第48話 再び北條家へ

いつもの様に楽しみながらお弁当を食べていると東吾くんが話掛けてきた。


白百合さん達と居る時に東吾くんが話しかけて来ることは珍しい。


だが、最近はごく稀にだが話掛けて来ることがある。


但し、絶対に白百合さん達の顔は見ない。


最初、胸元を見ていたが、金剛さんに「持ち悪いですわ」と言われてから、足元を見ている。


逆に、白百合さん達も決して東吾くんを見ない。


この辺の法則が今一僕には解らない。


東吾くんも白百合さん達も僕から見たら凄い美形だ。


という事は、この世界だと物凄くブサイクという事になるのだが...白百合さん達は東吾くんを見ると気持ち悪がる。


東吾くんに到っては吐く時もある。


本当に気持ち悪い存在なら、白百合さん達同士でも気持ち悪がってもおかしくない筈だ。


解らない事を幾ら考えても仕方が無い。


「翔くん、今日うちに遊びに来ないか?」


奈々子ちゃんを紹介したんだから、様子を見に行かないのは不義理にあたる。


そして何よりも、僕自身が北條邸に遊びに行きたい。


「そうだね、奈々子ちゃんの様子も気になるから、行くよ」


「正直、助かった、 次は何時くるんだって煩くてな」


「ちょっと待って下さい、今日は私達もお伺いして宜しいでしょうか?」


これまた珍しく、白百合さんが北條邸に来たがった。


「あぁ、白百合達なら問題が無いと思うぞ、特に東条は姉のお気に入りだからな」


「えっ、私を気に入っているってどういう事?」


「姉は、自分では遣らないが剣道を見るのが好きでな...まぁ東条のフアンだ」


「そうか、なかなか良いお姉さんだね、私のフアンなんて通だね、、私も会うのが楽しみだ」



放課後、いつものようにリムジンが迎えに来た。


いつもと違うのは、今日来たリムジンがいつものより大きかった事だ。


うん、、あれより大きなリムジンがあったんだね。


東吾くんは珍しく助手席に座った。


そりゃそうだ、吐いたら困るからね。


「所で皆んなは北條家の人と面識はあるの?」


「ないです」


「ないよ」


「ないな」


「私くしは、母のお伴で貴子様には何回かお会いしておりますわ、ただ、他の方には面識がございませんの、良く母から比べられるのでこの機会にお会い出来たら嬉しいですわね」


「そう言えば、貴子さんと小百合さんは知り合いだったね」


「ええ、だからうちの親はしょげてますわ、家は1回しか来てないのに、北條家には2回、しかも奈々子さんの事で貴子さまが相談を受けたと聞いて手が震えておりましたわ」


「そそうなんだね」


「所で、なんで、北條家は何回も行きますのに、他の家には殆どいかれませんの?」


「あっ、それ私も知りたいな」


「歩美も知りたいかな」


「うん、白百合さん所は正直言って佐和子さんと反りが合わないからかな...最初に会った時には白百合さんじゃなく奈々子ちゃんを勧められたし...そして今回の奈々子ちゃんへの仕打ち、、正直行きたいとは思わないよ...あっでも白百合さんの部屋限定なら...行きたいんだけどね」


「よく考えたら至極ごもっともな話だね...今となったら私も余りお母さんに愛情ないかも」


「そうしたら、私くしの家はどうなんですの?」


「小百合さんは理想のお母さんみたいで別に問題無いよ、ただ、メイドさんからのアプローチが少しね」


「確かに、あのメイド達は黒木様を狙っておりましたわね、だけど女なら仕方ない事なのですわ」


「そうなんだけどさ、僕が金剛さんと付き合っているのを知っててアプローチしてくるのはね」


本当は化け物にしか見えない...とは言えないから、この辺りが無難かな。


「あらっ、あのメイド達は、凄く美人なのですわよ...1人は元ミスワールドなのですわ」


「そう、僕からしたら金剛さんの方が綺麗に見えますよ」


「もう、そんな事ばかり、、まったく...」


「あのさぁ...私の所へはなんでこないんだ?」


「えっ東条さん...招待されてないからじゃないかな?」


うん、東条さんからは招待をされてないよね。


「何だ、皆んな、そんな残念な子を見るような目で見るなー」


「貴方って人は本当に竹刀を持っている時と日常は違い過ぎますわね」


「確かに竹刀持つと落ち着くけど」


「それなら、歩美のところは何で?」


「東条さんと一緒...だと思う」


「あれっそう言えば歩美も招待してなかった」


出来たら、東条さんと西城さんの家には行きたくなんだけどね。


「あれが、北條家なのですわ」


「凄く大きいね、うちとは大違い」


「そりゃ、そうだ、、世界の北條家だ、、まぁ確かにうちの道場よりも大きいが」


「あれっ東吾くんどうしたの?」


「何でもない...」


運転している、白金といい、よくこれだけのブサイクに囲まれて気持ち悪くならないな。


最近、もう一人例外が居て驚いたが、、、俺には耐えられない。


吐かなかった自分を褒めてあげたい位だ。


「黒木さん お久しぶりです」


「あれっ、奈々子ちゃん、何で私服なの? メイド服着ないでいいの?」


「奈々子はメイドでなく...友人枠で採用されたみたいなのでいいんだそうです」


「それって、どんな仕事するの?」


「お話しとかトランプとかですね」


「東吾くん...本当にそんな仕事あるの」


「あぁ...彼女は母さんのお気に入りだからな...悪いが俺は用事があるからこれで失礼する、後は白金任せたぞ」


相変わらずですね坊ちゃまは。


「はい、任されました」


悪いな、流石にこれだけの化け物が揃うと駄目だ、気持ち悪さが止まらない。


「じゃあね東吾くんまた後で」


「またな翔くん」


「それで白金さん、今日はどうすればいいの?」


「そうですね、まずは、黒木様以外にもおりますので、奥様にご挨拶して、その後は奈々子様にお聞きください」


「奈々子様? 奈々子ちゃんの方が後輩なんじゃないの?」


「奈々子様は特別ですから」


「奈々子、凄いじゃない...もう出世したの?」


「お姉ちゃんに比べたらたいしたこと無いよ?」


「私? 出世なんてしたかな?」


「黒木さんの第一彼女でしょう? それ以上の出世なんてあるのかな?」


「えっ、この方が第一彼女なんですか?」


「そうだよ白金さん、、この人が私のお姉ちゃん、黒木さんの第一彼女...」


「そうですか、、羨ましいですね、、それではついて来てください、、奥様の所にいきますよ」




「貴方達が、黒木さんの彼女ですか羨ましいですね」


「第一彼女の白百合京子です」


「そう、貴方が京子さんね、妹の奈々子ちゃんにはお世話になっているわ」


「奈々子に居場所を作って頂いて有難うございました」


「いえ、本当に助かっているの」


「お久しぶりですね貴子様」


「お久しぶりね里香ちゃん」


「本当に久しぶりですわ、今日は玲奈さんや美優さんに会えるのかと思うと楽しみですわ」


「そう、そう言えば里香ちゃんはうちの娘にあった事はなかったわね」


「はい、だから楽しみなのですわ」



「西城歩美です、宜しくなの」


「成程、貴方が黒木さんの妹なのね」


「妹って、、確かにそうですね」


少し、美優に似ているかも知れないわね。


「東条楓です。宜しくお願い致します」


「知っているわ...剣道が上手なのよね、うちの娘がフアンなのよ、後で会ってあげて」


「はい、わかりました」


凄いわ、この子たち、私を拒絶しないなんて、これなら皆んな友達に成れそう。


こんなに長い間私と一緒に居られる人はなかなか居ないわね。


奈々子ちゃんと同レベルなのかしら?


「それじゃ、今日は何をしようかしら?奈々子ちゃん」


「玲奈さんと美優ちゃんを呼んでゲームとかどうでしょうか?」


「いいいわね、、ただもう一声欲しいわね」


「だったら、一番になった人の言う事を他の方が聞く、そんな感じでどうでしょうか?」


「いいわ、それ」







「ところで奈々子ちゃん、ゲームは何をするの?」


「何にしましょうか? 黒木さんは何かやりたいゲームはあります?」


「僕?」


何が良いかな?


正直、前の世界ではボッチだったから人と遊んだ事は殆どない。


この人数で遊べるとなるとトランプかボードゲームしか思い浮かばない。


「トランプ、もしくはボードゲームが良いんじゃないかな?」


「そう言えば、この前に地下室でボードゲームを見つけました、あれ使って良いですか?」


「そんな物あったかしら? あるのなら使ってもいいわよ...悪いけど奈々子ちゃん持ってきてくれる?」


「ちょっと重そうなので、園崎さんお手伝いして貰っていい?」


「はい、奈々子様」


凄いね、奈々子ちゃん本当に出世したみたいだ。



「これなんだけど?どうかな」


見た感じは普通のボードゲームで中心にルーレットがあって1~8の数字がある。


車のようなコマとトランプみたいなカードがついている。


普通のボードゲームより大きく広げると畳1枚分以上はある。


タイトルは 「婚活女子、人生は奪った者勝ち、、奪っちまえばこっちの物」

なんだ、このゲーム。


「これは、もしやうちと北條家で開発したボードゲームですわね」


「そうそう、私と小百合で考えて企画だけしたものね、、黒木くんが居るなら面白そうだわ、やってみない?」


「確かに面白そうだ、これなら何人でも遊べるし、良いかも」


「ところで、一番になった人は他の人に言う事を聞かせられるんだよね、、だけど、これには、常識の範囲という条件をつけないといけないと思うんだけど」


「流石、白百合さん、気配りが旨いね」


「そうだよ、じゃないと私、一番になったら、黒木くんと結婚したいとか言うかもしれないもの」


「あははは、そうですわね、そうしないと大変な事になる所でしたわ」


「そうですね、確かに、そうしないと北條の財産を全部くれ、何て言う人もいるかもしれませんし」

絶対にそんな物より、黒木君の結婚権を狙うでしょうけどね。


「じゃぁ優勝者は常識の範囲で自由にお願いが出来る、で良いのかな? それとテレビみたいに賞金を出したらいいと思う。美優は1千万だすよ」


「美優、これは北條家の主催だから、いいわよ母さんが5千万だすわ」


「あの、流石に出しすぎではないですか?」


「良いのよ黒木君、5千万位なら、10秒もあれば稼げるから」


「私や美優はそうはいかないけど、1日位で稼げるお金だよ、、心配は要らないさ」


本当に北條の人って凄いスペックだな、、


「それじゃ始めようか? 黒木君は悪いけどカードマンお願いできるかな」


「カードマン?」


「そう、カードの内容を実行する人、、これは男の人の方が面白いから」


「解りました」


じゃんけんで順番を決めてルーレットを回す順番は次のようになった。


白金薫

白百合京子

金剛里香

園崎仁美

東条楓 

西城歩美

北條美優

古木ナンシー

北條玲奈

白百合奈々子

北條貴子


「私からですね、日ごろの行いが良いせいなのかしら1番手です、5ですね」


恋愛マス 恋愛カードから1枚引いて貰う。


「それじゃ、僕はこのカードを引いて、内容を実行すればいいんですね」


「そうみたいですわ」


「では、、黒髪がいつも素敵ですね、その髪を触れせて貰っても良いですか?」

僕は白金さんの髪を優しく触った。


「なななな何をしているの、黒木様、、いきなりそんな事なさるなんて、もしかして私も彼女にして....」


「白金さん、違うよ、、ほらこれ」


「あっカードの内容なんですね、、だけど、これは凄い...」


「「「「「そういうゲームなんだ、これ」」」」


「じゃぁ今度は私の番、、恋愛マスこい、こいと、、3はえっ失恋マス」


もう、ルールは解っている。


失恋カードから1枚引いて実行をした。


「ごめん、お前みたいな女、好きになれないから二度と顔をみせるな」

軽く白百合さんを突き飛ばした。


「うそ、うそ、うそだ、、黒木くんにフラれたら、、私生きていけないよ、」


「違うよ、白百合さん、これ、これ、このカードの内容」


「そうだよね、ゲームだよねこれ」


「うん、僕が白百合さんを嫌いになるなんて無いから安心して」


