第45話 IF 都市伝説の王子様

全てが憎くて仕方ない。


私は、誰もが羨むほどの美人だった。


だけど、より一層美しくなりたい、その願望から整形手術を繰り返した。


今迄、成功しかしなかったから、私は油断をしたのかもしれない。


必ず成功する...そんな根拠は何処にも無かった。


「貴方の美貌はもう完成しています、これ以上手術をする必要はないでしょう」


「煩い、お金なら幾らでも出すから、もっと綺麗にして頂戴、これ位では満足できないわ」


「ですが、もう何回も整形を繰り返していますから、手術に顔が耐えられるかどうか解らない...お勧めできません」


「もう頼まないわ、貴方みたいな藪医者に頼まない」


いつも手術をお願いしていた整形外科は私の手術を断った。


それでも、私はどうしても手術を諦められなかったから、他の整形外科を探した。


後から考えれば、いつもの整形外科の言う事は正しかった。


3件程断られた後、私は路地裏に汚い整形外科を見つけた。


ここも断れるだろう。


そう思っていたが、ここの病院はあっさりと私の手術を引き受けた。


今迄の病院とは違い、ここの医院長は自信満々だった。


「腕の悪い医者はそう言うでしょうね...ですが、私なら何回でも手術は可能です、納得のいくまで手術をさせて頂きます」


今考えれば、うさん臭かった。


大手の病院が出来ない事をこんな病院が出来る訳は無かったんだ。


手術は失敗して私は...美貌の全てを失った。


だが、ここで辞めておけば、これ以上の醜い姿にはならないで済んだ。


少なくとも人ではいられた。


手術を失敗した、医者は私に次の手術を勧めた。


「ここで辞めたら勿体ないですよ。これは綺麗にする第一段階...失敗ではありません、私を信じて後数回手術をさせて頂ければ、確実に美しくなります」


胡散臭い。


そう思ったけど、もう引き下がる訳にはいかない。


そして、私の顔は化け物となった。


医者に追求しようと思ったが、医者は無免許の医者だったらしく私の手術の後警察に捕まった。


幸い、お金は無事に帰ってきた。


そのお金を持って私は、いきつけだった整形外科に行った。


「だから、辞めなさいと勧めたんだ、手術は出来ませんよ、貴方の顔はもう限界を通り過ぎて崩れているんです.......諦めて下さい」


他の医者にも聞いたが...誰も私を治せる者はいなかった。


そして、私は容姿に引っ張られるように心も化け物になった。


私には妹が二人いる。


今、思えば妹たちに罪は一切ない。


ただ、姉妹のなかで私だけが醜くなったのが許せなかった。


ただの八つ当たりだ。


一番下の妹を押さえつけて口を裂いた。


妹は泣いていたが良心は痛まなかった。


二番目の妹の口も裂いた。


私は精神病院に入れられたが、そこも抜け出し、縫合された妹の口を再び裂いた。


私達に両親はいない。


妹たちは、こんな私でも愛してくれていたのだろう。


ここまでした私を警察に突き出す事をしなかった。


そして、妹達は私と同じような醜い裂けた口へと変わった。


妹達は私を訴えなかったが、醜い顔に耐えられなかったのか、、自殺した。


これで私は本当に独りぼっちだ...そして、人間ではなく本当の化け物になった。


私は、赤いコートを着て、マスクをつけて、右手に鎌を持ちながら電柱の横に立つようになった。


「私...綺麗」


「えっ綺麗だと思うけど?」


そりゃそうだ、マスクで私の醜い部分は全部隠れている。


しかも、私はスタイルも良い。


「これでも、綺麗?」


私はマスクを外す。


男性の多くは凍り付く。


そして、その相手を私は残虐に殺すのだ。


肯定しても、否定しても殺す、、私に出会ってしまったら、、確実な死しかない。


この日も何時ものように獲物を探していた。


後ろ姿の綺麗な少年をみつけた。


「私...綺麗」


少年は何も言わない。


最初から不審者扱いか...ムカつく...こんな美しい少年...私と違いさぞかし楽しい人生を歩んできたに違いない。


顔を切り刻んでやりたい。


だが...何かが違う。

他の人間の様に私に恐怖を覚えてないような気がする。


しかも何故か...私に対する目が...壊れてしまう前の私に対する男の様な目をしていた。


手が震える...こんな事は今迄無い。


マスクを外せない...外すのが怖い。


「これでも、綺麗」


マスクを外した。


さぁ、、怖がるだろう?


