第47話 北條邸にて 白百合奈々子

私は新たな決意と共に北條邸を訪れた。



ここの主は昭和の妖怪とも呼ばれる北條貴子だ。


醜い、その一点を除けば、恐らく一流中の一流の人物だ。


ある意味、世界で一番すごい人物と言っても過言ではない。


黒木さんが行き場の無い私の為に用意してくれた仕事場、恥をかかせる訳にはいかない。


門の前に立ち尽くす事10分。


その屋敷の広大さに驚きが止まらない。


息を吸い込んだり吐いたりする事3分...私はようやく勇気をもって呼び鈴を押した。


「どちら様でしょうか?」


鈴を転がしたような可愛い声だ。


こんな声の人はさぞかし美女なんだろう。


「初めまして、白百合奈々子と申します」


「はい、黒木様にも、奥様にも聞いています、今門を開けますのでお待ちください」


驚く事に門は自動で開いた。


門が開きそこから家の玄関まであるいて2分程掛かった。


本当の豪邸ってこういう物を言うんだな、、元の家も佐和子御殿なんて言われていたけど、これに比べたら犬小屋にしか見えない。


家の玄関まで行くと、私と同じ様に醜い女性が三人居た。


昔の私なら多分目を背けていたかも知れない。


だけど、今の私の目から見たら、凄く洗練された姿に見えた。


あれは、多分お姉ちゃんと同類だ。


外見以外は全てを身に着けた完璧美少女なのかも知れない。


「はじめまして奈々子さん、私はメイド頭をしています、白金と申します」


「園崎です、宜しくね奈々子さん」


「あたしは古木、宜しく」


「私は、白百合奈々子です、お願いします」


「「「うん、宜しくね」」」


やっぱり、完璧美少女だった。


この人達もお姉ちゃんと同じで醜い以外、、は本当に凄く見える。


「もしかして、ブサイクなんで驚いた?」


「そんなブサイクなんて、私なんかブサイク処かお化けですから」


そう、今の私は...うん遙かにブサイクだ。


「うん、そうだね...だけど、奈々子さんも黒木様が好きなんでしょう?」


「あれ程、優しくて綺麗な人は居ませんから、奈々子も大好きです。もと言う事は皆さんもそうなんですか?」


「「「はい」」」


「だけど、黒木様には恐らく外見の美しさは、、余り価値が無いと思います。 何しろ、本当の化け物、、これは絶対内緒ですよ...ですら女神と褒める方ですから...あの方に好かれるには内面を鍛えるしかないと思いますよ」


「私もそう思います」


「ならば、私たち4人は仲間でライバルです、一緒に頑張りましょう」


うん、白金さんには叶わない、本当に外見以外は完璧熟女だ。


この人は、長く生きた分、お姉ちゃんより凄いかも知れない。


「奈々子さん、今何か失礼な事を考えませんでしたか?」


「いいえ、何も考えていません」


まさか人の心が読めるのかな?


「お話しをしていたいですが、まずは当主の貴子さま、長女の玲奈様 二女の美優様にご紹介致します。その後に長男の東吾を紹介します」


「あの、何故、東吾様だけ敬称が無いのでしょうか?」


「あぁ、基本、東吾...様は私達には寄って来ないので空気と思って構いません...何か言われた時に対応してあげれば構いません」


「男性なのに雑に扱って良いのでしょうか?」


「見れば、雑に扱う訳が解ると思います」


「そうですか」


「さぁ、行きますよ...ついて来てください」


「はい」



「こんにちわ私がこの屋敷の主の貴子です、宜しくね奈々子ちゃん」


この人がここの主、確かに群を抜いてブサイクだ。


確かに私なんか比べ物にならない化け物。


だけど、この人は世界一の金持ちだ、世界一の権力者だ。


それが、何でここまで腰が低いのだろう...


「どうか、されたのですか? 奈々子ちゃん?」


これは試験は失敗かな、雇えないわね。


「あの、なんで貴子さまはそんなにお優しそうなのですか?」


まさか、この子は...まさかね。


「私が優しそうに見えるのですか?」


うん、確かにこの人はブサイクで醜い...だけど、私の母のような冷たさがない。


まるで、人を包み込むような優しい雰囲気が漂っている。


なんで、この人が化け物なんだろう...


「はい、凄く優しいそうな人に...私には思えて...すいません使える身なのに口がすぎました」


「いいわ、気にしないで貴方は友達になれそうね...本当に優しそうに見えるのなら、暫く私と話さない?」


「宜しいのですか?」


「えぇ いいわよ、白金、暫く席を外してくれる」


「畏まりました、貴子様、用事が済んだらお呼びください、玲奈様と美優様への紹介が済んでいないので」


「そう、なら二人ともここに呼んできて、その方が早いでしょう?」


「畏まりました」


暫くして玲奈と美優が部屋に来た。


「その人が奈々子ちゃん、黒木くんが言っていた人だね 私は玲奈宜しくね」


「私は美優、、黒木くんの天使をしています」


「ちょっと美優...天使ってなんだ?」


「うん、黒木くんが美優の事、天使なんだって」


「そうなの...私は綺麗としか言われて無い...いいなぁそれ」


「お母さんはね...女神様なんだって...天使より女神様の方が上ですよ」


「女神より天使の方が可愛いいもん」


「女神の方が天使より偉いもん」


「いいなぁ、2人とも、そんなあだ名で呼ばれて...私なんか...私なんか...綺麗しかいってもらえてないよ...そうだ奈々子はなんて言われたの?」


「あ、私は...妹兼友達からだそうです...だけどキスまでして貰いました」


「キスは...全員して貰ったよ...妹と天使ってどっちが上なのかな?」


「うーん、天使の方が可愛いけど、傍にいるって意味なら妹の方が上じゃないか?」


「お姉ちゃん、自分が何も言われていないからって美優にやつあたり」


「違うだろう、お前は妹だから、私と同じ家に住んでいるけど...天使は私と住んでいない...ほら、傍にいるって意味なら妹の方が上じゃないか...それに妹は...家族だぞ」


「お姉ちゃんの意地悪...だけど、いいな、奈々子さんは妹か...確かに身内だね」


「私なんか、まだまだ、黒木さんが一番好きなのは...私のお姉ちゃんですから...私なんて最近まで相手にもして貰えなかったんです」


「えっ、黒木君にそんあ人が居るの...知らなかった...東吾はそんな事言わなかったわ」


「奈々子ちゃん...それについてもっと詳しく教えて」


「奈々子ちゃん、それ本当?」


あれっ何故か私...さんからちゃんに呼び方が変わっている。


「私の知っている範囲で良ければ...」


私は知っている限りの事を教えた。


「そうなのですか、黒木君には第4彼女まで居るのですね」


「はい、第一彼女が、姉ちゃんで白百合京子って言います」


「そう、さぞかし綺麗な方なんでしょうね?」


話を聞くと三人は驚いた。


自分達と同じ全員がブサイクだと言うのだ。


ただ、更に驚いたのが全員が奈々子の言う通りならハイスペックなのだ。


白百合京子、奈々子の姉で、彼女の言うには醜い事以外は学業優秀、出来ない料理が無い 完璧美少女


金剛里香、彼女については私の方が詳しい、彼女は私の友達の娘だ、華族の家柄の家電メーカーの1人娘、醜いという事を除いてはハイスペックだ。あの子が居る限り金剛家はこれからも海外に出し抜かれること無く家電業界を牛耳るだろう、まだ若いがいずれは私の足元位には近づいてくるかもしれない。


東条楓 実戦派剣道の道場の跡取り娘、母親は鬼姫という美しい剣道家だったが、彼女には美しさは遺伝しなかった。カマキリの様に長い手足を持つ醜い娘、だけど、彼女は剣道の才能は母親を越えていた。その証拠にある時期から一度も彼女は負けなくなった。 だが、それ程の才能を持ちながら、世間は天上心美を100年に一度の天才と呼ぶが、何故、そいつに負けないこの子を天才と呼ばないのか疑問に思っていた。 玲奈が実はフアンで彼女の記事を集めていた...なんでも醜い彼女が綺麗な剣士を倒す姿に憧れたそうだ。


西城歩美 妹みたいな女の子らしい、この子についての情報は無いが、奈々子曰く、妹兼彼女という事からそれなりに優秀なのだろう。 妹と言う言葉を聞いた時に美優が、妹ポジションが三人居るって騒いでいた。 だけど、黒木君なら三人纏めて妹にしてくれるだろう。


「凄いな、、真面目に黒木くんは外見で無く中身重視なんだ、、疑ってはいなかったけど...うん、凄い、東条楓を彼女にしているのは凄いな...あの人は日本一の女剣士だ...まぁ外見は良くないけど」


「それを言うなら、金剛里香を彼女にしているのは凄いですわ...もし次世代の才能ある若者というなら、身内贔屓でないけど、間違いなく 玲奈と美優です。 ですが、もし他に誰かを上げるなら金剛家の里香になります」


「それを言うなら、お姉ちゃんもです。私の母は、白百合佐和子です。子役からスターに上り詰めた。その母の外見以外は全て受け継いでいます。 外見というハンデが無いなら、料理は旨いし、誰にでも優しいし、母は偽物だけど、お姉ちゃんは演技でなく本当に内面の素晴らしい女の子です。何よりも黒木さんが第一彼女に選んだし、一番お姉ちゃんに時間を使っています」


「ねぇ、、その西城さんの情報は無いの? その子がなんか美優のライバルになる気がするんだけど」


「すいません」


「残念だけど仕方ないか」


「今度、お姉ちゃんに聞いてみます」


「ありがとう、奈々子ちゃん」


「あの、貴子さま、それで私はどの様な仕事をすれば良いのでしょうか?」


「そうね、私達と遊んでくれれば良いわ」


「遊びって何でしょうか?」


まさか、何か危ない遊びをさせられるのかな、遊んでお金が貰えるわけ無いし。


「そのままよ、今日みたいに話し相手をしてくれたり、美優とゲームしたり、玲奈と散歩したり、そういう遊び全般ね...勿論、新しい遊びや楽しい話題の提供も入るわよ」


「それで良いんですか?」


「えぇ、、それで充分ですね、美優や玲奈は他にやって貰いたい事ある?」


「それで充分じゃね」


「美優も他にはないかな」


「本当にそれだけで良いのですか?」


「そうね、じゃぁ他に...貴子ちゃんって呼んでくれる?」


「それ良いね...じゃあ私は玲奈ちゃんでいいや」


「じゃぁ美優は美優ちゃんって呼んでね」


「本当にそれでいいのですか?」


「いいのよ、家事はメイドに任せて何もしなくて良いから、私達と楽しむ事を考えて頂戴」


「はい」


「そうだ、給料の提示がまだだったわね...年収で1億2千万...まぁメイドの倍でどうかしら?」


「幾ら何でも貰いすぎだと思います」


「そう、じゃぁ年収で9千万...これ以上は下にはしないわ...貴方は若いから半分支給して半分は貯金にするわね...貴方も黒木様と一緒で自分の価値を知らないのね」


「価値ですか? それじゃ一体」


「内緒です、それじゃ今日は疲れたでしょう? 休んでいいいわ」




「4時間30分...凄いわね」


「美優は驚いたよ、私たちの醜さに耐えられてこんなに一緒に居られた人居ないよ」


「本当にそうだ、弟の東吾なんて30分...それでも凄いのにね」


「そう、そう園崎ちゃんが1時間半、メイド頭の白金だって2時間が限界」


「だけど、あれが限界なんて思えないわ...あのまま幾らでも居れそうだったわ」


彼女達が黒木以外で一番欲しかったもの、それは友達だった。


自分達と長く居られるメイドを見つけるのにどれ程大変だったか。


だけど、そのメイドですら恐怖心があった。


今では少しはマシになったけど、それでも心の中で恐れている。


あれほど、私達を恐れなかった人間は黒木君しか知らない。


「楽しかったわね」


「うん、黒木くんみたいに奈々子ちゃんは私が全然怖くないんだね」


「そうだな、、明日も楽しみだな」


「ええ、、明日は何をしましょうか? 流石、黒木君の推薦ですわね本当に素敵な子」


明日が楽しみだ。




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