第44話 IF金髪の王子様

家族が幸せそうな笑顔で笑っている。


良かった。


翔くんと幸せそうな家族を見たらそう思ったんだ。


どんなに怖くても醜くても家族だから。


本当に、良かった...これで、俺も死ぬことが出来る。


俺は醜い家族が怖かった。


中途半端に醜い俺は家族とも旨く打ち解けられない。


かと言って、普通の人間からは醜いから相手にされない。


この孤独には耐えられない、もう限界なんだ。


悪い、翔くん後は君に任せた。


俺は死ぬことにするよ。


きっと、優しい君は怒るだろうな。本当にすまないな。


俺は用意した毒を飲んだ。




ここは何処だ、俺は死んだはずだ。


なのに何で、こんな所に居るんだ?


「あの、すまないが、此処が何処だか教えてくれないか?」


「何かのイベントですか? そういうキャラなのかな? ここは秋葉原ですけど...知ってますよね?」


「秋葉原、、知らないな」


「もしかして異世界転移キャラですか? 凄く似合ってますよ、もっと話していたいけど、すいません待ち合わせがあるので...ごめんなさい」


「いや、引き留めてすまなかった」



今の男の子凄く綺麗だったな。


モデルさんなのかな?


時間があれば絶対にお茶したかったのに...残念



秋葉原か、知らないな。


そんな街あったかな、しかしここはどんな街なんだ。


醜い女のミニスカート姿なんか見て面白いのか?あんな女の写真集を誰が買うのか。


さっきから、醜い女がメイドの恰好をして客引きしているが、もう少し真面な女が用意出来ないのか。


うちのメイドよりはかなりましではあるが、、人によっては吐くぞこれ


ここの街はなんなんだ、キモイ男の看板にキモイ女の看板、化け物都市かここは...


しかも、漫画のキャラクターまでもがキモイ女が表紙だ。


男は俺みたいな醜い男が書いてある。


一瞬俺かと思ったぞ...買わんよこんな本。


しかし、掲示板の地図を見ても住所表記を見ても解らない。


本当にここは何処なんだ。


言葉は通じるから問題無いし、文字も読める。


あとは金か。


あそこのATMで試してみるか?


なんで使える?


ここどう見ても知らない場所なのに、金は使えるんだな、、まぁ、一安心だ。


しかし、さっきから俺の事、写真を撮る奴が多いな。


そんなに醜い男が好きなのか。


俺ほどではないが醜い男のマンガや看板がある。


ここは醜い者好きが集まる変な街なのかも知れない。


「あの、写真を撮らせて貰っても良いですか?」


微妙系ブサイクがさっきから、時々写真を撮りたがる。


だが困った事にこいつ等に悪い感情がないんだ。


俺の事を馬鹿にする言葉。


冷たい視線。


それらが一切なく、本当に優しい目で見てくる。


俺みたいなブサイクな男の写真1枚で喜んでくれるんだ。


断れないな、今迄、こんな顔をしてくれた人なんて...翔くん位しかいない。


「俺で良いなら...どうぞ」


それしか言えない。


だが、出来る事ならこいつ等じゃなくて、あっちから見ている美少女に言って貰いたいな。


あの、ガラガラで良いのか? バックを引きづって眼鏡をかけている子とかに。


遠巻きに見ているだけで何でこないんだ。


ここの街はブサイクに優しい。


だったら、俺から声を掛けても大丈夫なのかな?


「あの、もし良かったら写真一緒に撮らない?」


「あわっわ私とですかな」


なんでそんなに慌てているんだ、まぁ凄く可愛いけど


「そうだけど、駄目か?」


どうしてだろう? この人さっきから綺麗な子に囲まれていたのに、何で私と写真を撮りたいのかな。


今日はイベントとかでなく、ただ、同人誌買い漁りにきたからメイクもしてないし....


どうみても根暗女子にしか見えないと思う。


だけど、凄い美形だぁ....遠目でも凄かったけど、近くで見たら王子様か御曹司がBLの世界から飛び出してきた。そう錯覚しちゃう位...綺麗。



「駄目じゃないです、寧ろお願いしたいです」


「そうじゃぁ、撮ろうか」


俺は自分のスマホで彼女と並んで写真を撮った。


「あの、私も良いですか?」


「勿論」


彼女は嬉しそうに写真を撮った。


本当に嬉しそうだ。


この街は本当にブサイクに優しい人の多い街なんだな。


「ありがとうございます」


お礼を言われた。


こんな美少女にお礼を言われたのは初めてだ、、誤解しちゃだめだ。


こんな子が本気で俺を好きになってくれる訳がない。


連絡先を聞こうと思っても無駄だ。


「こっちこそ、ありがとう」


醜い俺だが出来るだけの笑顔をしよう。


彼女は固まってしまっている。


此処までは無理か?


俺の家族の笑顔みたいに気持ち悪かったんだな。


すまんな、調子に乗った。


俺は申し訳ない気持ちを抱えながらその場を立ち去った。




今日はなんて良い日だろう。


まるで、漫画の主人公になったみたいだわ。


私は正直いってブサイクだ。


だれも私なんか相手にしてくれない。


だから、二次元に逃げた。


漫画や小説だけが私の友達。


漫画の主人公や小説のキャラクターは私を虐めないからね。


今日もいつもように新刊の漫画や小説、同人誌を買い漁っていたら、人混みが出来ていた。


邪魔だよ、イベントなんかしないで欲しい。


そう思って見ていたら、凄い美形の男子がその中心に居た。


私は二次元の男が好きだ、アイドルとかは一切関心が無い。


その男子は、三次元の男には見えなかった。


まるで、私が手にしている本の鬼畜系の御曹司もしくは何処までもヒロインに甘いちょっと冷たい王子様にしか見えなかった。


そんな彼が、綺麗な女の子から態々離れて、私の所へきたんだ。


もしかして、私...本当は...漫画のヒロインだったのかな?

なんて思ってしまった。


まぁ、そんな都合の良い話はなく、写真だけで終わっちゃったけどね。


この写真、金髪の王子様を私のスマホの待ち受けにしよう、今度皆んなに自慢しようかな。


だが、彼女は知らない。


その王子様は孤独な世界に居たから、、勇気を出せば簡単に口説けた事を。


正に彼女の小説の言葉でいうならチョロインだった事に気が付かなかった。



「洗体?」


ちょいブサイクな女子学生に声を掛けられた。


「それって、何なんだ」


「いやお兄さん、知らないの?可愛らしい女の子が水着で体を洗ってくれるんだよ」


ここでは男でなく女が体を使ったサービスがあるのか?


まぁブサイクな俺には都合が良いんだけど


「本当にかわいい子が居るのか?」


「居るよ...遊んでいかない」


「じゃぁ行ってみようかな?」


「案内するね」


ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイこんな美少年が本当に食いついちゃったよ。

話がしたいから、遊びで声かけたのにこんな人の体が洗えるチャンスがあったなら...呼び込みのバイトにしないでサービス担当の方が良かったな。


俺で大丈夫なのか?


俺は言っちゃ悪いがブサイクだぞ、金を払っても傍にいたくない男だ。


何十万円払っても手すら握って貰えない男だ。


そんな俺の体を水着で洗うだと...多分、この子店に怒られると思うが...大丈夫なのかな?


「ここの三階がお店になります。このチケットを持って桃子の紹介って言えば良いんでお願いします」


あぁ気が引ける。呼び込みする子と違って、サービスする子はここの店ブサイクしか居ないんだよね。


HPの写真は全部修正かけているし、大体、本当にかわいい子なら、風俗に近い洗体じゃなくてメイドさんしているでしょう。


金が欲しい可愛い子なら風俗にいくでしょう。


大通りになら綺麗な子が居る洗体のお店もあるけど、客引きが必要なこんな奥まったお店だしね。


仕事だから悪く思わないでね。


俺は言われた通りにエレベーターに乗って三階にいった。


くたびれた男が受付をしている。


「あの、桃子さんの紹介で来たんですが、これチケット」


「はい、それじゃ1万2千円だけど割引ついて1万1千円ね、直ぐにいけるから」


「あれっ女の子選べないんですか?」


「今日は混んでいてね」


この店は実は凄く悪質なお店だった。


客引きに可愛い女の子を3人程使っている。


彼女達は客引き専門なので決してサービスはしない。


そして、店には実はブサイク女一人しか居ない。


この女が洗体サービスする女...


だから断られないように前金でお金を貰って、そして彼女を見て断ったら


すいませんキャンセルする場合でも前金は返せません。


そういうシステムだった。

ただ一つのメリットはブサイクだけど女が若い、それだけだった。


だから、それを知っている人は此処には来ない。


俺みたいな醜い男の体を洗うのだ、多少のブサイクは我慢だ、白百合クラスだったらお金は捨てたと思い帰れば良い。



「あの、初めましてこれから体を洗わせて貰う、萌子と言います」


嘘だ、嘘だ、こんな美少女が俺の体を洗うだと。


萌子と聞いて驚いたけど、あの湯浅萌子ですら足元にも及ばない位、綺麗で可愛い。


こんな子が本当に水着姿で洗ってくれるの?


