第3章:他がための復讐

第12話

(1)ヴィラン


 深淵の十祭司は雇い主の下に集まっている。

「一体、どうしたことか! ヒーロー専門の殺し屋と聞いて呆れる。なんだ? このザマは?」

 雇い主であるカルマは机を叩き怒鳴る。顔中包帯だらけのカルマの怒りに満ちた視線は、十祭司達に向けられる。といっても全員ではない。そこには死んだリッパー、ダンサーに、リスクとメタルの欠いた6人だ。

「取り乱すな。仕事はきちんとこなす」

 まったくカルマの視線を物ともせずにスナイパーは静かに言う。

「ふざけるな! 無面を殺すどころか。ここの場所まで知られたんだぞ」

 顔に痣を作っているエスパーを非難するように見る。

「仕方がないだろう。こちらもできる限りはした」

 取り付く島もないエスパーにカルマはさらに苛立つ。そんな時に笑い声が聞こえてくる。じっとりとした、耳に残る笑い声だ。


「場所を知られたのは好都合だ」


 笑いながら近づいてくる男の顔には悪魔のような仮面。リスク、そうミラーだ。

「なぜ貴様がここにいる?」

「まったく酷いぜ。俺だけ呼ばれない~」

 ミラーの笑いにその場にいたほとんどの者が顔をしかめた。まるで汚い物でも見るかのように蔑みの眼差しを向けている。しかしミラーは気にすることもなく話し続ける。

「まあ、話を戻そうじゃないか。無面にここの場所が知られたのはむしろ好都合。下手に考える必要がなくなる」

「どういう意味だ?」

 カルマの問いにミラーは嬉しそうに笑う。

「そりゃぁ。そりゃ~、奴がここに来るのが分かるからさ。明日にでもここに乗り込んでくる。正面から堂々と」

「なぜそこまで言える」

「そういう奴だからさ。俺には分かる。あいつの考えていることは分かるのさ。なんなら賭けてみるか?」

 皆の口は開かない。ミラーの言っていることはあながち全てが間違いとは言い切れないからだ。だが、丸々信用するわけにはいかない。ミラーは彼らの中でも何を考えているのかわからない。危険値の高い男だからだ。

「な~に湿気た面してんだぁ? さぁ、笑えよ。笑え。これから、ようやく面白くなってきたんだ。これから盛り上がるんだ。このゲームの見どころだ」

 声をあげて笑うミラー。

「あんた、復讐したいんだろ?」

「当然だ。この火傷が痛むたびに奴への復讐を誓ってきた」

「だったら、殺させてやるよ」

 さも当然のように、いたって簡単に言ってのけるミラーに一同唖然とする。

「そこまで言うなら、お前に何か策はあるのか?」

 レスラーの言葉にミラーの笑いは止まり、一同を見渡す。

「策? ああ、あるともあるとも。な~に簡単なことさ。ただお前らは正面切ってぶつかればいい。あとは俺の言う通り動けば、無面を殺せる」

 仮面越しに伝わってくるミラーの不敵なオーラがその場を支配した。


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