第17話 勇者の時間

「いったい何が……」

 映画館のシアタールームから出て直後に、二度目の揺れ。

 今度のそれには、はっきりと共に爆発音が聞こえていた。

 そして数秒の後、三度目の揺れ。爆発音が鮮明に聞こえている。

「爆発音だけど、いったい何が……」

 志保が呟いている中、桜盛は魔力の探知を行う。


 成美の持っている魔力の波長は、しっかりとそこにまだ、彼女が生きたままであることを示していた。

 だが透視ではるか遠くを見ても、ホールの中はまだ多くの人間がいることが分かっている。

(どうなっている? 通路が塞がれたのか?)

 急激に動く人間の中には、覆面をして銃器を持っている姿が多数。

(機動隊……にしては到着が早すぎる。テロリストか? でも日本でこんな武器を用意出来たのか?)

 出来たのだろう。実際に相手に、桜盛のようなアイテムボックス持ちが一人でもいれば、いくらでも武器は調達可能だ。

 もちろんそれは現実的ではないのだろうが。


 そして桜盛は魔力のマーカーで、知った人間がまだ他にもいることを確認していた。

(鈴城エレナか。なんだってこんなところに)

 マーカーは一度付けておけば、意識して外さない限り、そのままの状態になる。

 桜盛の変身後の姿を知っている人間として、茜の他にもマークしていたのだ。

 その茜の反応も、少し離れてはいるが、このモール内に感知していた。


 ひどい話である。

 守らなくてはいけない人間が多すぎる。

(いや、違うな)

 優先順位を間違えてはいけない。

 それは今、この傍にいる志保も含めてのことだ。


 さすがに騒ぎになってきて、窓から見える煙の方に、周囲の人間の注意がいっている。

 その中で桜盛は志保の手を引いて、こちらを見ている男の方に向かっていく。

「護衛の方ですよね? 彼女を保護して家まで送ってもらえますか?」

 こちらをずっと観察している目があるのは知っていた。

 途中で交代はしていたが、気配を絶つことが出来ていない。

 あっさりと見抜かれた護衛はうろたえていたが、桜盛としてはまず志保の安全を確保したい。


「玉木君は」

 志保もあっさりとそれに了解はしたようだが、志保は桜盛のことを心配している。

「あのホールのあたり、俺の妹がコンサートを見に行ってるはずなんだ。ここから連絡を取ってみて、分からなければ警察に話すかもしれない」

「待って。もしあの爆発が人為的なものなら、周囲も相当に危険よ」

 文学少女桂木志保は、それなりにエンターテイメントも読んでいるのだ。

「ひょっとしたらテロかもしれない」

「無理はしないさ」

 そんな会話の間に、護衛らしき人物も連絡を取っていたらしい。

「玉木様、連絡先を教えていただきますが? 何かが分かればこちらからも知らせますので」

「玉木君のなら、私が知っています」

 これは普通使いのスマートフォンは、アイテムボックスに放り込めないなと判断する桜盛である。


 それにしても志保は、こんな時なのに肝が座っているな、と桜盛は感心した。

 もっとも日本には慣れない日常に、まだ適応していないことからの、逆に発生する冷静さかもしれないが。

「じゃあ避難して。一応何かの事件がらみでも、ここまで遠くには被害はないと思うけど」

 頷いて、先導されながらこの場所を去っていく志保。

 だが周囲の人間は、スマートフォンで撮影などをしながら、煙に包まれたホールを見物したりしていた。


 平和ボケ、と言われても無理はない。

 オウムのテロ事件や、元首相の暗殺事件など、そういったものさえイベントにしてしまう者は一定数いる。

 とは言っても色々な国かた発される個人的な発信は、もう時代が変わってしまったとも言えるのだが。

(優先順位は成美の安全、それから犯人の制圧か)

 銃器で武装しているが、かなりの貫通力の違いがあっても、銃であることは変わりない。

 拳銃の弾丸が全く通用しなかったのだから、さらに防御を固めていけば、そうそうは抜かれることはないだろう。

(それらしい格好、どこかで手に入れないとな)

 桜盛はトイレに向かいながら、その近くの監視カメラを破壊する。

 そして個室で変身と着替えを済ませて、勇者の時間に備えるのであった。




 それはコンサートの曲目が終わり、ホールのライトが点灯した瞬間であった。

 爆発音と共に振動があり、思わず有希はステージの上で膝をつく。

 バランスのいい彼女だったからこそ、この程度で済んだのだ。

 ステージのメンバーも盛大に転がっていたり、またここから見えるだけでも、客席には転倒している人たちが多い。

「いったい何が……」

 ステージ脇を見たものの、そちらにいるはずのスタッフたちも、転倒したりどこかをぶつけたりと、有希がむしろ心配になる。


 そんな中で、次の爆発があった。

 会場中が揺れて、上にあるライトなどもキシキシと音を立てている。

「皆! 下がって!」

 有希は他のメンバーに声をかけて、自分でも後方に移動する。

 かなりの強度を持って固定されているはずだが、それだけに落ちて下敷きになれば、ただでは済まない。


 そして三度目の爆発音。

(違う方向? 事故? 爆弾?)

 揺れるライトを見ながらも、有希は事態の把握に努めようとする。

「マネージャー! 一体何が!?」

 視界の隅にエレナの姿を確認していたが、今は彼女と合流するよりも、重要なことがある。

 ただマネージャーもスマートフォンを握りながらも、連絡がつかないようであった。


 このホールの中は確か、電波を遮断するようには作られていなかったはずだ。

 すると中継するものが、破壊されているのか。

 だがこんな大型の施設に、付属するようにショッピングモール。

 一つや二つが壊れても、どれかはつながりそうなものである。


 避難すべきかどうか、何が起こっているのか把握して欲しい。

 今自分たちがここから逃げれば、客席の人間も出口を目指して動き出し、将棋倒しで怪我人が出る可能性もある。

 冷静に状況を把握して、有希は動かないという選択をしている。

 そして四度目の爆発はないので、有希はその場に立ち上がった。


 電気はまだきているので、マイクは使える、

 この場で誰よりも、ファンを説得できる人間は誰か。

『みんな~、事故があったみたいだけど、落ち着いてね~。まずは倒れたりしている人がいたりしたら、助けてあげて~』

 アイドルの冷静な声は、ファンを一致団結させるらしい。

 それぞれが周囲を見回して、倒れた人などに手を貸している。


 ただ転倒の具合によっては、変なところを打ってしまって、怪我人は出ている可能性もある。 

 このホールは小さいとはいえ、1500人は収容しているのだ。

(地震か何かで爆発した? まさか爆弾なんてことはないと思うけど)

 アイドルへのファンからのプレゼントには、本当に様々な物が贈られてくる。

 中には、爆弾が入っています、などというメッセージカードが付けられた、頭のおかしな物もあったりした。

 もちろん実際には、そんなに危険なものではない。

(日本の爆弾事件なんて、あんまり聞かないけど)

 もっともそれは有希が、あまり知識がないからである。


 日本では普通に手に入る物を使って、爆発物を作ることは出来る。

 もちろん手間がかかるし、安易なものを作ろうとしては、警察が監視している購入記録などから犯行を事前に発見したりもする。

 しかし専門的な知識さえあれば、それなりの手間だけで爆発物を作ることは出来るのだ。

 またそもそも、爆発物を作ったり、それ以外でも毒ガスを散布したりと、日本という国家は大規模なテロ行為にはまだ弱いのだ。




 そして事態は変化する。

 ホール後方の、三つの入り口から、侵入してきた集団。

 10名以上にもなるその集団は、例外なく顔を隠し、そして銃を持っていた。

 拳銃ではなく、小銃と分類される物で、詳しい者であればそれが、旧ソ連の開発した、自動小銃だと分かっただろう。


 その集団は銃口を向けたが、一人だけはそれを天井に向けた。

 タタン! と短い銃声が続き、コンサート中は消えていたライトが点灯したのを、一つ破壊していた。

 本物の銃だ。

『さて諸君、動いてくれるなよ。なにせ人質の数は多すぎる』

 拡声器を使って、リーダーらしき男は言った。

『少しぐらいは減らした方が、こちらとしては管理も楽になるからな』

 これが犯人グループによる、最初の発言であった。






 最高の気分だった。

 ライブコンサートは終わり、この最高の気分のまま、グッズを買って家に帰る。

 貯めていたお小遣いをかなり使ってしまうことになるが、それでも最高だった。

(感謝)

 桜盛へのわだかまりは、正直なところかなり抜けている。

 この年頃の女の子としては、当たり前の未熟さと幼さ。

 それを受け止めるだけの度量が、かつての桜盛にはなかった。


 しかし異世界生活30年。

 桜盛の度量はおそらく、世界でも最も大きな器となっている。

 ただ敵対者に対する容赦のなさは、現場の人間としては当たり前のことだが、大局を見るには視点が低いかもしれない。

 それを分かった上で、桜盛は行動しているのだが。


 そんなところにやってきた、爆発音と振動。

 有希がマイクで呼びかけて、わずかに落ち着きを取り戻したところへ、銃器を持った集団の乱入。

「AK-47だ」

「するとロシアの?」

「いや、あの銃は世界中で使われてるから」

 周囲のオタクの中には、軍事オタクを兼ねている人間もいたらしい。

 おそらくそう言うと「この程度でオタクは名乗れない!」と言うような面倒なオタクであろうが。


 AK-47は旧ソ連が正式採用した自動小銃である。

 その特徴としては設計されてから半世紀以上が経過していながらも、いまだに運用されている信頼性。

 ギネスブックにも載るぐらいに、世界中で使用された、そして使用されている製品である。

 劣悪な環境でも使える信頼性、そして整備不足に耐える耐久性、部品数などを限ったことによる生産性。

 改良された銃も製造されているが、基本となる設計は今も変わっていない。

 と言うか、普通に半世紀前の銃が、今でも出回っているのだ。それ自体は別に珍しくないのだが、その量がおかしい。


 だがそういった事実から何かを考えるのは、警察なりなんなりの仕事である。

 一般人である成美としては、頭を抱えてぶるぶると震えているしかない。

 少しでも目立たず、静かにしていること。

 弱い人間と言うよりは、弱い生物が生き残るための、生存戦略である。




 エレナはほんのわずかだが、こういう窮地に慣れていた。

 もちろん強姦魔とテロリストでは、その脅威度も危険度も、段違いではある。

 しかしこの場合に必要な、最善の手段を取ろうとしていた。

 即ち外部との連絡である。


 わずかな動きも武装した相手には、危険に見えるだろう。

 そして彼女が動くよりも先に動く、目端の利いた人間もいたのだ。

「ダメだ、電波つながらなくなってる」

「電話だけじゃなく、ネット自体つながんねえ」

 そんな声が聞こえて、エレナもスマートフォンの電波を見る。

 特につながりやすい会社のはずであったが、やはりアンテナが立っていない。

 ホールだからかと思っても、普段は違うイベントにも使っているし、その時に電話がつながらなければ不便すぎる。

(ジャミング?)

