第12話 白百合京子 金剛里香 ~二人目の恋人~
私は新入生の為のシオリ制作を口実に黒木様を作業に誘いましたの。
黒木様がいらっしゃるなら二人は邪魔ですので先に帰らせましたわ。
二人っきりで作業していると今までと全くちがい至福の時間になりますわ。
前の時にはジュースを奢って頂いたので、今度はわたくしの方でジュースと御菓子をご用意いたしました。
「黒木様はもう付き合っている人はいるのでしょうか?」
「彼女の事?いますよ」
えっいらっしゃいますの?
思わず動揺してしまいましたが、それはそうですわね、ここまでの美しい方に交際相手が居ない方が可笑しいですわ。
「そうなのですか? どんなかたですの?」
悔しいですが、さぞかし美しい方なんでしょうね。
「白百合京子さんっていって凄く可愛いんです。」
可愛いい羨ましいぃ あれ、白百合京子ってあの方ですわね。
私、以上のブサイクな方なハズですわ。
「白百合京子さんって前髪が揃っていて、古風な日本人みたいなイメージの方ですわね」
同じ名前の方は居ないハズですわ。
悪口を言わないのであればこんなイメージで良いはずですわね。
「流石、生徒会長良く知っていますね。そんな感じですね。日本人形みたいで凄く可愛いんです。」
かっ可愛いいのあれが? 呪いの市松人形が?
だったら、私にも可能性はありますわね。
「そんな風に言われると妬いてしまいますわ」
「金剛、、さんもフランス人形みたいでお綺麗ですよ。白百合さんが日本美人なら、金剛さんは西洋美人です。」
「そ、そうですか?」
白百合京子と並べられるのは余り嬉しくないですが、美人と言われるのは嬉しいですわね。
「本当に美人ですよ、、先輩は」
「余り謂れ慣れていないので照れてしまいますわ」
フランス人形、西洋美人。凄く心地よい響きですわ。
こんな事言われたら、ときめいてしまいますわね。
「それは見る目が無いからですよ。僕から見たら凄く素敵な人にしか思えません。まさに憧れの生徒会長、そう思いますよ」
これですわ。これこれ、私くしはこう思われたかったのですわ。
その為に、一生懸命勉強して、一生懸命生徒会の仕事を頑張ってきたのですわ。
「そんな事はありませんわ。私なんかまだまだですのよ」
「そうですか、それでも何にでも一生懸命な金剛さんは素敵です。」
「ありがとう」
ありがとうしか言えなくなってしまいましたわ。
だって、わたくしが言って欲しい事全部言ってくれるんですもの。
油断したら泣いてしまうかもしれませんわね。
黒木様が、私を見てくれる、なら他からもうどう思われようと気になりませんわ。
嬉しくてしょうがありません。
「あの、黒木様お願いがありますの」
「はい?」
「あの、もしも、もしもですよ、白百合さんが認めてくれたら、わたくしも彼女にして貰えませんか?」
「金剛さんはそれで良いんですか?」
「どうして、そんな事を聞くのですか?」
「正直言って僕は凄く独占欲が強いんです」
「独占欲? そうは思えませんが?」
「はい、例えば白百合さんが他の男性と仲良くしたり、金剛さんが他の方と仲良くしてたら凄くやきもちを焼くと思う」
「そうなのですか?」
私と仲良くしてくれる男なんて絶対にいませんわね。
もし、居たとしても黒木様を知っちゃったら、他の男なんて見えなくなりますわよ。
「確かに男が少なくて一夫多妻という事は解っているんでけど、なかなかふんぎりがつかなくて」
「だったら、一度、白百合さんとお話しさせて頂けませんか? それで白百合さんがOKしたら考えてくれる。これならどうでしょうか?」
「わかりました...それで良いなら...」
この世界で一夫多妻は普通の事だ。
男性は嫌でも5名以上の女性を娶らなければならない。
その為、結婚を考える時には一緒に暮らす事になる、他の妻の存在も気にしなくてはならない。
実際に第二婦人と夫が仲良くなりすぎて、第一婦人が執拗に第二婦人を虐め続けた例もある。
そうならない為にも恋人の時期から一緒に過ごすのは理想的と言える。
黒木程の男性なら20人を超える人数と結婚してもおかしくない。
相手が美形なら躊躇したかも知れない。
だけど、自分と同じような白百合京子なら案外仲良く出来るかも知れない。
そう、金剛里香は思っていた。
【次の日の昼休み】
今日も楽しく黒木君とお昼を過ごしていると他の女が近づいてきた。
生徒会長の金剛さんだ。
「こんにちは、白百合さん」
「こんにちは、金剛会長、何か御用ですか?」
普段であれば別に気にならない、むしろ金剛会長は私に普通に話してくれる数少ない人だ。
だけど、今は...邪魔されたくない。
一分一秒でも、黒木君と二人っきりを楽しみたい。
だから、返事は少し冷たい感じになっていたかも知れない。
「黒木君と一緒で構わないから少しお話がしたいのですわ」
多分、例の話だ。
「あの、僕は席を外した方が良いですか?」
「一緒で構いませんわ」
「私も黒木君が一緒の方が良いと思う。」
「そう」
「所で、今日はやっぱり、黒木君についてのお話しですよね」
「そうですわ、黒木様についての事ですわ」
