十一

「俺にもわかるんだ。あの爺さんの気持ちが。俺は貴族の末っ子として生まれた。いつもできのいい兄や姉と比べられ、認めてもらえなかった。悔しくて仕方がない。なあ、科学者の二人、この研究を安全に生かす方法はないのか?そうすれば皆が報われる。誰も悲しまなくて済むんだ」

 アダンの声は半ばすがるようなものになっていた。

「残念だが、このエナジーは暴走すると人間の手には負えない。人間だけでなく、この世界そのものを滅ぼしかねないものだ。それに、復讐のための力がどうして人々を幸せにできるだろう。彼にはもうそれしか残っていない」

「そうね、人間は聡明だけど愚かだわ。愚かな人間がそれを戦争にでも使ったらどうするつもり?人間は自分たちの成果によって死に絶えることだって考えられるのだから」

 エルフの声は冷たかった。アダンはがくりとひざを折った。

「もういいかね?茶番はおしまいだ。これから君たちは革命を目にするんだ」

 白髪の老人はそう言って操作盤の前に歩を進め、大きな取っ手を上から下に勢いよくおろした。その瞬間、青白い光が一面を覆い、音が消えた。

「まさか、この私が間違っていたとでもいうのか」

「アダン、取っ手を元に戻すんだ」

 科学者のとっさの一言でアダンは我に返り、素早く老人を押しのけて操作盤の前に立ち、取っ手をガチャリと戻した。

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