第37話 東吾くんは生きる
最近、俺には親友が出来た。
名前は黒木翔って言うんだ。
そいつは物凄く不思議な奴だった。
そいつは物凄く美しいくせに何故かブサイクばかりを好きになる。
しかも、学園一美しいと言われる...湯浅萌子がモーション掛けたのにあっさりとかわしていた。
ブサイクなら誰でも愛するのか?
そう思ったが、そうでは無かった。
彼なりの特別なルールがあるようだ。
俺は中途半端な化け物だ。
俺から見たら、母や姉や妹は恐ろしくて仕方ない化け物なんだ。
醜いし、気持ち悪いし...怖い。
北條が世界一の金持ちで凄いと言われても
欲しい物は何でも手に入ると言われても
その幸せすら、家族を見ると一瞬で失われるんだ
もし、俺が美形だったら、いやせめて普通であったなら外に幸せを求める事が出来たかも知れない。
だが、俺もブサイクなんだ。
中途半端なブサイク...他人から見たら化け物。
男という絶対的な優位に生まれたのに...相手にされないブサイク。
誰も傍にいてくれない程のブサイク。
笑ってしまうよ......家族を醜いと思って他の者と仲良くなりたい。
だけど、他の人からはブサイクで気持ち悪い、と思われる存在。
俺は何で中途半端に生まれてきたんだろうか?
家族と同じ位の化け物だったら、諦めもついたのかも知れない。
そうしたら、母や姉や妹とも仲良くなれたのかも知れない。
逆に翔くんの様に...いやそれは贅沢だ...普通の男に生れたら、学校で友人を得て幸せだっただろう。
俺は化け物を嫌いながら、人には嫌われる中途半端な化け物なんだ。
何処にも生きていける所はない。
俺と同じ位ブサイクな奴と言えば、翔くんの彼女達と家の三メイドだ。
だが、、俺にとって此奴らは化け物だ、家族程では無いが気持ち悪くて付き合いたいとは思わない。
勿論、此奴らだって俺を気持ち悪いと思っているだろう。
自分がどんなに気持ち悪く、ブサイクでも相手にブサイクを望んでいる訳では無いのだ。
実際に俺は湯浅萌子の様な美少女が好きだし、此奴らも翔くんが好きなのを考えればわかるだろう?
何が言いたいのかと言えば、凄く孤独なんだ。
中途半端だからどちらにも慣れない。
この孤独が永遠に続くかと思うといつも死にたくなる
だが、そんな孤独な俺の前に彼奴が現れたんだ。
まるで、この世界全てに愛されたような男、黒木翔が...
そして、そいつは俺の親友となってくれたんだ。
しかもそいつは俺のことを東吾くんと呼んでくれる。
だから、俺は敬意をこめて翔くんと呼んでいる。
俺は...翔くんと出会わなければ...多分孤独に耐えられなくて自殺したかも知れない。
翔くんの男の友達は俺しか居ない。
うん、確実に親友と言えるだろう。
そんな翔くんが俺の家にきてくれた時の事だ。
翔くんはこの屋敷の人間全員と仲良くなれそうだな。
奇跡だな...本当に良かった。
不思議な事に化け物にしか見えないけど、俺にも家族を思いやる気持ちが僅かにあるその事に気が付いた。
翔くんと幸せそうな家族を見たらそう思ったんだ。
どんなに怖くても醜くても家族だから。
本当に、良かった...これで...? これで何だ?
これで、俺も死ぬことが出来る。
そうか、俺は死にたかったのか?
自分が惨めでも、どんなに辛い人生でも生きていたのは家族が心配だったから...死ねなかったのか?
だから、幸せそうな家族を見た時に、死にたくなったのか?
俺は...死なないよ。
だって、俺が死んだら翔くんが悲しむだろうからさ。
それに女版、黒木翔が現れるかもしれないじゃないか...まぁ現れないかも知れないけどさぁ。
まずは...白百合チャレンジだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます