんがOKしたらそのまま結婚に持ち込んだはずだ。
「そうですよね、小百合様、美優も冗談だよ」
「私も冗談だからな、母さん本気にするなよ」
「そうよね、冗談よね」
落ち着いたから僕はそのまま母の日を続行した。
2人は凄く満足したようだった。
美優ちゃん、玲奈さん、園崎さん、古木さんは不服そうだけど仕方ない。
その分の埋め合わせは何か考えよう
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