 聞いたことはあるが、本当にそんなものがあるのだろうか。


 武装集団は最初、10人ぐらいに思えた。

 だが入り口から入ってくる者は増えて、およそ30人ぐらいにはなっている。

 全員がこのホールに入ってくるはずもないだろうし、おそらく倍ぐらいはいるのではないか。

(テロリスト? 外国の軍隊? いやでも、さっきの言葉は日本語のネイティブっぽかったけど)

 エレナは現役閣僚の孫娘であるが、その席を継承することは期待されていない。

 なので国際情勢などには、普通よりは少し詳しい程度なのだが、こんな軍隊がどうやってこれだけ集まったというのか。


 そして狙いは――。

(有希)

 本日このホールでは、エヴァーブルーのコンサートが開かれることは周知されていた。

 ある程度詳しい人間であれば、有希の家がどういうものなのか、それは知っているはずだ。

 本人の父親は、名家から逸脱したような、喫茶店の店主。

 だがそのさらに父親までたどれば、代議士の中でもかなり大物にたどり着くのだ。


 自分までがここにいると知れたら、犯人にとっての人質の価値が、またも増えてしまう。

 いや、そもそもここにいる1500人もの人間が、既に大量の人質なのか。

(これだけの人数、いくら武装していても、ずっと管理出来るものじゃない)

 集団をまとめる難しさは、エレナもよく分かっている。

 ただ圧倒的な暴力があれば、それもまた話は変わってくる。


 首領らしき人間が、部下を連れてステージに歩み寄る。

 そこでは有希が震えながらも、他のメンバーを守るように立っていた。

 この姿が美談となるか悲劇となるか。

 それが異世界の勇者であっても、まだ分かっていないことであるのだ。




 爆発に際して、茜はペアになる刑事とも分かれ、避難誘導を行っていた。

 日本国内でこんな大規模な爆発物を使うなど、これまでに彼女は聞いたこともない。

 もちろんはるか昔には、かなりの騒動になったものはあるし、爆発物事件での死者がいなかったりするわけでもない。

 ただこんな場所で、三度もの爆発というのは、さすがにどうやって爆発物を手に入れたものなのか。


 実際のところ科学知識があれば、手間をかけて相当に強力な爆発物は作成出来る。

 ただこれがはっきりと分かりやすいものであり、目に見えない毒ガスなどでなかったのは、まだしも良かったのだろうか。

 少し離れた場所などでは、のんきに写真を撮っている一般人が多い。

 もちろんこの事態に際して、茜のバディである刑事は、本庁に連絡を入れようとした。


 だがこのあたりまでも、アンテナが立たない。

 もし爆発で中継器が壊れたりなどしたとしても、こんなところまでそんな影響が出るのはおかしい。

 妨害されていると悟った刑事は、警察無線を使うより先に、今時珍しいながらも、そこそこ存在する有線の電話機で、連絡を取った。

 その間に茜は、避難誘導などを行ったわけである。


 爆発があったのは、モールに隣接したホールの方で、煙がここからも見えている。

 これが爆発物テロであった場合、それを撮影できるような中途半端な位置に、第二第三の爆発物を設置する可能性が高い。

 ただでさえ既に三度、爆発は起こっている。

(こんなの機動隊案件でしょ!)