「でも、これ凄いゲームだ、地獄か天国かまさにルーレット次第、、次は絶対に恋愛マスに止まらないと心が持たないかも」


「はい、はい、次は私の番ですわね、やりましたわ5ですわ」


「里香、いつもありがとう、君が居るから僕は生きていけるんだ」


僕は里香を抱きしめた。


「そんな、里香の全ては黒木様の物...なのですわ」


「はい、はい、これはゲームですよ金剛様、次は私の番 6 」


「君には飽きた、もう二度と俺の前に顔出すな」


「これっゲームだとしても心が痛みますよ...辛いわ」


「次は私の番だな...4 何も書いてない」


「これは何もイベントが起きないマスみたいですね」


「何も起きないのが案外、一番面白くないかもな」


「そうですね」


「次は歩美の番だね、、7ハプニングマス?」


「何かこのハプニングというカードを引くみたい」


ハプニングカード

 隣の人とじゃんけんして勝ったら彼に10秒間ハグして貰って好きなセリフを言って貰える。

負けたら、踏みつけられながら周りから罵られる。


「じゃぁ東条さんじゃんけんお願い...やった...勝った」


「じゃぁ、、このセリフでおおおお願いなの」


噛むという事は結構際どいセリフなのかな。


「うん、解った、歩美ちゃん、愛している僕と結婚してくれないか?」


うん、凄く大胆だね。 10秒感 ハグした。


「うん、歩美で良かったらお嫁さんにして下さい」


「なんなんですか? そんなカードがあるなんて、私の番になったら絶対に引くよ」


「あれ、いいなぁ...美優も引きたい、恋愛マスかハプニングマス、、やったハプニングますだ」


ハプニングカード 隣の人と睨めっこして勝ったら 壁ドンから頬っぺたにキスして貰い、好きなセリフを言って貰える。逆に負けたら、失恋カード3枚引く事になる。


「古木さん、勝負です」


「あははは...古木さん、美優は主なのに少しは手加減してくれても」


「絶対に嫌です、あんなの美味しい思い、他人にされてたまりますか...さぁ敗者は失恋カードです」


「お前みたいな女大嫌いだ、一生部屋から出て来るな」


「くすん」


「何でお前みたいな女がいるんだ、俺の前から消えてくれないか」


「うぐ、くすん」


心が痛いけど仕方ないよ、、ルールだから


「まだ、俺の前に居るのか、とっとと消えろ」


「うわーん、黒木君ごめんね、すぐに居なくなるから」


「違うよ美優ちゃん、これゲーム...ゲームだからね」


「そ、これゲームだよね、本当に黒木君は、美優の事嫌いにならないよね?」


「ならないよ」


「黒木君、頭は撫でちゃ駄目...それじゃゲームにならないから」


「お母さん」


「美優、今はゲーム中だから親子でも敵よ」


そんなに真剣にならなくてもいいんじゃないかな。


「次は私と...3恋愛マスだー」


「ナンシー君を離したくない」


僕は、ナンシーさんを後ろから抱きしめた。


「これ、解っているけど...凄いね、超楽しい」


「おっ、次は私だな...告白マス 何だこりゃ」


「告白カードを引くみたいです」


告白カード 好きな人に壁ドンをして愛を囁く


「それじゃいくよ、好きでしゅ、愛してるぞ」


あっ噛んで赤くなった。


「ありがとう、玲奈さん」


「あっ暫く私は見ないでくれ、汗が止まらなくなるから」


「はい」


「次は奈々子ですね...白マス...つまらない」


「次は私ですわね...恋愛マスですね」


恋愛カード 膝枕をして貰い頭を撫でて貰える。


「さぁ 黒木さん...どうぞ」


ゲームは2時間続いた。


皆んなが泣きながら笑っていた。


このゲーム、精神に良くないと思う。


毎日続けたら心が壊れるんじゃないかな?


結局、優勝したのは貴子さんだった。


「私が優勝したのだから、願い事をお願いします。ここの皆んなで海に遊びに行く事です。 以上」


海か...楽しみだな。


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