嘘だ、こんな美少年が私の前で裸になるの?


洗わせてくれる訳無いか、多分怒って帰るよね。


「どうされましたお客様」


この後、凄い罵声がくるんだ。解っている。


こんなブサイク想定してないでしょうから。


仕事、仕事、1万円以上この人は払っているんだから仕方ない。


「綺麗、本当に可愛い、本当に俺なんか洗ってくれるの?」


嘘、こんな優しい対応されたこと無いよ...私、

中年親父にすら物投げられた事もあるのに。


「勿論です。その水着はどれが良いですか? 本当はビキニはオプションでお金が掛かるけどサービスしちゃいますよ」


この位のサービスは個人判断で大丈夫だから、付けちゃうよ?


「それは本当は幾らなんだ」


「5千円ですが、お金はいりません」


「駄目だよ、俺の相手をしてくれるんだから払うよ、はい5千円」


「いいの?」


私は精一杯彼の体を洗った。


やっちゃいけない一線を越えないギリギリのサービスをしてあげた。


胸を押し付けたり、下半身を押し付けながら時間を掛けてサービスした。


こんな男の子は初めてだから。


私は凄く醜い。だから皆んなに嫌われる。


実際にサービスを受けるお客は居なく、居たとしてもオジサンが金が勿体ないからと嫌々受けるだけ。


だから、凄く嫌そうな顔しかしない。


しかもブサイクで我慢しているんだからと抜く行為までさせられそうになった事もある。


最も、店が対応してくれてその場合は叩き出してくれるけど。


私だって女だ綺麗とか可愛いって言われて嬉しくない訳ない。


喜んでくれるのが解る。


「頭撫でて良いか?」


本当は良くない、お客から触るのはマナー違反だ。


だけど、彼になら触らせても良い。


ううん、触ってもらいたい。


「本当はいけないんですが、お客様なら特別に良いですよ」


この人に喜んで貰いたい。


だから、醜いのに笑顔を作ってみた。


大切な物を触る様に頭を触ってくる。


こんな幸せな触り方された事が無い。


正直、お店のルールが無いなら性的な事だってしてあげたい。


まぁ処女だからやり方解らないけど。


楽しい時間はすぐ終わってしまった。


今、私は体を拭いてあげている。


「萌子さん、他のオプションって無いの?」


あるにはある。


メイド散歩だ。


だけど頼んだ人はいない。


ブサイクな私を連れて歩きたい人なんていないから。


「メイド散歩って言うのがあります」


「それ、どんなサービス?」


「1時間 1万5千円で私とデートするサービスです」


「そんなのあるの? お店の時間って8時までだから、残り5時間、、7万5千円払えば萌子さんを貸し切れるの?」


何を言っているんだろう?


そんなお金出せば、本物の風俗で綺麗な子と遊べるじゃない。


ブサイクな私に使う金額じゃないよ。


「それじゃ萌子さんと散歩5時間で」


嘘、本気なのかな?


本当に7万5千円出しちゃったよ。


店員は驚いていた。


「マジですか?」


「はい、メイド散歩5時間入りました」


「そうか、じゃぁ俺も支度しないとな」


「私も着替えないと」


このお店は変な店の癖にしっかりしている。


女の子が危ない思いしないように、気づかれないように店員がついていく。


そして危ない時には間に入る。


「あの、お待たせしました。ところで何てお呼びすれば良いのでしょうか?」


「北條東吾だから、北條でも東吾でも好きな方でよい」


「では東吾様、行きましょうか?」


「手を繋いでくれるのか?」


「お嫌なら離しますが...」


「嫌じゃない、寧ろ嬉しいが、その萌子さんは良いのか?」


俺みたいな醜い奴と手を繋いで歩くのは恥ずかしくないのか。


こんな美少年と手を繋いで歩けるなんて夢みたい。


しかも、これ東吾様がお金出してまで求めてくれたんだ。


考えられないよ。


「良いに決まってますよ...私は嬉しいですから大丈夫です」


「嬉しいのか、ならいいが」


手に汗かいてきたきた、彼女は本当に嫌じゃないのかな。


「それで、東吾様、これから何処に行かれますか?お食事、カラオケ何処でもついていきますよ?」


「何処でも?」


「あっだけどエッチな場所は駄目です」


顔が赤くなった。


本当に東吾様は可愛いな、私個人はそっちだってOKなんです。


だけど、厳しいルールがあるから、駄目なんです。


無ければ...私から...いえそれは不味いですね。


「そんなところに誘ったりしない、、そうだ食事でもしようか、よく考えたら朝から何も食べていない」


「良いですね、ただ食事の場合は東吾様の驕りになるんですが大丈夫ですか?」


「あぁ構わない」


「それで、東吾様、ここで食事をするんですか? ここは凄く高いですよ」


俺はさっき歩いている時に 橋の近くに高級そうなレストランを見つけていた。


多分、昔からの老舗なんだと思う。


俺だって少しはカッコよい所を見せたい。


「構わないさ 萌子さんお金には余裕があるから」


「そう、無理とかしてない、本当に大丈夫なの? 私安いものでも良いよ」


最初に1.1万円、オプションで5千円、更に散歩で7万5千円、合計9万1千円。


十万円近く使わせちゃった。


幾らお金があるからってどう見ても私と同じ位の年齢だ。


20代?下手したら10代かもしれない。


本当に大丈夫なのかな?


「俺は萌子さんみたいに綺麗な人に優しくして貰った事なんて無いんだ、この位はさせて」


「うううん、私は逆に、こんなに男の子に優しくしてもらった事がないよ?、夢みたいにしか思えないの」


「じゃあ、夢の続きを見ようよ」


「うん」


東吾様は無理して凄く豪華な物を注文してくれた。


簡単に切れるジューシーなステーキにサラダにデザート。


多分、東吾様、いや東吾くんは未成年だ。


ここまでの食事なのにワインが入っていない。


無理しちゃって。


こんな事されたら、私凄いいい女みたいじゃない?


こんなにブサイクなのにさぁ。


本当に好きになっちゃうよ。


その後、お話ししたり、カラオケにいったりして楽しい時間は過ぎていった。


あと3分で時間は終わり。


私はしたい事がある。


だけど、それは出来ない。


東吾君に迷惑を掛けるから。


「もうじき、終わっちゃうな」


「終わっちゃうね...」


「萌子さん、俺は貴方程、綺麗な女性は見たこと無い、これ程楽しい時間を過ごした事も無かった。これからも、ずっと一緒に居てくれないかな」


「東吾くん、凄く嬉しいけど駄目...あぁ聞かれちゃった」


「お客さん、当店は引き抜きやナンパはお断りなんですよ。ちゃんとお店に書いてあったでしょう? ただで済むと思うなよ」


「解っている。だから、最後のオプションを頼もうと思う」


「ガキが何を言っているんだ、なぁルール違反して何が解っているんだ、なぁ」


「100万だ、受け取れ」


「なんだ、これは」


「あんたこそルールをちゃんと読めよ、本番行為の強要、女の子を口説くような行為、引き抜く様な行為及びスカウト行為があった場合は100万円頂きます。それがルールだろう。張り紙に書いてあったぞ」


「ちゃんと違反と書いてあるだろが」


「あのさぁ、罰金が書いてある場合はその金額を払えば罰は受けた事になるんだぞ、交通違反だってそうだろう? 駐車違反しても罰金払えば罪は問われないだろう」


「何が言いたいんだ」


「だから、これは100万円払うなら、口説いても良いという事になるんだ。だからオプションと同じだろうが」


「そうか、、あの張り紙は昔から貼ってある、確かにそう書いてあるな」


「萌子さん、これで大丈夫だ。貴方が好きです。どうしようもない位にだから俺と付き合って下さい」


「ほ本当に私で良いの? 後で嘘とか言っても取り消しきかないよ?」


「そんな事は言わない...何時までも一緒に居て欲しい」


「うん、絶対に離れないからね」



「確かにルール違反にはならないな、だが、どうする店は辞めるのか?」


「はい、辞めさせて頂きます」


「そうか、じゃあな、俺はこの100万円を持ち帰って説明しなきゃならない。胃が痛いが、あの張り紙を貼ったのはオーナーだ文句は言えんだろう、、一応履歴書は処分しておくから安心するが良い....お幸せに」


「迷惑を掛けたな」


「あぁ仕方ないさ、ちゃんと筋を通したんだ、、後は任せておけ」


ブサイクな女に100万円...なかなか出来ないな。





.......


「なんて夢を、翔くん見たんだけど、凄い楽しかった」


興奮して東吾くんが話してきた。


ここまで興奮する東吾くんは珍しい。


「そうなんだ良かったね」


だけど、秋葉原にしてもステーキ屋にしても、まんま、僕の居た前の世界だ。


東吾くんには言えないけど、もし、東吾くんが僕の居た世界に行けたら....多分現実になる。


だって君は僕から見たら、君は金髪の王子様にしか見えないのだから。




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