十
白髪の老人は意気揚々として言葉を発していた。
人間がたどり着いた究極のエネルギーについて。
この世の物質の構造を説明し、原子核について言及し、そこから発せられるエネルギーの膨大さを熱弁した。それは最後を飾るにふさわしいものを装飾する葬式のようだった。
「いいか、今人間が恩恵を受けているマイスべレナーは不完全なエネルギー資源だ。私の発明こそが完全なエネルギー資源であり、人間がたどり着くべきものなんだ。なぜそれを理解しない?なぜ私のすごさがわからない? 愚かなものどもめ、これから私のすごさをこの世界に示すのだ」
彼の熱弁はもはやアダンたちに向けられたものではなかった。
「やれやれね、多少は見直したと思ったけど、やっぱり人間てまだまだ未熟ね」
エルフの発言は彼の感情を逆なでするのに十分だった。
「くそ、貴様たちも、俺を侮辱するのか。だが私はもうそんなものに屈したりはしない」
「なあ、なんであの爺さんはあんななんだ?あんた、知り合いだろう? 」
間の抜けた声色でアダンが科学者に尋ねた。
「彼と私はかつて、同じ科学者ギルドの同期だった。新しいエナジーを開発して人の役に立とうと、互いを高めあっていた。しかし、彼の研究していたエナジーは人間には到底制御できるものではなかったんだ。事故が起こってね、彼の付き人が数人亡くなってしまった。彼の研究は危険すぎるとギルドは判断し、研究を中止するように通達したんだ」
「なるほど、大方、爺さんは自分が否定されたと感じて、復讐のために研究を続けていたとでもいうわけだ」
「うるさい、貴様らに何がわかる。すべてを賭けて打ち込んだものがあっけなく否定され、見捨てられる苦しみがわかるものか。いや、もうそんなことはどうでもいい。私こそがこの世界に革命を起こすににふさわしいんだ」
「もういいわ、聞いていられないわ」
エルフはしっしと手を振りながら侮蔑を含んだ言葉を投げかけた。
「なあ、私と君は一緒に人々のために取り組んだんじゃないか。人々のためにやったことは変わりがない。少なくとも、私は君を認めている」
「あなたはどうなの?アダン」
アダンは先の気の抜けた表情から変わって、深刻な顔をしていた。
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