ペタロイド=ボトム
前任者は失敗した。けど、オラなら上手くやれる。
オラは学もないけんども、畑仕事と世の中の仕組みはよーく知ってる。
奴らはなーんにも知らなくて、んで前任者は世の中の仕組みを知らなかったんだ。
だから畑さに挽き肉を撒くとか奴らに言われて、前任者はハイかイーエしか言えなかったから失敗したんだ。
そりゃあ、肥やしや肥料に死体混ぜる事もあるんけども、その前に肥溜めで発酵させんねばならねぇ。それしないでやっても土が過れちまって育たないだけでなくって疫病まで広がっちまう。
それを馬鹿正直に言ってイーエした前任者どもはその場で挽き肉になった。
スンバラしいお考えですぅとハイした前任者は疫病と飢えで死んでった。
だけんどもオラの、オラ達の答えは違う。
スンバラしいお考えですぅとハイしておいて実際はイーエするだ。
奴らが見る街道沿いの畑んだけ挽き肉撒いて、裏の方や森に隠した畑は例年通りやってやる。そこから採れた分を奉納して帳尻合わせ、これで生き残れる。
一番の畑がダメになるんは痛いけんどもダメとわかってんなら世話も種まきも不要だ。その分、裏で頑張ればいい。
例年通り、税収逃れ、お上から奴らに変わってもおんなじ、結局世の中、上手く立ち回ったもん勝ちだぁ。
カーンカーンカーン。
鐘の音、奴らお見目の合図、行かねば。
死体畑、見下ろすあぜ道の上に立派な馬、その上に乗ってるチンチクリンが奴だ。
その前にみんな土下座して並んでた。その端にオラも加わる。
あんなのに跪いて誇りはないのか言われんども、頭を下げるぐらい、服に土が付くぐらいで命が助かんなら安いもんだ。
「これはこれはこのような田舎までわざわざお越し頂いて、今日はどのような御用向きでしょうか?」
村長のひょーじゅんごも様になってきてて、奴の扱いももう慣れたもんだぁなぁ。
パチン。
ギャ!
……なんだぁ?
「お前たち、バレないと思っていたのか」
「あのぉ、なんのお話で」
「誰が顔を上げていいと言った!」
パチン。
ギャ!
「畑だ! 貴様らわざわざ時間をかけて教えてやったスペシャル農法を全然やってないじゃないか!」
な、バレてた!
だけどもなんでだ? 畑知ってるのは身内だけ、もし密告しようものならそいつも一緒に挽き肉になっちまうとみんな知ってる。なのになぜ?
「見ろ! ステータスオープン!」
なんか叫んで手を振り回して、指で宙を突いたり、何やってるんだ?」
「ここだ! 森の中に3ヘクタールも! こっちにも! あぁなのにこっちには種子さえ巻いてないじゃないか!」
パチン。
ギャ!
「お前達がやったのは! やらなかったのは殺人だ! 貴様らが古い慣習に囚われて未来の子供達を飢え死にさせるんだ!」
パチン。
ギャ!
パチン。
ギャ!
ダメだこりゃ、いよいよおかしくなっちまった。
こいつは人でねぇ、大火事とおんなじ厄災だぁ。
厄災相手には、逃げるしかねぇ。
パチン。
ギャ!
今だ!
立ち上がって走り出す。他もいっしょ、バラバラに、上手く誤魔化せれば一人ぐらいは生き残れんっと!
転んだ。足、からんで、何? 骨? 腕の? 挽き肉ですらねぇでな。
パチン。
ギャ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます