ツンデレな彼女に首ったけ!

かずみやゆうき

第一章

第1話 怖くて可愛い幼馴染

 俺、横峰太一よこみねたいちは、とても苦手な女性がいる。

 その名は、白石美依しらいしみいと言う。

 できるだけ、避けてはいるのだが、正直、それも完全には遂行出来ない理由がある。それは何かというと、あいつは俺の隣の部屋に住んでいて、しかも、大学それも学科まで同じだからなのだ。


 壁がドンドンと音を立てる。こちらも負けじと壁を叩く。

 いつものことなんだけど、正直子供っぽいと思ってしまうがやってしまう。だって、売られた喧嘩は買わないと駄目だろう?


「太一!今日、ゴミの日だからね。先週、出さなかったでしょう?ゴミ屋敷にするつもりなの?今日、絶対に出しなよ!」


 そんな声が薄い壁から聞こえてくる。


「はぁー」


 俺は、ついついため息を付いてしまう。


「ため息つかない!幸せがこれ以上、逃げていったら太一には何も残らないでしょう!」


「わかったってば!!!出します。出します!出せばいいんでしょう!!」


 その時、急に玄関のドアの鍵がガチャと解除されると、ドアが開く。

 くっ!忘れてた。美依は俺の部屋の合鍵を持っているんだった。


「あのさ、本当にわかってるの?私だって、こんなことは言いたくないんだよ。だけど、最近の太一の生活ってほんと酷いでしょう?だから、言ってるの!」


 腰に手を当てて、仁王立ちの美依は、太陽の光を受けとても光って見える。

 長い黒髪に大きな瞳、小顔で唇は艶やか…。そして、身長は丁度いい高さで、スレンダーで、出る所はちゃんと出ていて…。もう、なんか完璧じゃん!!!って心の中で呟く。


「おまえ、ここまでうるさくなかったら、本当、むちゃくちゃ可愛いのに…」


 つい、小さい声で本音を漏らしてしまった。


 それを聞いた美依は、今度は顔を真っ赤にしながら、下向き加減に「そういう口説きを朝からしない!もう!知らない!」と言い終わる前にドアをバターンと強烈に閉めると、自分の部屋に戻って何かわめいているようだ。


「もぉー、、、太一ってば!!人の気も知らないで!!!」


 ん?それはこっちのセリフだよ。だって、こっちこそ朝からガミガミと言われて、気持ちが晴れないのわかってるのか?今日、一日テンション下がったままやんか…。


 でも、冷静に考えると、まあ、あいつはあいつで、本当はやりたくない事を見るに見かねてやってくれているんだろうし、、、。

 正直、俺は感謝しないと駄目なんだろうけど…。


 実は、俺と美依は、本当の幼馴染。勿論、実家は隣同士。幼稚園のころから二人で遊んでいて、それから、小中、高校と同じ学校に通った、所謂切っても切れない仲なんだ。勿論、それなりにお互い意識をしていたし、一緒にいることが多かった。たまに喧嘩もしたけど長く引きずるような感じなのは一度もなかったっけ。


 だからだろうか…。いつも美依と一緒にいるのが当たり前だと思っていた俺は、美依を女性として認識出来てなかった。今思うと本当に俺って子供だったな。

 だけど、高校に入ってから、何人もの男があいつに告白したって聞いた時は、何とも言えないモヤモヤが湧いて、夜も眠れない日が続いたこともあったんだ。

 だけど、あいつは、あれだけモテるのに誰とも付き合おうとしなかった。なんでなんだ?それを聞いても、全く無視されて、結局教えて貰えないまま今に至る。


 そして、美依が俺をしっかり管理しだしたのは、多分、俺の母さんが癌で入院した高三の夏からだったと思う。まだ若かった為か、癌の転移のスピードが速く、半年も経たないうちにあの世に旅立ってしまった。

 俺は、正直母さんっ子だったから、落ち込み具合は半端なく、しばらくは生気も抜けた所謂抜けがら状態だった。

 そんな俺に色々と世話をやいてくれたのは紛れもない美依だった。そう、本当はあいつはとても良いやつなんだと思う。

 

 だけど、なんでだろう?なんでここまで俺に目をかけるのだろう?それが不思議なんだ。


 だって、あいつの成績だったらもっといい大学に行けるはずなのに俺と同じ大学に来てるし、しかも、俺の借りてるぼろいアパートの隣に、なんでかあいつも住んでて、結局昔と変わらぬ『お隣さん』でいるのって変じゃねぇ?


 もしかして、あの時、何かがあったのか?俺は、そう考えていた。


 それは、母さんが亡くなるすこし前、母さんと美依は、二人っきりで病室で長話をしていた。その時、部屋から出て来た美依は泣きはらした顔で、うつむき加減に俺にこう言ったんだ「私、太一をずっと見てるから…」って。

 それからのあいつはずっと俺の傍にいる。でも、それがあいつの幸せになっているのだろうか?そう思うとちょっと凹んで来るんだ。


 俺も頑張らないと…。

 そんなことを思っていたら、俺のスマホが音を立てる…。

『ピローン』、ラインだ!


【太一、、色々とガミガミ言ってるけど、私のこと嫌いにならないでね…】


 くぅ〜!!!!そう、そうなんだ。美依は、俺と直接会った時は、俺の顔を見ない。そして、キツくコテンパンに言うんだ。だけど、その後に、こうして甘々テキストをラインで送ってくる。


 じゃあ、俺も返しておこう。


【バカ、俺のことを思って言ってくれてるんだろう?逆に感謝してるって】


【ありがと。太一、、大好き】


 えっ!!!!!まじっ!?でもそれ、全く伝わって来ないんだけど!!

 ま、美依はあー見えて相当不器用なところもあるから…。

 でも、本当に好きなら、実際に会ったとき、もう少し優しくしてくれてもいいのに…。


 ほんと、どうなってんの!?





—————

第一話を読んでいただきありがとうございます!

次回、『そばにいるよ』をお楽しみに!


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