Day05 線香花火[image]
ジジジジジ……。
鈍く、耳の奥で鳴る音があった。
耳鳴りではない。虫の声でもない。けれど、どこか生々しいその音を、私は悲鳴のようだと思った。
私は中腰になって、暗闇の中に佇んでいた。手元には小さな灯り。
チカチカと瞬き、ふつふつと焦げるような音を立てる……ああ、これだ。この音だ。
ジジジジジ……。
音楽のように意味があるわけではなく、声のように何かを伝える意図もなく。ただ火薬が燃えて火の玉になってぶつかり合って、そのエネルギーが発するだけの鈍い音。
その中心から爆ぜる光の粒。ひゅん、ひゅんと宙を舞っては消える光の束。
周囲には友達や家族がいて、何事か笑いながら話し合っていた。暗闇の底から見上げる彼らの顔は、薄ぼんやりしていて、一つもはっきりとは思い出せないけれど。
私はただじっと、目の前で爆ぜる光だけを見ていた。
線香花火――その火の玉が最後にジッと鳴いて、落ちた瞬間。
周囲がぷつんと、真っ暗になった。
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