「大体、の事は何となく解りますが、一応教えてください」
僕は口を挟まない方が良いだろう。
「黒木様の第二彼女になりたいので許可がほしいのですわ」
「第二彼女...ですか? 第一彼女じゃなくて?」
「正直、貴方じゃなければ押しのけても第一彼女を目指しますが、白百合さんなら第二で充分ですわよ」
この世界では、第一と第二では大きく違う。例えば結婚した場合、第一婦人に許可を得なければ第二婦人とは結婚できない。
最も、これは二人ともという意味であって、どっちか1人で良いなら、第一婦人と離婚して第二婦人を取る事も男には出来るのだが。
それでも一夫多妻制においては第一婦人と言うのは一種のステータスだ。
これと同じ事が恋人同士でも言えて、結婚生活の縮小版がこの世界の恋人関係と言える。
「私なら...ですか? 何故ですか?」
「だって、貴方は私の知っている限り、凄い努力家なんですもの。それに私は貴方と一緒に居て楽しそうにしている黒木様も好きなのですわ」
「それは、大雑把に言うと黒木君と一緒に私も気に入ってくれたという事なの?」
「そうですわね。それに、恐らく黒木様にとっての一番は白百合さんなのですわよ。恐らく私以外の誰であってもそこは不動だと思いますわよ」
「......」
そうか、黒木君の一番は私なんだ。
まずい、顔がどうしても赤くなっちゃうよ。
「だから、このお話は、白百合さんが駄目っていうのであれば諦めるそういう話しなのですわ、ですがもし許して頂けるなら、私くしもその輪の中に加えて欲しいのです。」
「そういうお話しでしたら、、断れる訳ないじゃないですか。 黒木君が多分、私が良いって言えば良いよ位の事は言っているのでしょう?」
「その通りですわ。だけどあくまでも白百合さんが良いならの条件つきなのですわ」
「仕方ない...良いですよ」
「本当に良いの白百合さん」
「まぁ、嫌かどうかと言えば嫌ですけど、、遅かれ早かれ黒木君はモテるからこうなると覚悟はしていたし...相手が金剛さんなら...良いですよ」
「ありがとうございますわ」
「私だって、相手が金剛さんじゃ無ければもっと考えました。だけど一生懸命仕事をしている、会長なら、良いですよ」
「私くしも黒木様程ではないでが白百合さんも大好きですわ」
「私も黒木君程ではないですが金剛さんも好きですよ」
この世界の男性は複数の女性と結婚するのが普通だ。
それならば、自分が好きな人で固めた方が良いに決まっている。
だが、殆どの男性は女性が嫌いなのでお金を貰って結婚したり、形だけの結婚をして放棄している。
そういう意味では仲の良い仲間で固まって結婚するのは望ましいし、ストレスにならない。
そういった意味では白百合と金剛のような関係は正に理想の関係と言えた。
「それでは、白百合さんの許可も得ましたので、告白させて頂きますわね。 黒木様、私と付き合って下さいませ」
「はい、僕は白百合さんと同じように金剛さんも大好きです。付き合って下さい」
「...思わず気を失ってしまいましたわ、、ありがとうございます」
「金剛さん、そのうち慣れると思います。黒木君と付き合うとこういうのが毎日になるので」
この世界では、はっきりと好きという男は少ない。
又、男性が付き合ってという事も殆ど無い。
例えば一般的な物であれば
女 「私と付き合って下さい」
男 通常「ああ」、良いパターンで「宜しく頼む」
こんな感じでだ。
「これが毎日なのですか? まさに夢の様な毎日なのですわ」
「楽しいのですが、汗はかきっぱなしで、心臓はドキドキしっぱなしです。制汗剤とタオルは用意した方がよいですよ」
「そうですの? 有難うございます」
やっぱり白百合さんは優しくて良い子だ。
私はそう思った。
他の女なら、こんなアドバイスはしない。
「あの、そろそろ、ご飯に戻りませんか? 僕お腹すいちゃって、沢山あるから金剛さんも一緒に食べようよ」
「良いのですか?」
「私の分も食べていいよ」
そして、金剛里香は二人のあーんを目撃する事になった。
それを見て羨ましいと思っていたら、二人してあーんをしてきた。
私はオズオズと口を差し出した。
黒木様、白百合さんの順に食べた。
私もお返しとばかりに二人にあーんをした。
これって何の小説?
そう言える程に充実した時間だった。
周りの女子は始終、物凄い顔で睨んでいたが白百合さんと同じように気にしなかった。
こうして見ると黒木様と付き合えたこともそうだが、白百合さんと友達になれたのも嬉しい。
彼女となら黒木様抜きにしても親友になれたかも知れない。
一瞬、二人も恋人が出来た。そんな錯覚がした。
彼女とならこの先も旨くやっていけるだろう。
そう思うと、これからの楽しい毎日を思ってしまい迂闊にもよだれを垂らしてしまった。
そんな私を白百合さんは「解るよ」そんな感じの生暖かい目で見ていた。
黒木様は不思議そうな顔で見ていた。
ただ、これだけでも夢みたいなのにこれですら、まだ始まりに過ぎない事を私は知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます