第18話 元気さが足りておらんのじゃ
──次の日、昼休みの教室。僕は絵馬に願い事を書いた雪丸という人物を探していた。確か……彼女は窓際の後ろの方にいるんだっけ……。
「……あ」
いた。黒髪ウェーブのかかった髪をしている、いかにも大人しそうな彼女は、自分の机で弁当を食べていたんだ……もちろん1人で。彼女が雪丸で間違いないだろう。そう思った僕は、早速彼女へ声を掛けたんだ。
「食事中にごめん、ちょっといい?」
「…………えっ? え、えっと……米村君……だよね? な、何かな……?」
雪丸は困惑しつつも、返答してくれた。まさかこんな目立たない僕の名前を覚えてるなんてな。彼女は相当記憶力が良いのだろう……思った瞬間、左手首が一瞬傷んだが……多分気のせいだろう。僕は続けて彼女に話しかけたんだ。
「ああ。あの雪丸……さんって新葉神社で絵馬書いたことある?」
「……!?」
聞いた途端、彼女は目を見開いて驚いた……同時に食べてた物を詰まらせたのか、ゴホゴホと大きく咳き込むのだった。
「大丈夫?」
「……っ! な、どっ、どどどどうしてそれを……!?」
「えっと、まぁ何というか……色々訳あって、絵馬の願いを叶える手伝いをしててさ。とりあえず放課後、神社に来てくれない?」
僕は精一杯の笑顔を見せて、彼女にお願いした。それが功を奏したのか、雪丸は頬を赤らめながら、小さな声で。
「……分かりました。でも、絶対に他の人に言わないでくださいね……?」
そうやってお願いしてきたんだ。僕はその言葉に頷いて、彼女の元から立ち去った……直後、脳内にミミハ様の声が流れてきたんだ。
『……なぁ、春よ』
「何だよ。学校ではあまり話しかけるなって言ってるだろ」
『いや、それはすまんのじゃが……もう少し、彼女に優しく話しかけることは出来んかったのか? 後半の方はもう、完全に弱み握って悪いことしようとしている奴にしか見えんかったぞ』
「そんなアホな……結構気を付けて話しかけたぞ?」
言葉遣いも相当気を付けて、喋ったつもりなんだけど……まだ足りないって言うのか? それとももっと笑顔が必要だったのか……?
『やはり自覚無しじゃったか……あのな、春には元気さが足りておらんのじゃよ』
「元気さ?」
『うむ。いきなり、しかもよう分からんヤツから淡々と「神社行ったことある?」なんて聞かれたら怖いじゃろ。恐ろしいじゃろ。ストーカーだと思われるじゃろ』
「そこまで言う?」
でもまぁ……確かにミミハ様の言う通りかもしれない。普通に僕が逆の立場だったらガン無視するだろうし、約束の場所なんか絶対に行かないだろうからな……思いながら僕はもう一度雪丸の方を見た。そしたら丁度彼女も僕の方を見ていたのか、目が合ってしまったんだ。
「……」
「……!!」
そしたらすぐに視線を逸らされてしまった……あれ、ひょっとして僕、相当警戒されてる? これ大丈夫か?
『……春、お主が望むなら、心を読む技を教えてやっても良いぞ?』
「いや……それはまだいいよ。もしそれが使えるようになったら、人間不信になりそうだもん……」
確かに人の心を覗くのに興味はあるが……それが使えるようになったら、僕はずっと使い続けるだろう。そして人の知りたくないところまで知って、今以上に人と関わることを避けるようになる……ところまで未来が見えた。だから僕がそれに手を出すときは、本当に最終手段だと思うんだ……。
『そうか? 人間って、お主が思っとるよりも良い人が多いんじゃぞ?』
「それは君が、神社に来る人だけしか見てないからだよ」
『ふぅん……そういうものなのか?』
「ああ」
ミミハ様はそう言った後、静かになった……ま、とりあえずやることはやったし、大人しく放課後を待とう。そう決めた僕は自分の席に戻って、更新されたウェブ小説を眺め……昼休みの時間を過ごしたんだ。
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