第52話 人形
私はナンシーちゃん、呪いの人形をしているの。
だけど、皆んなが意地悪するから仕返ししているだけなのだから悪くないと思う。
正直、他の人形が羨ましいわ。
可愛い子供に抱っこされたり、頭を撫でて貰ったり、そんな事私には無かった。
私は、ある有名な人形作家が作った人形なのだけど、失敗作なのか私を手に取る人皆んなが「醜い」「化け物だ」そう言って貶す。
私だって好きで醜くなった訳ではない。
私を作った人形作家が悪いんだ。
私を作った人形作家は女性の醜い部分を表現する作品として私を作った。
醜い部分、全部を表現した私は醜い。
しかも、ご丁寧に昔に居たとされる悪神をモチーフにしたそうだ。
うん、そんな人形売れる訳ないよ。
結局、売れ残り続けた私は激安セールとして売りに出された。
15万円の売値が1000円まで下がったころ、ようやく買い手がついた。
だが、この買ってくれた女性は悪魔だった。
悪魔と言っても本当の悪魔じゃないよ?
私を憂さ晴らしにしただけ。
機嫌が悪ければ私を怒鳴りつけ投げつけた。
私の唯一の取り得の綺麗なドレスははぎ取られて他の人形に着せられた。
私は裸のままいつも踏まれたり、投げ飛ばされたり...うん、人形じゃ無かったら殺している。
動けないのを良い事に落書きをされたり、手足をもがれたりもした。
ただ、この人は修復も出来るのか壊した私を治してまた壊すんだ。
私が幾ら人形で痛くはないとは言え気分は良くない。
私はこの女を呪った。
だけど、ただの人形に呪う力はなかった。
散々、私を弄んだ女は私を自分の男にプレゼントした。
これで幸せに成れるのかな、そう思った私が馬鹿だった。
この男は美少女フィギュアのコレクターだった。
私は...この男の美少女フィギュアの敵役にされた。
その為、手足を切断されたり、くっつけたりされた。
ジオラマと言うのかな、他の人形の女の子に見下ろされるようなポーズをさせられた。
凄くみじめだった。
私はこの男を呪った。
すると火事が起きた。
残念な事にこの男を殺すような火事ではなくただのボヤだった。
だけど、この男の大事な他の人形が燃えていた。
...いい気味だ。
綺麗な顔の人形が私より醜い顔に溶けた
....本当にいい気味だ。
だけど、私は他の人形と一緒に捨てられた。
ご丁寧に無事だったのに、火で溶かされて...
此奴いわく
「大事な人形が燃えたのに、一番醜い私が燃えなかったのがムカつく」
だそうだ。
この時から、私は呪いの人形になったんだと思う。
溶かされた私の体は元通りにいつの間にか復元した。
私はこの男の仕打ちが頭に来たので再度、この男の家を訪れた。
男は困惑して取り乱した。
そして、私をゴミとして捨てた。
凄くムカついた。
だから、私はまた、そいつの家に訪れた。
今度は外に埋められた。
更にムカついた。
今度もそいつの家にいった。
次は何故かお寺に持っていかれた。
その寺の坊主は何かを唱えながら、私を火にくべた。
だが、私の体はまたしても復活した。
そして、再度そいつの所へいった。
そいつは
「助けてくれ」と叫びながら取り乱して転んだ。
打ち所が悪かったのだろうか?
頭から血が出ていた、、恐らく死んだんだと思う。
だけど、私みたいに焼かれたり、切断されて無いんだから幸せだよね?