 そう思っていた茜の肩を、とんとんと叩く者がいた。

 そして振り向いてみれば、ずっと会いたかった巨漢がそこにいた。




 桜盛としてはこの状況の中で、一番の優先順位は成美の無事である。

 もちろん他に100人助けられるなら、簡単なところでそれを助けてもいい。

 だが自分が危険を犯してでも、助ける必要があるのは成美一人。

 あとのリスクは正体バレなども含め、桜盛の判断による。


 ただそんな桜盛であっても、こんな状況なら警察に連絡をしないわけがない。

 また彼は透視能力によって、とりあえず銃器を持った武装勢力が、どれぐらいいるかは把握していた。

「貴方、こんなところに」

「挨拶はまた後で。俺が確認したところ、軍隊みたいに武装したやつが、50人確認出来た」

 桜盛としては一般的な対人用の銃は、全く脅威にはならない。

 だがそんな活躍ぶりを、他の人間に見られるのも困るのだが。

「爆発はどうやら、大ホールの入り口を塞ぐためのもので、細い通路が一本と正面の通路だけが無事みたいだ。そこにいる1500人を、おそらく人質にするらしい」

「1500人……」

 それは人質事件にしても、日本においてはとても前例がなかったほどの数である。


 日本における最大のテロ事件とも言えるのは、オウム真理教による地下鉄サリン事件であろう。

 あれは死者数だけを見れば、まだしもそれほどではないように思えるが、後遺症が残った人間の数を見れば、相当にひどいものであるのだ。

 もっとも日本人が関わった国外のテロというのなら、それ以上にひどい被害を与えたものはある。

「このあたりまで電話が使えなくなってるみたいだが、原因は分かるか?」

「おそらくジャミングの類だと思うわ。トランシーバーとかなら通話出来るかも」

「そういうものなのか」

 桜盛は勇者世界であれば、戦争に対する知識を多く持つ、個人兵器である。

 だが地球における兵器の知識は、せいぜい普通の高校生男子が持つ、それぐらいしかない。

 ただ、その桜盛の知識からしても、この規模の武装集団が存在するというのは、今までになかったとは思うのだ。


 茜を助けた時のヤクザや、エレナを助けた時の強姦魔、また志保とその祖父を助けた呪いのに比べても、規模が大きすぎる。

「そんな規模の武装集団、日本じゃありえない」

 現職警官である茜が言うのなら、その通りなのだろう。

 そのありえないことが起こっているのは、どういった背景があるのか。

 日本ではこんなことを起こさせないために、公安などの裏に近い組織があるのに。




 ありえないことを起こす。そのために必要なものは何か?

 相手に桜盛のような存在が一人いれば、それなりに可能だなとは思う。

 だが今のところ探知しても、魔力の類を持つものは感じない。

 この世界の一般的な武装兵士が、どうやってこんな数で侵入出来たのか。

(館内の地図を、まずは手に入れたいな)

 桜盛としてはここまで大きな事件なら、さすがになんとかしておきたい。


 茜はこんな事態にも関わらず、全く動揺していない桜盛の姿に、自分も落ち着きを取り戻す。

「貴方、ここからどうする予定なの?」

「人質の中に、護衛対象がいるんだよなあ」

 成美のことであるが、エレナあたりが目くらましになってくれるかもしれない。

 現役閣僚の孫娘がもう一人いることは、桜盛は知らなかった。

「協力してくれるなら、私の無線機を渡すけど」

 茜のバッグの中に入っているそれは、おそらくこの状況でも役に立つ。

 ただ警察の備品を渡したということで、茜は後に始末書は絶対に書かされることになるだろう。

 しかし茜は現在、公安や警察庁からも、ある意味守られている立場にある。

 免職にまではならないだろうと判断した茜は、自分の無線機を渡す。

「いいのか?」

「警官としては、あんまりよくないんだけどね」

 それでも茜は、優先順位を間違えない。


 手短に桜盛は、茜から使い方を学ぶ。

 警察無線は周波数を変えるので、ぴったりと合わされない限りは、盗聴も心配はいらないはずだ。

 もっともそのぴったりと合わせてくる可能性も、それなりにあるのだが。

「俺は基本的に、この無線で情報を受け取るだけにする。こちらから伝えたい時は、出来るだけ有線電話を使うことにするよ」

「え~と……それじゃあ連絡先は、こちらにして。たぶんここだとまずいなら、違う電話番号を言うだろうし」

 茜が桜盛に渡したのは、警察庁の高橋につながる固定電話だ。

 桜盛としてはこれで、自分の声が録音されるのを、少し警戒しなければいけない。

(まあ、声を変えるぐらい、どうにかなるか)

 それにしても、犯行グループの目的はなんのか。


 これほどの大規模な事件となると、かつてのハイジャック事件などが前例になるのか。 

 もっともどうにか離脱して、国外に逃げるルートを確保しているのか。

 一番考えたくないのは、人質ごと死ぬつもりの、自爆テロである。

 そしてそれを狙っていた場合、桜盛は自制を全てかなぐり捨てて、犯行グループの排除にかかるだろう。

「勇者の時間の始まりか」

 呟いた桜盛は、人ごみの中を駆け抜けて、茜の前から去って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る