三十五話:お仕置きなのじゃ~
「むっ! ミオっ、なんじゃその男わぁーー!! 貴様未だ未熟者の癖に男を作るとは、この淫乱ノーパン神官めぇええええ!!」
のじゃロリが吠えた。
ファラオの心臓を手に入れた俺は、クラスチェンジの為、神殿の奥へとミオちゃんに案内してもらっていた。
「お仕置きじゃああ!!」
「ふあっ!? や、やめてください……アマシロ様っ……!」
「!」
これは!
茶色のテーブルに押し倒されたミオちゃん。
その上からアマシロ様がのしかかり、ミオちゃんの巨乳を上下左右に揉みしだく。 なんという光景。 今日もノーブラなのか、ピッチリと肌にくっつく神官服。 その清楚な服を歪にゆがませる、柔らかな双丘がのじゃロリの小さな手で好き放題にお仕置きされている。
素晴らしい!
いや、なんと厳しいお仕置きなのだ。
「た、助けてくださいっ。 ノリオ様ぁっ、ああっ、んんっ……はぅんっ!」
「何がノリオ様かっ。 ――わらわがアマシロ様じゃっ!!」
派手なヒラヒラの服がはだけるのも構わず、頑張るアマシロ様。
頑張りすぎて服が落ちてきているけれど、大丈夫か?
パン!パン!パァン!
乾いた音が。 布越しに柔らかな物を叩いたような音が軽快に響く。
「ほれっ、白状するのじゃ。 この男とはどこまでいったんじゃーー!」
「ま、待ってくっ、んあっ! お尻――ダメッ、だ――んっっ!」
お尻ペンペン。
のじゃロリは態勢を変えさせ、ミオちゃんの大き目なお尻を叩く。
小さなアマシロ様に抵抗できないミオちゃん。 不思議な力で身動きをできなくされているようだ。
パァアン!
「白状せーい!」
「ひぅっ!」
強烈な一撃がお尻にヒットした。
小さな女の子にお尻叩きされる女神官。
ただのお仕置きのはずなのに、酷くエロスを感じるのはなぜだろう。
とはいえさすがに色々マズいので止めに入った。
この後ダンジョン戦も控えているのだ。 早くクラスチェンジしないとっ。 お仕置きはまたその後でお願いします!
「うぅ……酷いです、アマシロ様……」
お尻をさするミオちゃん。 優しく撫でてあげようか?
「えぇい、メソメソするでないっ。 これも修行なのじゃ……!」
修行と体罰は紙一重。
いや、明らかに体罰だが。
「おおおおっ!? こ、これ、じゃ、これじゃー♪」
ぴょんぴょん跳ねる、のじゃロリ。 菫色の長い髪は乱れ、テーブルに置いた進化素材を嬉しそうに持ち上げる。 一つ一つしっかりと品定めして、最後の遺物の前で止まった。
「ふむ。 遺物は複数あってもダメなのじゃ。 どれにするのじゃ?」
「うーん」
実は遺物らしき物は複数見つかった。
アプデ以降に発見された用途不明品。
ハウジングアイテムと思われていたらしく、露店で安く購入もできた品も。 地下迷宮の宝箱とボスドロップも併せて一応全部持ってきている。
「これだと、何にクラスチェンジするんですか?」
「秘密じゃ」
「……」
なんて不親切なんだ。
さてどうしたものか。
遺物と思わしき物。 ボロ布のマントに忍者の絵巻、クネクネした二又の槍、怪しい仮面、煌びやかな長剣と様々。
試しに煌びやかな長剣を渡してみる。
「それはダメじゃ。 お主には合っておらんのじゃ」
アサシンじゃダメってことか。
「コレかコレかコレにするのじゃ~~」
ちょんちょんちょんと三つを指さすのじゃロリ。
ボロ布のマント。 忍者の絵巻。 怪しい仮面……ファラオのドロップ品だったりする。 面白い絵柄の仮面、どこか滑稽で不気味。 ちなみに裏面に針は無いよ。
アサシンには三つもクラスチェンジ先があるようだ。
「ふむ……」
忍者の絵巻はまぁ、忍者だろう。 逆に違ったらびっくりだよ。
「こちらは恐らく『シャドウ』だと思います。 怪しい仮面は得体が知れませんが……」
ミオちゃんのナイスアシスト。
ボロ布はシャドウか。 いや、シャドウがなんだか分からんけど。
しかし、俺の感が囁く。
「コレにします!」
怪しい仮面を取れと。
「ほう! そなたそれを選ぶとは……本当にそれで良いんじゃな!?」
そう念を押されると、どうしようか迷っちゃうけど……。
「はい……!」
俺はアマシロ様へと怪しい仮面を差し出す。
アマシロ様は闇の宝玉と光の宝玉を一つずつ、それと他の素材を合わせて手を添える。
発光し光に包まれる素材。 眩い光が室内を激しく明滅させる。
「ほれっ」
投げ渡される光。 俺はそれを受取ろうと手を差し出すが、光は分散し周りを祝福するように旋回し、体に取り込まれていく。
ピロロン。
そしてクラスチェンジを告げるメッセージが届いた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ユニーククラス【ナイトウォーカー】
おめでとうございます!
クラスチェンジクエストを達成しました!
初期スキルブックをプレゼント。
最速達成特典として称号をプレゼント。
ユニーククラスへのチェンジでユニークアイテムをプレゼントします。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「おめでとうございます。 ノリオ様」
「ありがとう、ミオちゃん!」
神殿の敵みたいなクラスチェンジを果たした俺に手を振り見送ってくれるミオちゃん。 俺は一つミオちゃんにお礼を言って、ピンハネした宝玉にニヤけるアマシロ様は無視して、俺はギルドアイランドへと急いで向かった。
◇◆◇
ギルド『暁の月』。
活動方針はまったり自由。
ギルドの加入方法はマスターの勧誘のみと、二十名ほどの小規模なギルド。
野良PTで知り合い共にクエストを通じ語り遊ぶ。
気の合った――アルマの興味を惹いた――人物が勧誘される。
基本的に癖のあるメンバーたちが揃っていた。
「「「ノリオ! ノリオ! ノリオ!」」」
「ぷはっ……! もう……飲めないっす……」
後、おっさんの社会人プレイヤーが多い。
「おいおい~~! 最近の若者はだらしねぇな!!」
「よし! じゃあ俺が代わりに飲んでやるぜ!」
「じゃ俺も!」
「いやいや、俺が!!」
「……じゃ、私が」
「「「どうぞ、どうぞ!!」」」
仲の良いギルドである。
「ノリオ君~? レフィーちゃんとはどういう関係なの!?」
「それとも、一華ちゃん狙いなのかな~? お姉さんとちょっとお話しましょう~~?」
「シトリちゃんっ……凄い、ブルブル……♥」
本日の二十五時に開始されるダンジョン戦。
その作戦会議はすでに大宴会とかしていた。
ギルドアイランドに設置されている会議場で俺は妙齢のお姉さんたちに絡まれている。
「……よーし。 作戦会議は以上だよ♪」
「「「おう!」」」
自分のせいで迷惑かけてしまって申し訳ないと、謝罪したのだけど。
基本ゲームはゲームとして楽しむが信条な彼ら社会人プレイヤーは、気にするなと、そんな暇があるなら飲めと励ましてくれた。
『わんこそば作戦』
ダンジョン戦の作戦はシンプル。 最上階で階段から上がってくる敵をの迎え撃つのだ。 人数の少ないギルドは全階層で時間稼ぎの防衛は難しい。 最上階でのガチンコ。 復活場所からの再起時間で人数差を埋めるしかない。
それと、このゲームにおけるダンジョンには一つ制限がある。
ダンジョンの最大進入人数だ。
ダンジョン戦の申し込み数は最終的に二十ギルドだった。
けれどそのギルドのメンバー全てがダンジョン戦には参加はできない。
いや、同時には参加できないというべきか。
同時に入れる人数はダンジョンの規模により変わる。
超過分は進入待機待ちとなり、入口の外の待機エリアで控えていることになる。
ダンジョン戦の行われるダンジョン――シャビルは全五階層。
最大進入数は三百人。 それと俺たち防衛を足した数だけがダンジョンに入れる。 ダンジョン内のモブは普通に沸き、防衛プレイヤーは襲われない。 防衛専用のアイテムや兵器もあるので基本的には防衛有利な仕様だ。
「うーむ。 五千人くらいは集まってるかな?」
「ブハハ!」
「滾ってきたぁあああ!!」
「『回転式機関砲・阿吽』の使用許可を求めるっ!」
「「「却下」」」
「なぜだっ!?」
同時入場三百人の制限。 とはいってもこちらは二十一人。 コルルも参戦は可能だけども。
圧倒的不利は変わらない。 わんこそばのように時間制限まで、こちらの最終防衛ラインであるガーディアンが倒されるまで、敵がどんどん押し寄せてくるだろう。
「ふふふ、今日の主役はノリオ君だもの。 頼んだよ、【エッグマン】?」
「その二つ名はやめてくださいーー!」
皮肉にも掲示板での二つ名は【エッグマン】。
シトリにつけようとした名を頂くとは何の因果か……。
『ねっ』と横から肩に手を置き微笑むアルマ。
その表情はずるい。 美人のお姉さんにそんな表情で微笑まれたら慌てるしかないんだよ……!
「あれれ~~アルマとはどんな関係なのかなぁ~~?」
「なになに? どこまでイったの? ちょっとお姉さんと二人でお話しましょう??」
「あっ、ああっ。 シトリちゃ、すごいぃいい……♥」
ぐぅ……お姉さんたちの尋問が。 早くダンジョン戦始まらないかな。
それとそこのお姉さん、シトリを変な風に使わないでください!
「シトリ……進化させる?」
「え?」
「これ……」
レフィーさんから手渡されたのは椰子の実、ではなく進化の実だった。 それも二つ。 レフィーさんの双丘並みの大きさ。
「いいんですか?」
「うん……私はもう進化させないから、あげる」
ギルドの牧場に放たれている半数近くのコルルがレフィーさんのなのだけど。 まったく進化させず、完全にペット扱いだ。
「シルフィーは出さないの?」
「……出す?」
「総力戦で行こう!」
「分かった……」
シルフィー?
「シルフィーはレフィーの最初のコルルなの」
「そうなんですか」
「シルフィーは……死んだ……」
「え!?」
「死んではないでしょ! ちょっと大きくなっちゃっただけだよ~~」
最初は精霊みたいだったのにね! とアルマがレフィーさんの肩を叩く。
「シルフィー……反抗期……」
「……」
嫌な予感がするなぁ。
「シトリちゃんの情報も、ダンジョン戦が終わったら公開しておいたほうがいいかもね。 クラスチェンジのインパクトで誤魔化せるでしょ~~♪」
たしかに、いつまでも隠しておくとまたやっかみが増える。
「シトリ・ステータス」
―――――――――――――――
名前:シトリ
種族:守護獣 卵型
レベル:100(★)
HP:10000
MP:1110
力:1
体力:1000
敏捷:1
器用:1
知力:1
精神:111
SP:0
スキル:【幸運Lv.20】【鼓舞Lv.20】【ふるふるLv.20】【マイレージLv.20】【硬殻Lv.20】【跳躍Lv.20】【高速振動Lv.20】【怪音波Lv.20】
スキルポイント:142
物理攻撃力:1
魔法攻撃力:1
クリティカル:2倍
攻撃速度:1
物理防御:90%
対火炎属性:10%
対風雷属性:10%
対水氷属性:10%
対土岩属性:10%
ダメージ軽減:52%
―――――――――――――――
シトリの体力一振り当たりのHP上昇量が凄い。
ふるふると幸運のコンボでドロップが増え、レベル上げに必要な昇魂も大量にゲットできる。 サポート専用コルルと言っても、狩り効率が下がるどころか上がっていると思う。 スキルも色々覚えたし。
「進化させますね!」
「うん……」
二回目の進化には進化の実が二つ必要。 その後も倍に増えていくらしい。
「ぎゃあああああ!?」
「目、目がぁああああああーー!!」
なんだ、なんだ? と集まった酔っ払いども。
シトリが激しく光り進化する光景を凝視し、お約束をかまして転げまわる。
俺は前回の失敗を繰り返さない。 ちゃんと距離をとっていた。
「……やっぱりタマゴ型なんだな?」
「!!」
そのままの姿のシトリさん。
―――――――――――――――
名前:シトリ
種族:守護獣 卵型
レベル:1(★★)
HP:10000
MP:1110
力:1
体力:1000
敏捷:1
器用:1
知力:1
精神:111
SP:0→100
スキル:【幸運Lv.20】【鼓舞Lv.20】【ふるふるLv.20】【マイレージLv.20】【硬殻Lv.20】【跳躍Lv.20】【高速振動Lv.20】【音波Lv.20】【小さくなるLv.1】【大きくなるLv.1】
スキルポイント:142
物理攻撃力:1
魔法攻撃力:1
クリティカル:2倍
攻撃速度:1
物理防御:90%
対火炎属性:20%
対風雷属性:20%
対水氷属性:20%
対土岩属性:20%
ダメージ軽減:52%
―――――――――――――――
また変なスキルが増えた……。
「小さくなれる?」
「!」
シュン、シュン、シュン!と音を立てながらシトリは少し小さくなった。
本当に少しだけだ。 まだスキルレベル一だからたいして変化しないのかな。
「じゃ、大きくなる」
「!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら大きくなるシトリ。
バレーボールほどだったのが、バスケットボールくらいに大きくなった。
これまた微妙な変化だ。
「よし、そろそろ移動しようぜ!」
「大戦じゃーー!!」
時刻は深夜二十四時。
二十五時から開始されるダンジョン戦に向けて俺たちは保有するダンジョンへと移動する。
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