第3話 眠れ良い子よ

「1割…?ニワトリでもコロすのかい、リツちゃん?」


「いや、躾のなってないガキを生捕りにするだけだ。」


律の背後の空間が裂ける。そこから指が全てリコーダーの形をした骨の何かが、こちらをのぞいていた。


「1割とか舐めてんのか?骸ォ!出てこい!」


しかし、反応はない。


「はあぁぁ!?なんで出てこねえだよ!?」


不満を露わにする蓮太郎に対し、


「あれほどの存在を完全顕現させたんだ。再起動には時間がかかる。」


と、口にしながら律は飛びかかる。


その瞬間、蓮太郎はアスファルトの道路に顔を押し付けられていた。


「こちら谷川。《骸》を拘束しました。これより施設に運び込みます。」


そう言い終わるが早いか、蓮太郎が反撃を見せた。


「原体が強いのは一番面倒だな。すまないが、仕事なんだ。少し寝ててくれ。」


律の合図と共に美しい音が鳴響く。蓮太郎の耳に届くや否や、彼はもう一度床に臥すこととなった。


「やれ、最初に眠ってくれてれば良かったものを。」


蓮太郎の顔を覗き込む律。あることに気づいた。


「…は?こいつは…なんで生きて…?」


驚きを隠せない律だったが、護送車に乗ってきた公安職員に身柄を引き渡す必要があったため、大人しく従った。


「あいつは…三月を庇って死んだはず…?」


「リツちゃん、その名前は私の前で出さないでって言ってるわよね?」


《戰慄》が律の肩に手を置き、怒りの態度を見せた。


「悪い。それより、もう戻っていいぞ。」


そして、律は続ける。




「生前の名前なんざ、聞きたくないに決まっているよな。」



次回、第4話 「鍵の少女」









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しかばねたちのらくえん @elelel

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