街は小ぎれいな木造建築の建物が多い。雪が降ると景色は真っ白になってしまい自分の帰る家がわからなくなってしまう。そこで住人は家をカラフルにペイントしてわかりやすくすることにした。各々が好きな色に家を塗り、それらが妙に調和して、一つの景観を作り上げていた。莫大なエネルギーと共に建築技術が進歩し、新しい建物は多くが石と膠灰と石灰と水を混ぜて作る強固な建物が増えた。しかし王は昔ながらの景観をよしとし、それを守るために、新しい技術で作られる建物は王室の建設省の許可が必要だった。

 街の人々は小ぎれいな景観に似合わない派手な衣装を身にまとい、各々が持ち寄った楽器を鳴らしている。ヒゲを蓄えた八百屋の主人は昼から酒を飲み、街を歩くエルフに声をかけ、冷たくあしらわれていた。街娘は一張羅で着飾り、露店で外国産の鉱石でできたアクセサリーを物色していた。

 喧騒を横目に見ながら、アダンは表の通りから一つ入った路地に入り、待ち合わせていた密偵と合流した。その男は小柄で、街の人間になじむ服を着ていながら、抜け目のない目に琥珀色の光が宿っていた。

「ご苦労、調査はどうかな」

 男は小さく頭を下げ、抜け目のない話し方をした。

「予言の、青き光によってこの国は滅ぶ、という手がかりでは、どうにも情報が少ないですね。しかし、青い光というものが何を表すものなのかがわかれば調査は進みます。街で青い光を知っているものはいませんでした」

「普通の人間は知らない。となると知っていそうなのは」

「はい、古代に詳しいエルフや物質に詳しいドワーフ、そして多くの研究をしている科学者になります」

「そうだな。まずは近隣の科学者にあたってみるのがいいかもしれないな」

「かしこまりました」

 男は最小限の動作で素早くかしずいた後、音もなく立ち去った。

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