その恐怖したお前を私は...あれっ可笑しいな。


怖がらない...なんで。


「凄く...綺麗だ...所で、こんな暗闇で貴方みたいな綺麗な人が何をしているんだ?」


おかしい、おかしい、おかしい...、私を綺麗だって。


助かりたい一心でそういった奴はいた。


だけど、そいつの顔は恐怖で引き攣っていた。



それなのに、此奴は顔を赤くしながら、まるで綺麗な女性に本当に話掛けられたみたいに...嬉しそうな顔をしている。


これは、そう、私がまだ化け物になる前の美しかった女性だった頃...年下の男の子から告白された時にその少年がしていた目だ。


今、思えば、どんなに綺麗になっても、あんな風に本当に好きになってくれた人はいなかったな。


殺せない...


「何で、私の様な化け物に...そんな優しい目を向けるの?」


どうしても聞いてみたい。


「逆に聞くけど、何でそんなに美しい顔なのに化け物なんて言うんだ...正直、貴方程綺麗な人は見た事がない」


この少年は何を言っているの?


私は化け物なのよ。


「嘘、言わないで、こんなに口が裂けている化け物女なのに」


「裂けている? 確かに大きな口をしているけど...凄く綺麗だと思うのだが、、」


そんな事言わないで...嘘だと解っても...信じたくなっちゃうよ。


「嘘...だったら私に...キスできる? 出来ないハズよ」



これは夢なのか?


暗がりから凄い美女が出て来たかと思ったら、、俺にキスを求めてくるんだ...


何かの冗談なのか...それとも本当に夢なのか?


「俺みたいな醜い男が...あなたの様な美人にキスをしても良いのか?」


こんな、王子様のような少年が醜いなんて何の冗談なのかしら?


「私は、、貴方にキスして貰えたら...嬉しいわ」


「もう取り消しは利かないからな...チュッ」


俺はこの美人の頬っぺたにキスをした。


「嘘、本当にキスをしてくれたの?...だけど何で頬っぺたなのかしら」


優しいキス...学生の頃を思い出すわ。


「自分を大切にした方が良いぞ...俺みたいなブサイクじゃなくて...ちゃんとした人とするべきだ」


「そんな人いないわ...私を綺麗なんていう人は貴方位しかいないわ」


私は化け物なのよ? 恐れられこそすれ好かれる訳ないじゃない。


「俺をからかうのはよせ...貴方みたいな美人がモテないわけない」


「モテないわ...私からしたら貴方みたいな美少年が私に優しくする方がおかしいのだけど」


「からかうな、じゃぁ俺が...あんたと付き合いたいと言ったらあんたは付き合ってくれるのか?」


冗談はよせっていうの。


「えっ...普通につきあうわ...付き合わない訳ないでしょう? 何だったら結婚でもしてみる?」


こんな美少年には綺麗な時でも告白されたこと無い。


まぁ未成年相手に、結婚は言い過ぎだと思うけど?


「そこまで言うなら信じるけど...もう取り消し利かないからな? いいんだな?」


こんな美人に告白されるなんて夢としか思えない。


「そっちこそ、嘘とか冗談なんて言わないでね...そんな事いったら殺すわよ!」


少しヤンデレなのかな?

美人が言うとこういうセリフも可愛く聞こえるな。


「本当に俺でいいんだな、気が変わると怖いから、直ぐに婚姻届け書いて貰うぞ...本当に良いんだな?」


「書くに決まっているじゃない...貴方こそ、本当にいいの?」


「いいに決まっている...俺はこれでもブサイクなのを除けば優良株だからな、愛してくれるなら、絶対に幸せにする...だから俺から離れないでくれ!」


「わかったわ、妻として頑張る...だから幸せにしてね...貴方!」





......


「なんて夢を、翔くん見たんだけど、凄い楽しかった 年上の美人のお姉さんが素敵だったな」


興奮して東吾くんが話してきた。


最近、良く東吾くんは夢の話をしてくる。


「そうなんだ良かったね」


だけど、これ僕のいた世界の都市伝説の口裂け女の話だよな。


東吾くんなら...口裂け女でも口説いちゃうのか?


だけど、秋葉原に、都市伝説の口裂け女...もしかして東吾くんは夢で僕のいた世界に行ったのかな。


そんな事はないか...

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