第10話
(1)無面
俺が撃たれた場所。つまり高層ビルにあったはずの目ぼしい物は警察が全て押収されている。それが表に出るか出ないかは別にしてもしっかりと保管されているはず。
その保管室に忍び込むことにした。
闇にまぎれて移動する。
監視カメラに俺が映っているだろうが問題ない。すでに手は打ってある。今頃カメラの向こうの奴らはぐっすりと夢の世界だろう。
警察署の奥の部屋が全て保管室になっている。細い廊下を、気配を消して移動し、錠を開け入ればそこは大量の証拠品の置かれた保管室だ。懐中電灯を持ち、暗闇の中を歩くが、部屋の一角に光が見えた。
懐中電灯を消し、近づいてみると先客が2人。
そいつらは明らかに警察関係の者ではない。
何やら証拠品をあさり、ボックスの中身まるまるカバンに入れている。見ればそれは俺が捜していた証拠の品だ。これは好都合。
「そいつを渡してもらおう」
銃を構えて2人の前に出るが、驚いた顔もしない。
「おやおや、これは無面様のご登場」
ひょろっとしギョロ目の男が笑いながら言う。
「捜す手間が省けたな。これで契約は完了だ」
サングラスをかけた男が言う。
この2人の纏っている気配は普通の人間の物ではない。
「お前ら、十祭司か?」
ギョロ目男が答える。
「よろしく、俺がダンサー」
サングラスの男が言う。
「私がエスパー」
「そうか、ならこっちも手間が省けた。お前らに直接聞くとしよう」
言い終わるのと同時にエスパーが間合いを詰めて迫ってきた。バカめ。構えた銃が火を噴く。弾丸はまっすぐにエスパーの眉間に当たる……はずだった。否、当たったように見えた。しかし弾丸はエスパーの後方へ。奴の手が俺の腹部に突き刺さる。おかしい、痛みはない。手首から先が俺の体の中に埋もれている。
「…これは?」
「透過能力さ」
つまりこいつは何でもすり抜けるということか。弾丸もそれで……。
いきなり耐えがたい激痛が体の内側から来た。形容しがたい痛み。仮に例えるのなら身体を裏返されているような痛みだ。
透過能力で体内に入れた手で俺の内臓を握りつぶしているらしい。
「一つ一つ潰していってやろう」
咄嗟にエスパーの腕を掴む……掴める。なるほど細かい操作まではできないらしい。痛みに耐えつつ拳を握りエスパーを殴りつける。やはり当たった。
手が体から抜け、後方へ吹っ飛ぶエスパー。
さらに追い打ちをかけたい所だったが、奴の攻撃は想像以上にダメージがあり膝をついて荒い呼吸を整える必要があった。
膝をついていると部屋の明かりが付きドアの辺りが騒々しくなる。あれだけ騒いだのだ、警察が気付いて集まっているのだろう。
踏み込んでくるのと同時に、ダンサーは証拠品の入ったバッグを手に持ちエスパーを抱えて壁に向かって走っていく。
発砲するが全てエスパーの透過能力で貫通していく。エスパー達が壁を通りぬけ消えてしまった時には、周りを警官だらけだった。
銃を構え俺を威嚇する。
「おとなしく両手を挙げろ!」
「お前ら、俺に銃を向けて覚悟はできてるか?」
舌打ちしながら痛みに耐え立ち上がる。
「いいから銃を棄て両手を挙げろ!」
今にも発砲しそうだ。手が震えている。
銃を捨てると手を上げる。
「何を握ってる?」
気付いたか。俺はゆっくりと手を開けると、手から球体の物が落ちる。
地面に転がったそれは、強烈に光を発した。
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