第2章:深淵の十祭司

第6話

(1)ヴィラン


 スナイパー

 ダンサー

 リッパー

 ソルジャー

 エスパー

 レスラー

 ポイズン

 リスク

 メタル

 クライ

 

 彼らは闇の落とし子達。死をばらまく災厄。ヒーロー達の影。

 彼らは世界に問う。ヒーロー達の意義を問い続ける存在。

 ヒーローに死を。

 奴らの罪は、ヒーローであること。

 ヒーロー専門の殺し屋集団。

 深淵の十祭司。


(2)ドクター


 今日の診察もすべて終わり、精神科医・小野ミダレはカルテをまとめていた。

 看護師らもすでに帰宅しており、診察室にいるのは彼一人だ。

「ここに来るときは連絡を入れろと言ったろ」

 気配に気付いたミダレは、軽く溜息を吐くとパソコンのディスプレイから目を離す。

扉の所にひっそりと無面が立っていた。

彼は悪びれる感じも見せずに首を鳴らしながら「スマン」と詫びる。

「看護師や他の人に見つかったらまずいだろ」

「見つからなかった」

「それは、そうだな……狙われてるな。どんな感じだ?」

「スナイパーは必ず見つけ出す」

 短く答える無面に、ミダレは頷きながら引き出しを開けて新品のタブレットを取り出した。

「まったく、一日にどれくらい飲むんだ?」

「数えたこともない」

「神父には会ったか? どんな様子だった?」

「変わらんさ。俺や、お前と同じだ」

 無面はタブレットをもらいポケットに突っ込む。

「あまり飲み過ぎるなよ。ただでさえ強い精神安定剤なんだ」

「フンッ、他人のことを言える立場か? まぁ、忠告はもらっとく。ただ細かいことを言うな。痛み止めにもこれはよく効くからな」

 無面はマスク越しでもわかるように笑うと出て行った。

 ミダレはそれを見送ると、口を撫でながら息を大きく吐き出す。そしてポケットに入っていたタブレットから錠剤を飲んで立ち上がった。


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