それに私はただ、貴方の前に現れただけなんだから死んだのは貴方の自業自得だよ。
次に私を焼いた坊主の寺を訪れた。
何もしてない私を焼いたんだから...恨みを込めて訪れた。
その度に、何回も火にくべられてたけど、しつこく付きまとったら、最後には気がふれたようだった。
「人形が...人形が」とうわごとのように喚いていた。
人を焼いたくせに良いご身分だ。
私はただ付きまとっただけ、それ以上何もしてないし、何の能力もない。
それなのに勝手に気がふれた...私は何も関係ない。
そして、私は一番最初の女の家に訪れた。
この女には赤ん坊が出来ていた。
だから、私はこの赤ん坊の傍に常にいた。
最初、この女は私をゴミ箱に突っ込んだ。
だが、私はゴミ箱から抜け出して再度ベビーベットに潜り込んだ。
何回もしつこく行っていると、この女が喚きだした。
そして、
「私が貴方にした事は悪かったと思う...たしかに切られたり、投げられたら呪うよね...だけど、それは私のした事だから、赤ちゃんは関係ないでしょう? これから私は死ぬから...この子には付きまとわないで...もし付きまとったら...幽霊になってあんたを殺してやる」
私は何も言ってないのに、、勝手に自殺した。
私は別に死んで欲しかった訳ではない。
ただ、何で私を虐めたのかその理由が聞きたかっただけだ。
その後も子供に拾われたり、したが、同じ様に私を虐める。
子供は残酷だ...私を花火で焼いたり...爆竹で爆発させて遊んだ。
自分は散々私を弄んだくせに...ただ訪問しただけの私を見て、勝手に泣き言をいう。
何回か訪れたけどただ、泣き喚くだけ...また死なれても困るのでもう行くのはやめよう。
だが、その後も私は何故か拾われて同じような思いをし続けた。
そして、嫌われ続けた私は本当の意味で 呪いの人形になった。
だが、こんな事を繰り返してもむなしいだけだ。
私は...もう疲れた、そんな時にお化け屋敷をみつけた。
ここなら静かに眠れるだろう。
他にも私程ではないが醜い人形も多い。
ここがいい。
静かに眠っている私に男が近づいてきた。
もう放って置いて欲しかった。
だが、この男は私を持ち出した。
また、私の呪われた日々の始まりか...どうせこの男も私を嫌って虐めるんだ。
静かに眠っていたのに起こしやがって...呪ってやるからね。
そして私はこの男の家にいる。
ついてそうそうこの男は私の服を脱がした。そしてその服をゴミ箱に捨てた。
せっかく、他の人形から奪って手に入れたのにまた裸にするなんて酷い、絶対に呪ってやる。
「せっかく可愛いのにボロボロだね」
何をいっているのかしら?聞きなれない言葉だわ。
「ようし、お風呂で洗おう...人形の髪ってリンスで洗えば良いんだっけ」
この男は何をしようとしているのかしら、水に入れられる虐めは初めてね。
「手足は...外れるんだな」
やっぱりバラバラにされた...虐めるんだ。
「何も解らないからボディーシャンプーで洗えば良いか」
何かな、この泡みたいなやつ、まさか私を溶かそうとしているのかしら?
体がおかしい。
「うん、後はお湯で流して」
おかしいな、これ何だか気持ちいいわね
「綺麗に拭いて」
これ、もしかして虐めているんじゃ無いんじゃないかな。
「ドライヤーの冷風で乾かそう」
うん、これ気持ちいいわね。
「よし、綺麗になった、うんやっぱりこの人形...綺麗だな」
嘘、私を見て綺麗っていったの...じゃぁさっきのは聞き間違いじゃないの。
「服は無いから、仕方ない今日は僕の寝間着で我慢してね、明日何か服を買ってくるから」
これでも充分だよ? 私に服をくれた人なんか居なかったんだからさぁ
あれっ 今まで見て無かったけど、この人、凄い美形なんじゃないかな。
「しかし、この人形、見れば見るほど美人だ...多分もうこんなの手に入らない...大切にしなきゃ」
私は貴方にとって美人なの?
本当に大切にしてくれるの?
「ふぅ、手入れしていたら遅くなっちゃったな...お休み」
うん、お休み。
流石に一緒には寝てくれないかぁー...残念。
しかし、この寝顔、、可愛いな...
毛布はいじゃ駄目だよ...風邪ひいちゃうよ。
私は、動けない体でどうにか毛布を掴んだ、そしてそのまま落ちた。
うん、これでちゃんと毛布が掛かっている。
呪いの人形なんて言われているけど、今の私は自由に動く事なんかできない。
もしかして、恨みが薄れたからかな。
上には上がれない、このままいるしかないな。
私は倒れたままで窓をみた。
お月様が凄く綺麗だった。
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