七話:ギルドアイランド
『暁の月』ギルドアイランド。
「おお! 凄いな」
ギルド所有の小さな島。
ギルドに加入するとさっそく良い所に連れてこられた俺。
そしてアルマに案内してもらいながら、ギルドアイランドを見学している。
立派な城には様々な設備が存在していた。
生産の為の工房や倉庫。 皆で集まるためのものだろうか、大きな円卓のある広間。
個々のメンバーの為の鍵付きの部屋まで。
それに島には小さな山や海岸まであるのだ。
「でしょう〜♪ とは言っても一番小さい島なんだけどね」
これで一番小さいの?
「千人を超える大規模ギルドとかもあるから〜。 ウチは二十人の小規模ギルド」
ノリオ君を入れたら二十一人だね! と微笑むアルマ。
たしかに大手ギルドとなれば四桁も珍しくない。
「昼間はIN率が少ないかな。 社会人の人も多いから、夜になると増えるよ!」
「そうなんだ」
「うんうん。 とりあえず、今いるメンバーに紹介するね〜〜」
開け放たれた城門を出ると草原が広がっている。
畑やアスレチックのような場所も。 そこで元気に遊びまわる影が見える。
「あれ、モンスター?」
「守護獣だよ。 この子たちは一体しか連れて歩けないから、二体目以降は預り所やギルドで預けたりするの」
結構な数の守護獣が遊んでいる。
というか……。
「おいで、シュララ!」
アルマが叫ぶと一体の守護獣がやってくる。
「でかっ……」
シュララと呼ばれた守護獣。
下半身が馬で上半身は鬼。 体皮は漆黒。 うん、しかも全身筋肉。
「キヒヒ!」
「進化させていくと大きくなるんだよね!」
大きくなるといか、もうね、ラスボスくらい強そうなんだけど。
圧倒的存在感を放つシュララ。 しかし、アルマの周りをクルクルとはしゃいでいる。
アルマに撫でられ嬉しそうに頬を赤らめる。
ギャップ萌え?
「ふふ、ほらもう少し遊んでおいで!」
「キヒヒ!!」
尻を叩かれると嬉しそうに走り出した。
アスレチックで他の召喚獣たちとぶつかり合いのじゃれあいをしている。
「可愛いでしょ〜? でも大きいからシトリちゃんみたいに連れてあるけないのよねぇ〜」
人にぶつかるし、新規の人が怖がっちゃうからね。 と溜息を一つ。
「アルマ……ライブ見た……」
「っ!」
くぐもった声。
不意に後ろから声がして、俺はびくりと肩を上げた。
「やっほー、レフィー!」
手を振るアルマ。
俺はゆっくりと後ろを振り返る。
何故か、手に持っているシトリが激しく震えた気がした。
「……ど、どうも」
振り返るとそこに、鉄仮面の人物が佇んでいた。
蒼銀の重装備を身に纏い、レギンスの形からやっと女性であることが分かる。
アルマの軽装とは全く違う、重装歩兵のよう。
表情の見えない鉄仮面はこちらを見つめている気がする。
「新人……?」
「そうだよぉ! ノリオ君、可愛いでしょ??」
「……」
可愛いってなんだよ……。
鉄仮面の人物からの視線が痛い。
「カワイイ……」
「え」
「タマゴ……カワイイ……」
ああ、シトリか。
現れた鉄仮面にびっくりしてブルブルふるえてるけどね!
「行こう……」
「へ?」
+++++++++++++++++++++++++++++++++
レフィーからPT申請が届きました
受諾しますか?
YES/NO
+++++++++++++++++++++++++++++++++
急なPT申請に戸惑う。
これは一体?
「ギルハン……新人歓迎……行かない……?」
「ああ、ありがとうございます……?」
俺が呆けていると、ボソボソと喋るレフィーさん。
言葉が足りなすぎる。 コミュ症なのか!?
「ん……」
PTに加入するとすぐにスクロールを開き、どこかに消えてしまった。
「ぷっ、くくく……」
俺たちのやり取りがツボだったのか、くつくつ笑うアルマ。
どうしていいのか分からない俺は、シトリを抱えボケっと空を見ていた。
さほど間も空かずレフィーさんからコールが届く。
「いってらっしゃ〜〜い」
どうやら来ないらしいアルマ。
鉄仮面のレフィーさんと二人きりのギルハンらしい。
ちなみにギルハンはギルドハンティングの略。
ギルドメンバー同士で楽しく狩りをしましょうってこと。
もしくは……。
「いってきます……」
なんとなく嫌な予感はしつつ、俺はYESを押すのだった。
「……レフィーも悪気はないんだけどね〜〜」
ノリオ君、大丈夫かな?
アルマの呟きは消えゆく俺の耳には届かない。
◇◆◇
―――――――――――――――――
シャビル 主塔 (五階層)
所有:暁の月
入場料:1000リン
バトルタイム:25時
PK:可
―――――――――――――――――
「ダンジョン?」
コールで転移するとダンジョンの情報を示すウィンドウが表示された。
天井は無く青い空。 周りは崩れた遺跡のような地形だ。
「うん……。 無料……しかも狩りやすいよ?」
「そうなんですか」
「じゃ、始めようか……」
そういうとレフィーさんは盾とハンマーを取り出した。
盾は顔のような文様が刻まれたひし形。 ハンマーはやけに小型の物だ。
「ライフフォース、ウインドフォース、エナジーフォース」
「おお?」
レフィーさんからバフ。
能力を上げてくれるスキルを付与される。 淡く光る全身。 レフィーさんは何のクラスなんだ?
というか俺、木の棒しか持ってないんだけど? 大丈夫か??
「あの……」
「マナクリスタル。 タマゴ、ここに置いて」
レフィーさんはテキパキと動く。 重装備なのに俊敏である。
設置されたスタンド台の上で浮遊する小さなクリスタル。
シトリもここに置けばいいのか?
「来るよ……」
「えっ?」
敵だ。
赤いマーカーが示す敵性モンスター。
崩れた遺跡の建物の影から敵が集まってくる。
「だ、大丈夫なんですか?」
「うん。 この辺りは近接しかいないから、躱せば問題ないよ」
「へ?」
「死んでも大丈夫……。 復活させるから……」
「ええ?」
どういうことだ。
まるで俺が死んでしまうかもしれない言い草。
しかし、その言葉の意味はすぐに分かった。
現れたモンスターたちの姿を見れば嫌でも理解した。
「オーガ!?」
「おしい……オーガレイダーだよ……」
どっちみち、木の棒じゃ無理だろぉ!?
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