三十二話:イチゴ
魔法少女、鳳凰院一華と共に行動する。
ペアになるのでハイドは意味がなくなるかな、と思ったのだけど。
「テレポでタゲきるから使っていいわよ」
とのことなのでやっぱりモブを無視して宝箱探し。
しかしたまに現れる包帯男にはハイドが効かない。
「包帯男は感知スキル持ちだから、見破られるわ! ――任せて!!」
相対する包帯男にメテオが直撃する。
「ホオオオオオオオ!?」
さして高くもない天井があるにも関わらず。
宙に発生した魔法陣から、燃え盛る隕石が包帯男に直撃し吹き飛ばす。
激しく壁に打ち付けられ転がり一撃で粒子へと変えられた。
「フフン♪ 炎が弱点なのよ」
「……」
炎より、物理的なダメージに見えたけど……。
頼もしきパートナーは炎を操り鼻歌交じりに敵を倒していく。
「凄い……!」
「フンフフン♪」
パンチラが。
メテオの風圧で捲れるスカート。 イチゴパンツがちらちらと姿を垣間見せる。 遺跡の迷路のような通路は狭く、荒れ狂う風が下からも悪戯をするのだ。 それに気づかない一華は上機嫌で包帯男にメテオを放つ。
「見たっ? 壁に三回も跳ね返ってたわね!」
「うん、見えた」
見えましたとも。
イチゴの季節にはまだ早いのに、イチゴがいっぱい見えた。
ピンク色のツインテールを揺らす一華は上機嫌に笑っていた。
「お。 ノリオー! こっちだ」
宝箱を見つけた信さんたちと合流。
一華は平気だと言ったけど、低階層でもモンスターハウスに強制ワープさせたり、強力なトラップが仕込まれている場合もあるらしいからだ。
「おひさ♪」
「よぉ! またPT組めるとはラッキーだなぁ」
「……よろしくね?」
笑顔なのにハピさんが怖い。
ハピさんの腕でふるえるシトリを回収する。
「おぉ! タマゴちゃんも元気そうねっ!!」
「!!」
シトリを強奪する一華。
嫌がるシトリが激しくふるえる。
喜びのふるえなのか、嫌がっているふるえなのか、一華には理解できない。
「ワープ使わないの?」
「ん? ああ、まぁな」
「ふーん?」
大した物もでない低階層では飛ばしていくPTも多い。
ソロ探索者が宝箱を漁るくらい。 光の宝玉や遺物狙いである俺たちは総当たりで一階層から開けていく。 もっとも今回の収穫次第では下層に挑戦するかもしれないけれど。
「よし、じゃあ開けるぞー」
「はい!」
「おっけーよ!」
木の宝箱。
信さんが箱の上部の蓋を開けると、トラップが発動することも無く、ペカッと光りアイテムゲット音が響いた。
トルトゥテーン♪
「お〜、強化石だな」
「おー」
「え、なんでそんなテンション低いの? 木の宝箱から強化石でたらめっちゃラッキーよ??」
シトリちーとで雑魚からも出るからなぁ。 数日で百五十個以上集めちゃうくらい。 俺の感覚は少し麻痺しているのかも。
「アルマたちはもう階段までついたみたいだね」
マップを開くと、広いエリアのほとんどが明るく表示されていた。
「一層で十分くらい……か」
二時間は短いな。
最下層攻略を目指すPTはほとんどマラソン状態なんだろう。
最速でキーパーを倒し最短でワープを繰り返す。
「まぁのんびり行こうぜ?」
「はい」
「たまにはこういうのもいいわね♪」
その後アルマとレフィーさんたちとも合流し、今回の探索では地下十階層まで到達した。
「おっ!」
十階層のボス。
巨大蜘蛛から光の宝玉をゲット。 一つ目の光の宝玉である。
つまり後九個なわけだが。
「うーん。 やっぱりもっと下まで行かないとかなぁ〜」
「だね……」
「ふーん? それが目当てだったの? ……ねぇねぇ、何に使うのかなぁ、信??」
一華は信さんに上目遣いで詰め寄り、猫撫で声をだした。
「あ〜、なんだったかなぁ〜……クラスチェンジ、かな?」
信さんが誤魔化そうとすると露骨にシュンとする一華。
「やっぱり私には教えられないよねぇ、変な事聞いてごめんね……」と呟けば、信さんがコロリと情報漏洩をかました。
「ええ! クラスチェンジぃいい!?」
悲しみの魔法少女を演じていた一華は、一転して驚きの奇声を上げた。
「あらら」
「信くん……。 帰ったら調教が必要ね……」
ハピさんに調教される信さんの姿が目に浮かぶ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます