第6話 ネタバース
「やっと手にいれたぞ!ネタバースセット!」
光一はアメゾンから届いた段ボールの封を、ワクワクしながら開け始めた。
使用説明書を読むのももどかしく、早速本体の電源を入れ、VRゴーグルを装着しコントローラーを握り、スイッチを入れる。
いきなりどでかい門の前にでた。そこを開けると今度は空中に浮いたアバターたちが無数にいる、広大な空間が拡がっていた。
ついにVRの世界に入ったのだ!
ところで光一はいわゆる引きこもりだった。しかしその有り余る時間を使い、FXの勉強を一年かけ徹底的にやりこんだ。
一人部屋にこもり親から借りた50万円を元手に連戦連勝を重ねていった。やがて2年で1000万円の資産ができた。
そして決意をする。俺は仮想空間「ネタバース」の世界で活躍してみせると。
やるビジネスは決まっていた。自分が編み出したFXの必勝法をひとりにつき100万円で売るというものだった。
100万円でネタバース内のオフィスを買い、開業した。光一は、自分にこんな行動力があるとは思ってもみなかったので驚いていた。
VRの世界では、自分は何でもできるという万能感を得た。
最初の客がオフィスを訪れてきた。
「株式投資に失敗しまして……」
光一は自信満々に言った。
「FXに切り替えましょう。僕……私のコーチングを受ければ、きっと勝てるようになります!」
光一は、28歳になってもまだ女性経験がなかった。
商売もうまくいき一億円がたまると、母親にシャンパンを3本買いに行かせた。
半分ほどを一気に飲み干し勢いをつけると、以前からずっと入ってみたかったキャバクラなるものに突撃した。
「いらっしゃいませ、3番テーブルへどうぞ」
ボーイに案内されると、左右に可愛い女の子が座った。
右側の女の子がゆりえ、左側がバイオレット。
「ねー何かたのんでいい?」
とバイオレットが言うので
「うん、なんでもたのんでいいよ」
と答えると、一本80万円のシャンパンがテーブルの上に置かれた。
三人で分けると「カンパーイ!」と勢いに乗る。それからは趣味のゲームの話や映画の話題で盛り上がった。より雰囲気を味わうため、光一はリアルの世界でもシャンパンを浴びた。
とくに女の子達が聞きたがったのは仕事の話と年収である。こういうところに場馴れしてない光一は、仕事内容と一億超えの資産をうっかりしゃべってしまった。
右側のゆりえが食いついた。そしてoffモードに誘ってきた。
「今度は外で会わない?」
「もちろんいいよ!じゃあ待ち合わせ場所は……」
仮想の世界では、無敵の気分になった。
次の日曜日公園で待ち合わせをし、気分よくウィンドウショッピングに付き合ってやった。
フレンチの店で飯を食ったあと、光一は一つのカードキーをゆりえの前に置いた。
「この上のホテルに部屋をとってある。まってるよ」
キザな仕掛けで女の子を誘った。大胆になれる。何でもできる。
20分ほどしてゆりえが入ってきた。
光一はすぐに抱きついた。すると「待って」というじらす言葉。
「シャワーくらい浴びさせて」
ゆりえがバスルームに消えた。光一は、興奮してリアルでも素っ裸になった。
ゆりえが出てきた。そしてそのままベッドに潜りこむ。
キスをし、ベッドに押し倒す。
胸に触ると本当に感触が伝わる気がする。光一は興奮の絶調に上り詰める。
リアルとバーチャルが完全に一致しているのだ。
本番になった。光一は右手のコントロールを外して自慰行為を始めた。
ゆりえが悶える。
「ああ~~!」
光一は絶頂に達した。
「はぁ、はぁ……」
ゆりえが冷蔵庫に向かう。そして立ってビールを飲み始める。
光一も喉が渇き、服を着て一階に降り冷蔵庫を開けた。しかし何も飲み物がなかった。
「母さんなにか飲み物ないの?母さん、母さん?」
何の気なしに親の寝室を
VRゴーグルをかぶり、素っ裸になって、ベッドの上をうろうろしている母の姿が……
「う、嘘だろ…………」
女性経験を積ませて、自信を持ってもらおうという母の愛…………か?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます