第28話 涙
私はその後も、黒木君相手に何度か練習を重ねた。
黒木君はまるで錆が落ちるようにどんどん強くなっていった。
もう既に私相手に古武術ではなく剣道でも負けなくなっている。
本当に素晴らしい男性だと思う。
姿形だけでなく、中身も一級品だ。
最近になって、少し彼の事が解ったような気がする。
彼にとって外見は全く価値が無いのかも知れない。
白百合京子、黒木君の第一彼女だ。
彼女は確かに群を抜いて醜い。
彼女よりブサイクな人間は探すのは難しいだろう。
金剛里香 黒木君の第二彼女で私の親友だ。
彼女は白百合さん程でないがかなりのブサイクだ。
白百合京子が日本式ブサイクだとしたら金剛は西洋式ブサイクだ。
私は二人をどう思っているのか聞いた事がある。
白百合京子が完璧美少女で、金剛里香が究極お嬢様だそうだ。
どう考えてもおかしい。
じゃぁ私はどうなのか聞いてみた。
クールビューティでボーイッシュなんだそうだ。
嘘だとしても言い過ぎだ。
その事を今日も道場に来ていた邪魔な2人に伝えた。
2人とも凄く顔が赤くなった。
私は二人を茶化していたら、黒木君が急に真剣な顔になった。
「だったら、僕も目を瞑るので三人も目を瞑って暫くお話しませんか?」
黒木君が言うんだ、誰も反対しない。
15分位目を瞑った状態で会話をした。
私を含み三人とも驚きを隠せない。
白百合さんの声やイメージが本当に美少女にしか思えなくなってきた。
本当に金剛は貴族令嬢のようだ。
「本当ですわね、白百合さんは本当に可愛らしい感じに思えて、東条さんは確かにクールビューティーですわね」
「黒木君の言う通りだぁ、金剛さんって凄いお嬢様にしか感じられない。確かに東条さんはクールビューティーって感じかな」
私と同じに感じたみたいだ。
「それが僕にとっての皆んなのイメージなんだ。」
そうなのか、確かにこのイメージが黒木君のイメージだとしたらあの対応も解る。
うん? ていう事は私のイメージもこの通りなのか?
まずい、顔が赤くなってきた。
だけど、これではっきりした彼はやっぱり外見で判断は一切しない。
寧ろ、外見は一切考えていない?
外見で無く中身で見る。
それは正に綺麗ごとだ、口にする偽善者はいても本当にそれを実践している者はいない。
だが、ここに本当にそういう生き方をしている人が居る。
「本当に...そんな風に思ってくれていたんだ...」
「本当にそう思って頂けていたんですの...」
あぁーあボロボロ涙流してみっもないな。
あれ、私も、、あれっ泣いているんだ。
あんな事、綺麗に生まれた女が一生懸命尽くした末に、ようやく言われるような言葉だ。
泣いても仕方ないよな。
「うん、僕には三人とも凄く綺麗な女性にしか感じられません」
この追い打ちはズルい、、ますます泣き声が強くなった。
どこまで私達を泣かせれば気が済むんだ、黒木君は。
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