第42話  貴子への相談

学校で白百合さんに相談された。


奈々子ちゃんと母親が凄く揉めているらしい。


まさか実の母親が如何に顔に傷を負ったと言っても娘を追い出そうとするなんて僕には信じられなかった。


「それ本当なの? いくら何でも自分の娘を追い出すなんて」


「うん、そうなりそうなの、病院代は払ってあげるのが私の最後の愛情だって言っているから」


「酷いね」


「うん、私も酷いと思うけど、自殺しようとしたことが気に食わないみたい...それに奈々子があんなになっちゃったから...」


「それで、奈々子ちゃんはどうなるの?」


「多分、本当に追い出されると思う」


「行くあてはあるのかな?」


「無いと思う」


余計なお世話かもしれないけど...どうにかしてあげたい。


僕の頭で考えると相談に乗ってくれそうな人は金剛家か北條家だ。


色々考えた挙句、僕は貴子さんに相談しようと思った。


休み時間に僕は東吾くんに話をしにいった。


「東吾くん、貴子さんに相談したい事があるんだけど、暇な日を聞いてくれない」


「えっ、遊びに来てくれるの?助かるよ、翔くんは顔パスって言っていたから何時でも大丈夫だよ、それにうちの母さん達なら、翔くんが遊びにくるって言ったら総理大臣との会談だってキャンセルすると思うよ」


良かった。


翔くんには言えないけどあれから母さんは毎日


「黒木君はいつくる?」


そればっかり聞いてくるし。


姉さんも美優も毎日聞いてくる。


正直怖くて仕方なかった。


「今度、誘ってくる」そう言うと、


「今度とは何時なの? 時間の設定も出来ないの?」


そう言い返される。


本当に良かった。


「翔くん、早速、母さんに聞いて見るね、間違いなく大丈夫だけど」


「もしもし、母さん、今日翔くんが遊びにきたいって言うんだけど良いかな?」


「東吾、母が断ると思うのですか? 黒木くんとの約束は最優先、来たいと言うのなら、私の予定なんて聞かなくていいです。 地球の裏側でも飛行機で駆けつけます....私は基本、家から出ませんけどね」


「では、放課後連れて行きますので宜しくお願い致します」


「リムジンを回すように伝えておきます...東吾、流石です」


「今日になってしまったが大丈夫か、翔くん」


「ありがとう、東吾くん、いきなりでごめんね」


「いや、うちの家族は、翔くん中心だから、いつ来ても大丈夫だ」


「そうなの」


「あぁ平気だ、俺に話なんてしなくてもいつ来てもらっても良いぞ」


メイドも含めて誰1人歓迎しない者は居ないのだから。


リムジンで迎いが来て、僕は北條邸にいる。


前と同じ様に三人の美しいメイドが迎えてくれた。


「「「黒木様、いらっしゃいませ、精一杯奉仕させていただきます」」」


いつ見ても綺麗だ。


こんなメイド達がいる東吾くんが羨ましい。


「どうしたんだい、翔くん」


「いや、いいなぁと思ってさぁ、こんなメイドさんに囲まれて生活している東吾くんが羨ましくて」


「翔くん、、それは本気で言っているのかい? 」


母さんや家族のお気に入りでなければ、今すぐ普通のメイドに変えて貰いたい。


湯浅萌子、みたいな美人が良いに決まっている。


何が好き好んでブサイク三人に囲まれていなくては、いけないんだ。


だけど、翔くんは本気で言っているんだよな。


「翔くんが気に入っているなら、引き抜いて貰っても構わない」


いや、寧ろ引き抜いてくれないかな。


「無理だよ、僕は保護施設にいるんだから、お金も家も無いんだからさぁ」


「君は本当に価値が解らないんだな、、翔くんは本当に常識に欠けるよ」


「常識?」


「そう、君程の美少年なら無料...いやお金を払ってもメイドになりたい子は腐る程いるって事だ」


「流石に、冗談だよね?」


「そう思うか? 園崎ちょっと」


「なんでしょうか?」


「いや、翔くんがメイドのいる生活がいつかしたいって言うんだけど...園崎ならどんな条件を提案する? あくまで架空の話だが」


「黒木様のメイドですか? 黒木様のメイドになれるなら...そうですね、持参金を幾らか用意して...後は毎月1000万円位までなら払いますよ...あっこれ黒木様がそれしか価値が無いって事じゃなくて、私の貯金から考えるとその位しか出せない...それだけですね」


