笑われてしまった:ボール

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 私は運動部に入っている高校生だ。


 けれど、運動神経は良くない。


 歩けばよく転ぶし、部活中もよく転ぶ。


 体育の授業をやれば、顔面でドッジボールをうけとめるくらいだ。


「ひぎゃん!」


 いたい。


 そう、今まさに件のボールが顔面にあたったところだから話をしたのだ。


 頭をふらふらさせながら、外野に出ていくと、クラスメイト達から盛大に笑われてしまった。


 好きでドジやってるわけじゃないのに。


 落ち込んでいると、先生が話しかけてきた。


「元気出せよ」


 うちの担任の先生だ。


 優しい先生は、良く落ち込む私にこっそりお菓子を渡してくれる。


「後で良いもんやるからよ」


 殺伐とした日常に輝く、貴重な清涼剤だ。


 魂が浄化されるような気持ちでいると友人が話しかけてきた。


「まーた、先生に甘やかされてる」

「なによ。いいじゃない。他の皆が冷たいのが悪いのよ!」

「はいはい」

「私は本気で起こってるんだからねっ!」


 クラスメイトは、この友人と同じで私を笑ってくる。


 でも、彼女は他の人よりはマシなのよね。


「ほら、顔によごれがついてる。とってあげるからじっとしてなさい」

「えっ、嘘! 先生に変な顔みせちゃったっ!」

「そんなの今に始まった事じゃないでしょーに」


 持っているハンカチで顔を吹いてくれる友人に、一応感謝。


 他の皆だったら、絶対影で笑うだけで教えてくれないだろうし。


「放課後、いつもみたいに先生のところいくんでしょ。掃除当番は適当にやっといてあげるから、さっさといきなさいよ」

「ありがと~。持つべきものは理解ある友達だよね~!」


 嬉しくて抱き着くと、うっとおしがられてしまった。


 ちょっと言葉はきついけど、根は良い子なんだよね。


 ちょっと扱いは雑で、顔を吹かれた時キュッキュするより、ガシガシってしてくるけど、それでも他の皆よりはましだしね。


 私は全身で感謝をアピールするのだった。


「ちょ、ぐえっ、苦しい。離れなさいよ。馬鹿力。あんたそういう所があるから、芸人扱いされて笑われるんでしょーが」


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笑われてしまった:ボール 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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