「えっ、それ本気ですか? 給料を払うんじゃなくて...何でお金が貰えるの?」


「翔くんは自分の価値が本当に解ってないな、君と一緒に暮らせるなら女なら、多分自分の全てを差し出すと思うよ?...そうだよな園崎?」


「差し出しますね。もし、本当にメイドが欲しい、そう思ったら、この園崎にお願いします。直ぐにでも一緒に暮らして、生涯尽くしますから」


「なぁ本当だろう?」


「本当なんだね、驚いた」


「それで、いつから契約します」


「園崎...これはあくまで架空の話だ、言っただろう?」


「そう...ですね、ですが、黒木さんなら何時でもウェルカムです」


「ありがとう、何時かお願いするとしたら必ず園崎さんに声を掛けます」


「本当ですか? 私、待ってますからね」


「はい」


「翔くん、行こう母さんが楽しみに待っているから」


「そうだね、お願いするのに待たせるのは悪いよね」



「母上、翔くんを連れてきたよ」


今日の翔くんは母さんに頼みがあるのだから、母上と言わなければな。


俺は、プライベートなら母さん、公式な話では母上と呼ぶようにしている。


「東吾、黒木くん関係の時はすべて母さんでいいわよ?」


「そうですか、それでは俺は席を外しますね」


東吾くんはすぐに立ち去った。


一緒に聞いて貰っても良かったのに。


「ところで黒木様、いや友達だから、黒木君と呼んでも良いかしら」


「好きに呼んで貰って良いですよ」


「それじゃ...とりあえずは黒木君で呼びます、今日は黒木君は何か相談があるんでしょう?」


「ええ、実は貴子さんの所でメイド、他の仕事でも構わないのですが、住み込みの仕事ありませんか?」


「まさか、黒木君が働くの?...な訳ないですね、、確かにうちは人手不足だから1人どころか、何人でも雇えますが、その相手が仕えるのが私で良いかどうかですね、私や家族を怖がらない、それさえクリアできるなら、黒木君の推薦なら...雇いますわ、住み込みも問題ありません」


「ありがとうございます、そのなんて言ってよいか」


「良いのですよ...実は手紙をしたためてあります」


「手紙ですか?」


「ええ、心細いでしょうから、すぐに白金に届けさせる事にします。来るかどうかは彼女次第です」


「ありがとうございます...ですが、貴子さん、もしかして奈々子さんについて知っていました」


「ええ、私は貴方の女神ですから、何でも知っていますわよ」


この人には叶わない、本当にそう思う。


私は、黒木君を見張らせている。


彼が私を女神と呼んだあの日から、黒木君が困った時にすぐに対応できるように北條の手の者に見守らせている。私の部下は警察よりもはるかに優秀だ、だから何でもわかるわ。


勿論、奈々子さんの事も事前に知る事が出来た。


まだ、逢ったことは無いが奈々子さんは私にとって好ましい人物だと思う。


まずは何よりも私達並みに醜くなった。


自分も化け物みたいになったのだ私達を怖がらないだろう。


そして、彼女も黒木君を好きだという事だ。


それならば、ガールズトーク(ほとんどが黒木君の話)も出来る。


更に彼女は黒木君の顔見知りだ、黒木君が顔を出す可能性が少しは上がるだろう。


「貴子さんって本当に女神みたいですね、それで僕は女神様に何を献上すれば良いのでしょうか?」


「何もいりませんよ、ただ貴方が顔を出してくれることが何よりも嬉しいのです」


「貴子さんに会う事は僕だって凄く嬉しいです。だけど、少しは恩返しさせて下さい。そうだ、夕飯でも作りましょうか?」


「夕飯? もしかして手作り料理を作って下さるのですか?」


「えぇ、急に来たから食材も買ってきてないので、食材は使わせて頂きますが」


「そんなの気にしないで良いです、何でも使って下さい」


その後、厨房を借りて僕はカレーライスとサラダを作った。


出来は余り良いとは言えなかったけど、皆んなに好評だった。


だけど、メイドさんが主人を押しのけてお代わりするのはどうかと思うが...気にしないようにしよう。


ガツガツと食べ終わった後に「あーん」を忘れていた事を思い出して少ししょげていたけど仕方ないと思う。もうカレーも無いし。


北條邸は僕にとってまさに天国だ、だけどここに永く居ると僕は駄目になってしまうかも知れない。


居心地が良すぎる。


此処には僕の欲しい物が全部有る。


後ろ髪を引かれるように僕は帰る事にした


だが、ここを天国だと思っているのは黒木だけ。


世間一般ではここは化け物屋敷なのだから。






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